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2008年02月28日

ハリウッドがヨーロッパ化?第80回アカデミー賞

去る2月24日、待ちに待ったアカデミー賞が開催されました。当日はあいにくの雨天となりましたが、多数のセレブリティ達、ファンや報道陣が詰め掛け、コダックシアター周辺は例年通りの通行止めに。映画ファンの皆さんはすでに結果をご存知だとは思いますが、オスカー像の行方に合わせて授賞式のハイライト&小ネタを続々とご紹介していきたいと思います。

本年度のアカデミー賞は、2度目のホストを務めたジョン・スチュワートによる10分近くのスピーチで開幕。WGAストライキの終結はもちろんのこと、客席のノミネート者達にとどまらずオバマ/クリントン両候補もネタにしてみたりと、大統領選に揺れるアメリカにふさわしいジョークの連続でした。地味だ単調だと何かと物言いが付いた今回のオスカーですが、他の出演者をイジりまくるスタイル、政治分野にも見識が深い彼の司会進行は高評価を得たようです。

それでは、ガンガンいきましょう。まず注目の作品賞は、コーエン兄弟監督の「ノーカントリー(邦題)」へ。8部門にノミネートという圧倒的な評価を受け、監督賞・脚色賞・助演男優賞を合わせた4冠制覇となりました。恐ろしくシャイな弟イーサンは、相変わらず言葉数の少ないスピーチを披露。兄ジョエルは30年前にふたりで8mmから始めた映画作りを回顧、ほぼ変わることなく製作を続けられていることに感謝の意を述べました。映画好きの間ではカルト的な人気を誇るコーエン・ブラザーズ。とうとう、映画の最高栄誉であるオスカー像を持ち帰りました。

今年の俳優4部門は、何と全てヨーロッパ勢に渡るという異例の事態に。主演女優賞は「エディット・ピアフ~愛の賛歌~」のフランス人女優マリオン・コティヤールが獲得。昨年の同男優部門受賞のプレゼンター、過去に彼女と”Mary (原題)”で共演したフォレスト・ウィテカーよりオスカー像が受け取りました。信じられない!といった様子で、涙を溜めて震えながらのスピーチ。劇中の老けメイクからは考えられないほどの美しさでした。印象的だったのは、アナウンスの瞬間に超ビックリ&大喜びした候補者のひとり「エリザベス:ゴールデン・エイジ」のケイト・ブランシェット。現在は妊娠中、少しふっくらとした優しい顔つきがステキでした。

主演男優賞にはイギリス出身、アイルランドに市民権を持つ「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ=ルイス。「今年は絶対に彼が獲る。あんなにスゴイ演技をされて、候補者みんなでムカついてるよ!」なんてジョークを飛ばしていたジョージ・クルーニーのおでこにキスをして、ステージに上がりました。両耳にピアス、187センチの長身、50歳でもスリムな体型はまるでミュージシャンの風貌。出演作品を慎重に選び、ひとたび出ればアカデミー賞に絡んでくる実力派俳優ですが、オフには靴職人として普通に働いちゃったりするのも数ある逸話のひとつ。それにしても、街中の靴屋さんに彼がいたらかなりの衝撃。こちらの職人技も気になります。

前述の「ノーカントリー」より助演男優賞を獲得したのは、スペイン俳優のハビエル・バルデム。各賞総ナメの個性的なピッチリ横分けオカッパキャラで、初のオスカー像を持ち帰ることになりました。スピーチの最後はスペイン語で、同伴した女優のお母様ピラー・バルデムに捧げています。彼の受賞には誰も驚かないとは思いますが、ビックリなのはまだ30代という事実。今回は、アカデミー賞の「お約束」=ジャック・ニコルソンの隣りに座っていて、その為か何度もカメラに抜かれていましたが、ハリウッドの伝説の傍らでも物怖じせずに終始ニコニコ顔。何をどうしたらそんなに貫禄がつくのか、ちょっと問い詰めてみたい気持ちでいっぱいです。

もともとサプライズが多いとされるこのカテゴリー、助演女優賞には「フィクサー」のイギリス人女優ティルダ・スウィントン。これにはご本人が最も驚いたようで、ステージでのひとこと目は、”Happy Birthday, Man.” オスカー像に問いかけ、共に渡米したエージェントにそっくりだと笑いました。劇中では黒髪の手厳しい女性弁護士を演じていますが、式典当日の彼女は赤毛のベリーショート、他の女優とは一味違うゆったりとした黒のドレス、とボーイッシュな雰囲気。開口一番のセリフといい会場を沸かせるスピーチといい、独特な雰囲気がカッコイイ女優さんです。

ヨーロッパ陣が活躍したのは、演技部門のみならず。美術賞・メイクアップ賞・衣装デザイン賞と短編アニメ賞も、すべてヨーロッパ出身のクルーに贈られています。また、長編アニメ賞を獲得したPixar製作「レミーのおいしいレストラン」も舞台はフランス。本年度のアカデミー賞は、様々なアクセントの英語が入り混じる結果となりました。また、「ノーカントリー」に加えてアメリカ映画で大健闘したのは「ボーン・アルティメイタム」。編集賞・録音賞・音響効果賞と、映画に無くてはならない重要な部門でのオスカー獲得となっています。この結果を踏まえて、再度観直してみるのも一興かもしれません。一方、日本から参加の浅野忠信さん主演・外国語作品賞にノミネートされた「モンゴル」、「マッド・ファット・ワイフ」でメイクアップ賞にノミネートされた辻一弘さんは残念ながら受賞はならず。しかし、今年のアカデミー賞を見る通り、ハリウッドは外国勢に押され気味。この勢いで、ぜひアジアも!日本人が続々と壇上に立つ日も近いかもしれません。

WGAストライキの犠牲になることなく、無事に開催の運びとなった2008年度のアカデミー賞。けれども、視聴率は歴代ワーストワンを記録してしまいました。ABCにて約3200万人もの視聴者が見守った計算になるようですが、今月初めのNFLスーパー・ボウルの9750万人 (過去最高/FOX) には遠く及ばず。原因には諸説が挙がっていますが、式典・台本の準備不足やノミネート作品が全体的に暗いこと、商業的な作品が少なかったという意見が多く聞かれます。ちなみに「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」が11部門をさらった2004年度は4350万人、「ディパーテッド」が4部門を制覇した昨年は4000万人の視聴数。やはり、アメリカ人は派手な大作映画を好むのかもしれません。

1929年から続く歴史、華々しいスター達に彩られるアカデミー賞。数字はどうであれ、映画好きにはやっぱりたまらない一大祭典です。本年度の詳しい結果は下記のリンクから。写真や動画も満載、華やかな雰囲気をぜひ味わってください。また、本年度は主催の映画芸術科学アカデミー (AMPAS: Academy of Motion Picture Arts and Sciences )とYouTubeが提携し、これまでの授賞式の模様などを公開していますので、そちらも要チェックです。2008年も、気になる新作&話題作が目白押し。ちょっと気が早いかもしれませんが、すでに来年のオスカーが楽しみです。

【アカデミー賞ホームページ】
【第80回アカデミー受賞者リスト】
【YouTube オスカー・チャンネル】


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 16:52 | トラックバック

2008年02月21日

祝☆オスカー開催:ここでWGAストライキをおさらい!

WGA (全米脚本家組合: Writers Guild of America) によるストライキもいよいよ終結、急ピッチで準備が進む2008年度のアカデミー賞。街中では、各ノミネート作品の看板がガンガン増設されています。ゴールデン・グローブ賞中止の二の舞になるのでは?との懸念を一蹴、例年以上にお祝いムード満点のオスカー直前!これまで深刻化してきたWGA vs. AMPTPの関係、100日間にも渡ったストライキとその経緯をここでちょっとおさらいしてみましょう。

全米にて1万人以上の会員数を誇り、NY・LAと東西に支部を持つWGA。彼らの契約は3年ごと、更新時にはAMPTP (全米映画テレビ製作者協会: Alliance of Motion Picture and Television Producers)と基本手当て (MBA: Minimum Basic Agreement)が交渉されることになっています。この度の契約満了日は昨年10月31日でしたが、同月25日から始まった契約交渉は難航。WGA・AMPTP双方が出す条件に折り合いが付かず、結局翌月の2日にはWGAサイドがストライキ決行を表明。翌週11月5日を待って、以来100日間に及ぶストへと突入したのでした。
今回、WGAが出した要求のうち焦点となったのは、1985年以降20年以上に渡って固定されていた、DVDなどの家庭用媒体における二次使用料の増額。そして「ニューメディア」と呼ばれるインターネット・携帯電話・ストリーミングなどの著作権料の支払いでした。これらの要求に、追い詰められてしまったのがAMPTP側。WGAのみならず、DGA (全米監督組合)やSAG (全米俳優組合) など他のユニオンとの交渉も控えている上、年々膨大な額になっていく使用料、更には今後の伸び率が読みづらい新しい媒体に対する脅威など、どうにも首を縦に振れる状況ではありませんでした。

WGAにとって約19年振りとなった大規模なストライキは、結果3ヶ月以上に渡る長丁場に。そして2月に入り、アカデミー賞開催をも危ぶむ声が囁かれ始めた矢先、WGAは会員に向けてAMPTPとの仮契約を告知。その条件を呑むのかどうかのヒアリングを行いました。9日に行われた投票の結果が出た翌月曜日、92.5%のメンバーが仮契約の条件に合意およびスト終結を望んでいることが明らかに。そして、12日をもってスト解除の運びとなりました。ちなみに、投票同日に行われたWGAアワードでは、脚色賞にご存知コーエン兄弟の「ノーカントリー (邦題)」が、オリジナル賞には「元ストリッパー」という異例の肩書きを持つ美人脚本家ディアブロ・コーディによる”Juno (原題)”が選ばれています。

気になる仮契約は「ほぼ」WGAの要求に沿うかたちとなっており、先の1月中に一足早く仮合意に至ったDGA・AMPTP間の交渉を踏襲したような内容に。TV放映における使用料が一部3%から3.5%に引き上げられたほか、注目のニューメディアを通した使用料も最大2%が支払われるなどの項目が盛り込まれています。しかし、AMPTPがかなり頑張ったにも関わらず「~の場合に限り○%」といったトリッキーかつ細かい条件付きリストに意義を唱えるWGA会員も。例えば、TVシリーズのネット放映は、地上波で放送後17日間(新シリーズは24日間)は「宣伝期間」につき使用料が発生しないとあって「普通、見逃しちゃった番組は数日以内に観るんじゃないの?」といった不満の声も聞こえています。また、低予算のウェブ用番組などにはAMPTP側のフレキシブルな契約の元で「非WGA組合員」を雇用できる、といった条件も含まれており、現役会員の活躍の場を狭めてしまう可能性も懸念されています。

2月12日以降はスト解除、会員達は職場復帰を果たしていますが、現状はあくまで「暫定」。最終的には2月25日に予定されている最終投票によって、現在の仮契約が採択されます。この度のWGAストによって、60本以上ものTV番組が休止となり、被害総額は20億ドルとも30億ドルとも。ハリウッドはしばらく、数ヶ月間ストップしていたお仕事の巻き返しに奮闘することになりそうです。

駆け足でおさらいしてきましたが、WGA vs. AMPTPの攻防戦は一段落。ピケットラインも無くなり、これで俳優陣も堂々とコダックシアターのレッドカーペットを歩くことが出来そうです。映画やTV番組はもちろん、各授賞式にも脚本家達の影あり。WGA会員がより一層腕を振るうであろう台本にも期待が高まります。見どころ満載になりそうな本年度のアカデミー賞、来週のレポートをお見逃し無く!

TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 21:17 | トラックバック

2008年02月14日

音楽の一大祭典:栄えあるグラミー賞は誰の手に?

去る2月10日、ロサンゼルスのステイプルズ・センターにて第50回グラミー賞が開催されました。数ある音楽の祭典の中でも、最も歴史と栄誉ある本アワード。多くの出席者・観客によって、LAきっての巨大スタジアムが埋め尽くされました。ミュージシャンならば誰もが志すと言っても過言ではないグラミー賞。蓄音機モチーフのトロフィーを持ち帰ったのは、一体どのアーティストだったのでしょうか?
オープニングを飾ったのは、アリシア・キーズ。大画面で歌うモノクロ映像の故フランク・シナトラの傍ら、ピアノの弾き語りによって夢のデュエットを実現させました。ヒット曲”No One”で女性R&Bパフォーマンス賞・最優秀R&Bソング賞を獲得。舞台では、ギターテクニックの評価も高いジョン・メイヤーとのコラボレーションを披露しています。

本年度、最多獲得数をマークしたのは英国歌手のエイミー・ワインハウス。6部門にノミネートされ、年間レコード・楽曲・新人賞の主要3部門を含む5冠に輝いています。彼女のパフォーマンスは明け方のロンドンから。というのも、最近ドラッグ問題が取り沙汰されていた彼女、米入国のビザが下りなかったとか。しかし、そんな逆境も何のその。トレードマークになりつつある鳥の巣のような巨大ヘア、余裕で1センチ以上はありそうなアイラインで、ヒット曲”You Know I’m No Good”と各賞受賞曲の”Rehab”を披露しています。いかにもソウル!といった雰囲気のステージ上でメチャメチャ元気に踊るコーラス3名の横、気だるいムードのワインハウスという絵面にはかなりシビれました。直後、年間レコード賞獲得の瞬間にあっけに取られる姿はかなりキュート。皮肉にも、先日とうとう”Rehab”入りを果たしてしまったワインハウスですが、今後ドラッグはNo, No, No~♪でお願いしたいものです。

一方、最多8部門にノミネート、ワインハウスを追ったのはカニエ・ウェスト。これまでは賞レースに縁が無いと囁かれていましたが、最優秀ラップアルバム (“Graduation”)を含む4部門制覇となりました。ヒット曲”Stronger”のパフォーマンスはこれまでと一風変わった雰囲気。それもそのはず、バックにダフト・パンクを従えてのサイバーチックなアレンジはかなり見応えアリでした。その後、しっとりと歌い上げたのは”Hey Mama”。後頭部に「MAMA」の文字を剃り込んで、昨年秋に急逝した実母ドンダさんへのトリビュートとして捧げました。

本年度のグラミー賞は、往年のスターアーティストが続々と登場。目玉のひとつは、ビヨンセとティナ・ターナーによる競演でした。一瞬ブルマにも見えた蛍光黄緑のオールインワン姿のビヨンセは、20世紀の「女王」を紹介。ともにターナーのヒットカバー曲”Proud Mary”を熱唱しました。かつては超細身で知られたターナーはすっかり貫禄が付いて、思わず「おかん!」と叫びたい葛藤にかられましたが、21世紀の歌姫ビヨンセも負けず劣らずの迫力ボディ。母娘のビフォア・アフターを見ているような、それでもゴージャスなステージとなりました。しかしグラミー賞後日、このパフォーマンスに苦言を呈したのがアレサ・フランクリン。ご存知クイーン・オブ・ソウルも当日、圧巻のゴスペル曲”Never Gonna Break My Faith”を披露していましたが、ビヨンセがターナーを「美貌・ソウル・情熱・強さと才能を兼ね備えた伝説のクイーン」と紹介したのがお気に召さなかった様子。女王の称号は私のものよっ!ということなのでしょうか?

また、豪華だったのはパフォーマーのみならず、プレゼンターの面々も超が付く華やかさ。プリンスに始まり、トム・ハンクス、シンディ・ローパー、シェール、トニー・ベネットにスティーヴィー・ワンダーなどなどが来場しています。また、今年のグラミー賞はビートルズファンにはたまらないものになった模様。ラスベガスのミラージュにて上演中、ビートルズの楽曲をアレンジしたシルク・ドュ・ソレイユのショー「Love」が、サウンドトラック・アルバム賞を受賞。その為、リンゴ・スターはもちろん「5人目のビートルズ」とも呼ばれるプロデューサー、ジョージ・マーティン卿やオノ・ヨーコも大画面に映し出されました。ティーンはもちろん、ずっと上の世代まで喜ばれそうなラインナップだったことは間違いありません。

NARAS (National Academy of Recording Arts and Science) 主催、約1万2千人の会員による投票で選出されるグラミー賞。本年度はCBSにて1820万人もの視聴者が見守ったとのことでしたが、これでも歴代ワースト3。アメリカのTV離れは深刻化しているのかもしれません。それに拍車をかけたのがWGAストライキとも言われていますが、先日の投票でいよいよスト解除が決定。晴れてアカデミー賞開催にGoサインが出たところです。24日が待たれるオスカーは、より多くの人々がチャンネルを合わせることになるのでしょうか。音楽vs. 映画の戦い?にも注目です。

【グラミー賞公式サイト/全候補・受賞者リスト】

TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 18:30 | トラックバック

2008年02月07日

賞レースも大詰め!DGA/PGAアワード

2月に入り、アカデミー賞までいよいよ3週間を切りました。一方、先月末/先週末と月をまたいで立て続けに発表されたのは、DGA (Directors Guild of America: 全米監督協会)・PGA (Producers Guild of America: 全米プロデューサー組合)の両アワード。それぞれ、昨年出揃った優秀作品に携わった同業者を称える式典となっていますが、特に前者はオスカーの行方を占うのに重要視されるひとつ。より一層の注目が集まることでお馴染みです。それでは一気に、ふたつの授賞式の結果をお届けしましょう。

1月26日、先立って行われたのは今年で第60回目を迎えたDGAアワード。ハリウッド北部のスタジオ・シティ同様、多くの有名スタジオが軒を連ねるセンチュリー・シティーのど真ん中、ハイアット・リージェンシー・センチュリープラザにて行われました。この式典がアカデミー前哨戦の大本命とされるのは、その歴史にあり。過去59年間で、本アワードとアカデミー賞のベスト監督賞が異なったのはたったの6回。つまり、残り53作品は全て一致の「的中率」なのです。数字にめっぽう弱い筆者にすら伝わるこのスゴさ。業界の注目が集まるのも必至です。

それでは、さっそく本年度の最優秀監督賞。ジョエル&イーサン・コーエン監督が「ノーカントリー (邦題)」でまたひとつトロフィーを増やす結果となりました。1996年の「ファーゴ」以来、ジョエルは2度目のノミネートですが、両氏にとって本アワードは初受賞。しかも、史上これまた初となる兄弟チームでの獲得となりました。ちなみに、チームでの獲得も1961年「ウエスト・サイド物語」のロバート・ワイズ&ジェローム・ロビンス以来、四十余年振り。「玄人好みの因習打破主義」と脚光を浴びてきたふたりが、とうとう大輪の花を咲かせました。

テレビ部門の受賞は、ドラマシリーズに”Mad Men (AMC)”。昨年7月より始まったばかりの新作が、ゴールデン・グローブ賞に続いての主要部門獲得となっています。コメディシリーズには、こちらも2007年スタートの”Pushing Daisies (ABC)”。南米、イギリスや香港を始め、すでに10カ国近くでの放映が決定している人気作品です。数あるカテゴリーの中で個人的な要チェックは、CM部門で受賞のNicolai Fuglsig。デンマーク出身とのことで苗字がカタカナ変換出来ず恐縮ですが、GUINESSなどのCMで一躍時の人となった若手実力派のニコライさん。とりあえず、お名前をYouTubeなどで検索して頂きたい。GUINESSビールも圧巻ですが、ソニー「ブラビア」のCMでは実際にサンフランシスコに25万個以上のスーパーボールを放っちゃってます。何とこちら、一発勝負のCG無し!とにかく一目、ご覧下さい。

そして、2月2日にアナウンスされたのが、第19回PGAアワード。本来ならば、先日中止となったGG賞が開催されるはずだったBeverly Hilton Hotelにて行われました。こちらでも「ノーカントリー」のプロデューサー、コーエン兄弟とスコット・ルディンが年間プロデューサー賞劇場映画部門を獲得。ちなみにルディン氏、同じく賞レース総ナメ状態の”There Will Be Blood”でもプロデューサーとして名を連ねています。数年先までビッシリ詰まった製作予定作品の数々、目利きとしてのネームバリューで更に注目を集めそう。また余談ですが、彼は「ザ・プロデューサー (1994)」でケヴィン・スペイシーが演じた意地悪プロデューサーのモデルとも言われています。真偽はいかほどでしょうか?

アニメ映画部門に「レミーのおいしいレストラン」よりブラッド・ルイス、長編ドキュメンタリー映画部門には「シッコ」のマイケル・ムーア監督とメーガン・オハラがそれぞれ受賞となりました。テレビ部門では、先日のSAG (Screen Actors Guild: 全米俳優組合)賞同様に「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア (HBO)」より10名にドラマ部門が、”30Rock (NBC)”から6名にコメディ部門が贈られました。また、ユニークなところでは前出のYouTubeを設立したチャド・ハーリーとスティーブ・チェンに、ヴァンガード(先駆)賞が授与されています。彼らのおかげで、これまでどれだけ上記のような映像、日本のみならず世界発信の動画をを楽しんできたことか…。陰ながらにはなりますが、そっと感謝したいと思います。

一方、ストライキの渦中にいるWGA (Writers Guild of America: 全米脚本家組合)は、今週土曜日に控えるWGAアワードと同日、会員向けミーティングの召集をかけています。昨年11月のスト開始以来、牛歩と言われながらも地道にAMPTP (Alliance of Motion Pictures and Television Producers: 全米映画/テレビ製作者連合) との交渉を続けてきたWGA。いよいよ交渉成立となるのか、はたまた再度の決裂となるのか。開催濃厚と囁かれ始めてはいるアカデミー賞ですが、どうやら今週末がヤマになりそうな予感です。今後のニュース、お見逃しなく!

TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 21:39 | トラックバック