« 2008年03月 | メイン | 2008年05月 »

2008年04月24日

4月22日はEarth Day:Hollywoodの合言葉は「Go Green!」

去る4月22日は「Earth Day」。春分の日と並ぶ第2のアースデイとして世界各地で様々なイベントが催されました。ハリウッドも例外ではありません。地球に優しい環境での映画制作を目指す各スタジオやエコロジーを提唱するセレブリティ達など、これまでの歩みと昨今の活動内容を覗いてみましょう。




  ↑アースデイを祝うグーグルのトップページ

本年度で第39回目を数えることとなった「アースデイ」ですが、バレンタインなどと比べるとまだまだその知名度は低いのが現状。写真のように4月22日のGoogleやmsnなどのトップページは通常とは異なり、あれ?と思った方も多いはずです。地球環境のこれからを考えた取り組みは、今日のハリウッドにとっても最重要項目のひとつ。燃料の多用や大量の廃棄物などと、90年代初頭から貼られ続けている「トップ環境汚染ビジネス」のレッテルを取り去るべく、日々あらゆる方法でエコ活動が進められています。

まず先陣を切ったのはワーナー・ブラザーズ。最高責任者アラン・ホーン氏は環境メディア協会 (Environmental Media Association: EMA)の創設者のひとりであり、2004年に改装された本社ビルはエコ・フレンドリーに徹した造りとして評判になりました。多くのスタジオが建ち並ぶバーバンク地域にて、唯一LEED (環境配慮基準: Leadership in Energy and Environmental Design)が認定する建造物。これによってエネルギー能率を38%引き上げて年間8万から9万ドルの節約に成功し、電気使用量も14%減らしたことでその節約金額は年間100万ドルとも言われています。しかも、同社には現在7名の「リサイクル専門」社員が常駐しているとか。資源物を回収し、寄付や再利用などに従事しているようです。

ウォルト・ディズニー社では30名余りの専門職員によって、世界各国のテーマパークやホテル施設、ゴルフ場などの自社設備における年間5%のエネルギー節約が推し進められています。また、スタジオ各社が提唱するDVDのリサイクル率においては同社がトップで、2007年度は5千万枚のDVDを回収して再利用しています。


  ↑砂漠化する地球
NBCユニバーサルは、親会社GEのガイドラインに従って2012年までに3%の地球温暖化ガス削減、その全体総量30%カットを目指しています。更に、自社内に残されていた有害廃棄物の処分にも着手し、たったのひと月で6万3千のペンキ缶や18トン以上の電気系、約5トンのオート系廃棄物を回収。また、昨年公開の”Evan Almighty (原題) ”は初の完全カーボンニュートラル映画となり、その後も厳しいEMAの指標に従って数々の製作を行なっています。

20世紀フォックスは、本年度のアースデイイベントにて従業員に1000本の苗木を配り、植林活動を勧めています。それに加えて、社員達にハイブリッド車の購入を推奨し、上限4千ドルの手当てを支給するというかなり太っ腹なアプローチも。他にも、製作・配給会社のライオンズゲートはTVシリーズ”Weeds”の撮影中に使われた計50万本のペットボトルを回収し、DVDのケースに再利用。こういったハリウッドにおける各社のエコ活動は、他社と「競合」することなくむしろ「協合」して進められており、良いアイディアはどんどんシェアしていく方針のようです。

一方、ハリウッドと聞いて思い浮かぶのはやっぱりセレブリティ。銀幕を飾るスター達が率先してエコロジーを唱え、その活動は広範囲に渡っています。今や「エコセレブ」代表格となったレオナルド・ディカプリオは現在、NYCにてハドソン川を見下ろす最新エコフレンドリー施設に居住しており、エドワード・ノートンとともに”Global Green”の委員を務めています。サルマ・ハエックとジェイク・ジレンホールは同団体の活動支援の為、アースデイのイベントに代表として参加。レオ様同様にエコセレブの名高いキャメロン・ディアスやトビー・マグワイアらは、環境保全の募金活動に従事しています。また、ジュリア・ロバーツやブルース・ウィリスなどを抱えるハリウッドきっての巨大エージェント”WMA: William Morris Agency”も、環境問題にはかなり積極的。毎週1000枚余りのCDやDVDをリサイクルしており、来年ビバリーヒルズに新設されるオフィスはLEED公認の完全エコ仕様となる予定です。

全米8都市で開催された無料音楽コンサート”Green Apple Festival”など、様々なかたちで注目を集めたアースデイですが、ハリウッドのエコロジー活動はこれからも日々続いていきます。日頃のちょっとした気遣いが、未来の大きな変化に繋がるかも。毎日がアースデイの気持ちで節約を心がけたいものです。

TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 18:47 | トラックバック

2008年04月17日

日本映画がLA上陸!「Japan Film Festival」

古き良き日本から、最先端のポップカルチャーまで「Made in Japan」印の映画が一挙に楽しめる一大イベントが、ますますパワーアップして帰って参りました。ハリウッドを席巻する外国映画ブームに、我らが日本も堂々の参戦。強力なラインナップを誇る日本映画祭の模様をじっくりとご紹介していきます。

4月11日から17日まで、LAダウンタウンに位置するリトルトーキョーにて開催された「Japan Film Festival 2008」。本映画祭は2003年と2004年、eigafanでもご紹介した2006年度と過去3回に渡って行なわれた「Chanoma Film Festival」が前身となっています。その規模もクオリティも拡大され、本年度が栄えある復活第一回目。日本で大ヒットした劇場映画はもちろん、アメリカ人までが涙ものの黒澤映画、アニメやインディペンデントの短編にドキュメンタリーをも含む39本が、はるばる海を渡ってLAに上陸しました。また、その後の18日より20日まではCA州オレンジ郡アーバインの「Starplex Cinemas」に場所を移して、これらの作品を一挙上映中です。

ロサンゼルスでの会場となったのは「ImaginAsian Center」。昨年12月にオープンしたての本館は、アジア作品を中心に扱う総合芸術施設です。もともとは、20・30年代にArrow Theater・The Aztecとして、1945年から80年代半ばの閉館まではLinda Lea Theaterに名称を変えて愛されてきた由緒ある劇場。こちらが昨年、アジア系のTV番組や映画を扱うImaginAsian社によって改築されました。白を基調としたモダンな装いも新たに、本館のこけら落としでは”Dancing with the Stars (ABC)”の審査員としてお馴染みとなったキャリー・アン・イナバをホストに迎え、ハリウッドを代表するアジアン・アメリカンのタレント達が続々と来場。今後もLAにおけるアジア系作品の発信地として、いろいろとお世話になりそうなシアターです。

それでは、気になるラインナップをご紹介しましょう。J-Popフィルムとしてジワジワと人気を集めるラブコメや、もはやガッチリ定着しているアニメ、時代劇やホラーと盛りだくさんの内容は見応え十分。筆者個人的には、新進アーティスト達による短編・インディー集が強く印象に残っています。また、普段はお目にかかることの少ない「洋題」にも注目です。

■劇場公開作品■
●「椿三十郎 (1962)」”SANJURO (洋題)” 監督:黒澤明
●「隠し砦の三悪人 (1958)」”THE HIDDEN FORTRESS”:黒澤明
●「ALWAYS 三丁目の夕日 (2005)」”ALWAYS SUNSET ON THIRD STREET”:山崎貴
●「舞妓Haaaan!!! (2007)」”MAIKO HAAAAN!!!”:水田伸生
●「電車男 (2005)」”TRAIN MAN”:村上正典
●「SHINOBI (2005)」”SHINOBI”:下山天
●「夕凪の街、桜の国 (2007)」”YUNAGI CITY, SAKURA COUNTRY”:佐々部清
●「無花果の顔 (2006)」”FACES OF A FIG TREE”:桃井かおり
●「ちゃんこ (2005)」”SUMO HOT POT”:サトウトシキ
●「怪談 (2007)」”KAIDAN”:中田秀夫
●「BLACK NIGHT (2006)」”BLACK NIGHT”:秋山貴彦/パトリック・レオン/タニット・チッタヌクン
●「エクスマキナ (2007)」”APPLESEED SAGA: EX MACHINA”:荒牧伸志
●「フラガール (2006)」”HUKA GIRL”:李相日
●「ONE PIECE エピソード オブ アラバスタ 砂漠の王女と海賊達 (2007)」”ONE PIECE”:今村隆寛
●「1/4の奇跡~本当のことだから (2007)」”THE MIRACLE OF THE GIFTED QUARTER”:入江富美子
●「あかね空 (2006)」”AKANEZORA”:浜本正機
●「俺達の世界 (2006)」”THIS WORLD OF OURS”:中島良
●「アタゴオルは猫の森 (2006)」”ATAGOAL CAT’S MAGICAL FOREST”:西久保瑞穂
●「花よりもなほ (2006)」”HANA”:是枝裕和
●「NARA: 奈良美智との旅の記録 (2006)」”TRAVELING WITH YOSHITOMO NARA”:坂部康二

■インディペンデント作品■
-「今日という日が最後なら、 (2007)」”IF TODAY WAS THE LAST DAY,”:柳明菜
- アニメ特集/「コルボッコロ (COLUBOKKORO/2007): Kenji Itoso」「タロピカーナ (TAROPICANA/2007): ドラゴ ウノ」「Love Rollercoaster (2007) : 堀江弘昌」
- 短編集/「Tokyo Cowboys (2008) : Daneeta Loretta Saft & Patrick Jackson」「ムーの男 (Mu No Otoko/2008): 小林でび」「年賀状 (Nengajo/2006): 関野昌也」
- 短編集/「二重被爆 (Twice Bombed, Twice Survived/2006): 青木亮」「良い地 (Good Soil/2007): クレイグ・シマハラ」「青春 (Yourh/2007): 河野亜季」
- 短編集/「影 (Kage): 真矢武」「クレヨン (Crayon): 安部圭造」「JSCO (2008):SHINCHIKA」「師走の訪問者 (Visitor at the December Night): 細山広和」「ふくをきたカラス (Crow that wears clothes): 海老澤和夫」「眠りの館 (Sleepy house): 太田裕美」「Bridge (2007): 山田園子」「平成ロボヘルパー (Recent future robot HELPER Z): 鈴木勝之」「とぶ (Flying): 長池弘史」


計10日間に渡り、これまでと現在の日本を一度に味わわせてくれたJapan Film Festival。悲しいかな上映作品が限られてしまうことが多い在米日本人にとっては、大スクリーンで日本映画が鑑賞できる絶好の機会。もちろん、様々な国籍の方々もひっきりなしに訪れ、満足気に映画談義に花を咲かせる姿が多く見かけられました。今後も回を重ね、本フェスティバルを飾る素晴らしい日本映画が続々と登場するのが今から楽しみです。

【Japan Film Festival(日本語ページあり)】

【The ImaginAsian Centerホームページ】


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 17:19 | トラックバック

2008年04月10日

またもや訴訟!今度はあの「Star Wars」絡み

ビジネスとお金の集まるところには、必ずと言って良いほど付いて回るのが「訴訟」の影。先週のウディ・アレン監督に引き続き、またも映画にまつわる裁判が勃発しました。この度の主役はアメリカにとどまらず、日本にもマニアの多い「スター・ウォーズ」シリーズのいちキャラクター。洋の東西を問わずに人気の高い、伝説的SF映画の訴訟劇をレポートしていきます。

今回、白羽の矢が立ったのは「ストーム・トルーパー」。この名前だけですぐ分かる人はかなりのSWファンかと思われますが、「白いヘルメットの機動兵」と言えばピンと来る方々も多いはずです。あのコワ可愛い?キャラクターを巡る裁判は、ジョージ・ルーカス監督が創設した製作会社「ルーカスフィルム」vs. 初代「スター・ウォーズ (1977)」の小道具担当アンドリュー・アインズワース氏によって争われています。

ロンドン在住のアインズワース氏は、自称「ストーム・トルーパーの生みの親」。実際、1977年の映画制作中にあの白いヘルメットの鋳型を作成した人物です。その後、SWシリーズの爆発的な人気にともない、自身のウェブサイトにてヘルメットや甲冑をレプリカとして販売。気になるお値段ですが、上は2千ドルに届くというからなかなかの商売です。そこに待ったをかけたのが、ルーカスフィルム社。2006年にはカリフォルニア州の裁判所にて、版権侵害として2千万ドルを勝ち取りました。つまり、今回の訴訟は2度目。アメリカ国内のみならず、アインズワース氏が居を構えるイギリスでも、同じ扱いとするべく裁判へと持ち込まれたのでした。

これに、アインズワース氏は逆提訴。彼の言い分としては「ストーム・トルーパー」の版権は自身にあり、過去6作にのぼるSW全シリーズの商標収入=ざっと見積って約240億ドルを要求しています。対するルーカスフィルム社も、その強固な姿勢は変わらず。キャラクターは、ルーカス監督率いるデザインチームによっておよそ1年以上もかけて考案され、ヘルメット作成の為にアインズワース氏が雇われた時にはすでに完成されていた、と主張しています。

この度の訴訟劇が繰り広げられているのは、ロンドンの由緒ある高等法院。映画の中などでも見られるように、裁判官は白髪のカツラとローブを掛けた黒い法服を着用して裁判に臨みます。本件では今後10回にわたる審問が予定されているようですが、初回の4月8日だけでも見どころ満載だった模様。ルーカスフィルム社の弁護士からは「あのストーム・トルーパーは実在するものではありません」「あのキャラクターは空想の産物ですから」などといった、マニアックなファンなら絶叫ものの発言も次々と飛び出すことになったとか。おしまいには、法廷に持ち込まれた180センチ強もある原寸大ストーム・トルーパー達に目をやり、裁判官アンソニー・マン氏が「彼らは公判中、ずっとそこにいるのかね?」と訊ねたというから何とも言えません。クラシックなヅラを被った裁判官が、あのキャラを睨みつける図…。この上なくシュールです。

ルーカスフィルム社が「近代文化における最も象徴的なイメージのひとつ」と表現したストーム・トルーパー。SWシリーズの中でも特に人気のキャラクターであることは、ネット上を賑わせる多種多様な「パロディもの」が物語っています。フツーに街中を闊歩させたり、芝刈りをさせてみたり、はたまた女性版も登場したり…などなど、愛すべきキャラクターの彼ら。版権の所在は本家本元の「親」か、はたまたルーカスフィルムか?ハリウッドも注目の版権争い、行方が気になります。

【SWウェブ辞典 ”Wookieepedia”/スター・トルーパー】

TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 17:37 | トラックバック

2008年04月03日

April Fool’s Day? あの監督がウソみたいな訴訟劇

ちょっぴり遅ればせながら、Happy April Fool’s Day! 先日4月1日はエイプリルフール。本年度、皆さんはどなたかをドッキリさせちゃいましたか?アメリカでも日本と同様、この日は堂々とPrank=悪ふざけでイタズラしてもOK!…との認識はありますが、当日の紙面を賑わせたのは何ともビミョーな訴訟。アメリカを代表するあの映画監督が、大手アパレル企業におかんむりの模様です。

今回の主人公となったのは「アニー・ホール (1977)」、「ハンナとその姉妹 (1986)」や「地球は女で回ってる (1997)」などで知られるウディ・アレン監督。出席したのは2002年と2007年の2回のみと言えども、アカデミー賞では常連です。映画監督としてだけではなく、俳優・脚本家・ミュージシャンとしても著名。そんな世界が認める氏が、この度LA発の服飾メーカー「アメリカンアパレル」を相手取って訴訟を起こしてしまったのでした。

事の始まりは昨年5月。アメリカンアパレル社が、アレン監督を使った巨大な看板広告をロサンゼルスとニューヨークに、また同社のウェブサイトにも同じプリントを掲載しました。そこには、ユダヤ教のラビの格好をしている監督の姿が。前出の出世作「アニー・ホール」のワンシーンから抜き出された写真が、そっくりそのまま使用されていたのでした。ユダヤ人の国際語とされるイディッシュ語で「神聖なるラビ」とのキャッチコピーが付けられ、しっかり社名も入っているこの広告。こちらが何と、一切アレン監督の許可なしに作成されたものだったのです。

訴訟の内容を見てみると、ビックリというか思わず苦笑い。大企業には通常あり得ない失態、「ジョーク」では済まされないものでした。アメリカンアパレル社は、あたかもアレン監督をスポンサーのように、かつ提携しているかのごとく広告を掲げていましたが、それは完全なる無断使用。監督自身の承諾や事前の連絡すらも取られていない始末で、これは訴えられても仕方がない状況かと思われます。これまでにも、ほぼヌードのモデル達を使ったきわどいポスターで話題を呼んでいた同社ですが、どうやら今回はやり過ぎたかも。結果、マンハッタンにて3月31日付で提訴、損害賠償としてこれまた驚きの約10億円!以上が要求されています。

皮肉にもアレン監督の広告が功を奏したかのように、アメリカンアパレルの創始者・代表であるダヴ・チャーニー氏は、本件の2週間前に「2007年度は最も成功した年だった」と発表。しかし、今回の一件に関しては未だコメントが出されていません。近年では日本を含む13ヶ国に進出を果たした同社ですが、この度の裁判沙汰が大きな痛手となるのか。それとも、大きな「宣伝効果」を生むことになるのでしょうか。

エイプリルフールの紙面に踊った今回の訴訟劇。双方ユダヤ系の両氏ですが、一方では「問題児」としての共通点も。アレン監督が元彼女のミア・ファローの養子スン・イーと結婚しちゃったことは世界を仰天させましたが、チャーニー氏も負けてはいません。広告にも度々使われるほどに美人揃いと評判の同社ショップ店員から、セクハラ裁判を起こされることもしばしば。ちょっと笑えないというか、ジョークにもしづらい人生を歩んでいるご両人。最後に「笑う」のはどちらになるのか、今後の行方に注目が集まりそうです。

【問題の広告写真】

TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 15:51 | トラックバック