« 2008年06月 | メイン | 2008年08月 »
2008年07月24日
13日間のビッグパーティ!Outfest 2008
7月9日から21日まで、13日間に渡って開催された「Outfest: ロサンゼルス・ゲイ&レズビアン映画祭」。世界中から集められた選りすぐりの短編・長編映画、連日繰り広げられたパーティによって大盛況のうちに幕を閉じました。本映画祭の横顔や見どころ、受賞作品や日本からの出品作まで、華やかな2週間を一気にご紹介していきます。
今年で26回目を迎えた本映画祭は、LAを拠点に置くNPO団体「Outfest」によって運営されています。彼らの活動目的は、セクシュアル・マイノリティーに対する偏見を無くし、彼らの地位を向上させること。更に近年では、名門UCLAの映画/TV学科とタッグを組んで、これまでに製作されたLGBT(Lesbian, Gay, Bisexual, and Transgender/Transsexualの略)関連映画の保存とアーカイヴの作成にも乗り出しています。当初はOutfestのコミュニティ内で始まった映画祭も、今や米ケーブルネットワークHBO、酒造メーカーHeinekenやAbsolutらを含む多くのスポンサーが付くまでの一大イベントに。LAのみならず、全米からの注目を集めるフェスティバルへと急成長しています。
2008年度のOutfest開催シアターは全7ヶ所。オープニング&クロージング上映は、ともにLAダウンタウンのOrpheum Theatreにて、コメディドラマ”Breakfast with Scot (原題)”と”Tru Loved”が選ばれています。”Tru Loved”の監督/脚本/製作を務めたスチュワート・ウェイドは、実はOutfestがきっかけでフィルムメイカーを志した人物。幼少期から本映画祭に足を運び、1986年に観たスティーブ・ブシェミ出演の”Parting Glances”に多大なる影響を受けて今に至るそうです。彼の処女作であり、初のOutfest出品作となった”Cofee Date (2001)”は短編でありながら大きな反響を呼び、2006年には長編となって再上映されました。そんな彼のラブコメ最新作が、いよいよクロージング作品に。今後、目が離せない要チェック監督のひとりです。
今回のOutfestでひときわ大きな盛り上がりを見せたのが、開催2日目。ハリウッドのDGA(Directors Guild of America)を会場に行なわれた「マンマ・ミーア!(邦題)」のプレミア上映は、2回分のスクリーニングが満員御礼となりました。もともとブロードウェイミュージカルとして著名な本作は、ゲイ・フレンドリーとしても知られる名作。劇中のABBAによるナンバーを観客達が一緒に口ずさむ、かなりハイテンションな上映会となりました。「プラダを着た悪魔(2006)」で披露した鬼の形相?からは想像もつかない、メリル・ストリープ演じるフツーの主婦が歌い踊るさまはとにかく必見です。その後18日に全米公開、ピアース・ブロスナンら豪華キャストに固められた本作は、夏休み映画がひしめく中で初登場2位に付けるなど大健闘中。ぜひぜひ近日中に特集したい1本なので、そちらもお楽しみに。
Outfestにおいて、コンペティションが設けられてから今年で14年目。7月20日、ハリウッドの大型劇場John Anson Ford Amphitheatreにて表彰式が行なわれました。世界25カ国より集められた212作品から、主要部門に輝いたのは以下の作品です。
●US長編ドラマ: “Were the World Mine (監督: トーマス・ガスタフソン)”
●外国長編ドラマ: “XXY (ルシア・プエンゾ)” / アルゼンチン・フランス合作
●ドキュメンタリー長編: “Sex Positive (ダリル・ウェイン)”
●観客賞 (賞金$5,000): “Watercolors (デヴィッド・オリヴェラス)”
また、惜しくも受賞は逃しましたが、我らが日本からも2作品が参加。インターナショナル長編部門にエントリーした川野浩司監督の「LOVE MY LIFE / ラブ マイ ライフ」は、Outfest名物のアフターパーティを開催。LGBTがテーマの映画としてのみならず、Japanese Popフィルムとしても注目を集めました。山本兵衛監督の「わたしが沈黙するとき」は、インターナショナル・ガールズ短編部門に出展。本作はOutfestと同時期に開催されていた東京国際レズビアン&ゲイ映画祭などでも上映され、登場人物の繊細な心理描写が高評価を得ているようです。物語の行方を観客に委ねたオープンエンディングに、続きが気になる!と見入ってしまったのは筆者だけではないハズです。
LGBTに属する人々の毎日を、映画を通して分かち合うことを目的にスタートしたOutfest。会場に詰め掛けた人種も異なる老若男女の姿に、それはすでに達成されているような印象を受けました。LGBT/ヘテロセクシャルを問わず、多くの悩みは恋愛模様だったり将来への不安だったり。人として共通の葛藤を共感するのにもってこいの機会でした。Outfest 2008の詳細、その他の受賞作品などは、映画祭同様にポップなウェブサイトからどうぞ!
【Outfest: The Los Angeles Gay & Lesbian Film Festival公式ホームページ】
TEXT BY アベマリコ
2008年07月17日
ハリウッドならでは?教会が映画館に
一年を通して、最もLAらしいシーズンが到来。連日カンカン照りの太陽が顔を覗かせ、ロサンゼルスはすっかり夏色に染まっています。こんな時季、エアコンの効いた映画館は避暑スポットにうってつけですが、この夏ハリウッドでは意外なところがシアターに変貌。エンターテイメントとはかけ離れた印象の「教会」が、ちょっとした映画館になった模様です。
野外音楽堂ハリウッド・ボウルに程近く、現オスカー会場のコダックシアター&ハリウッド・ハイランドの裏手といった”The Hollywood”に位置する「ハリウッド・ユナイテッド・メソジスト教会」。現在、こちらでは「Crossflix」と称したイベントを開催中です。オンラインDVDレンタル「Netflix」を模したようなタペストリーから、映画関連の催しであることは一目瞭然。夏のセレモニーに代わり、7月・8月の日曜日にアメリカが誇る名作の数々が上映されています。教会が厳選したラインナップは以下の通り。「映画に信念をみる」というテーマのもと、いかにも教会!といった作品からちょっと意外な最新作まで、様々な世代が楽しめるチョイスになっています。
●7/6: ショコラ(邦題・2000)
●7/13: 告発のとき(2007)
●7/20: 天使にラブソングを…(1992)
●7/27: レミーのおいしいレストラン(2007)
●8/3: ショーシャンクの空に(1994)
●8/10: ミリオンダラー・ベイビー(2004)
●8/17: The Great Debaters(原題・2007)
●8/24: ドグマ(1999)
●8/31: 恋はデジャ・ブ(1993)
それにしても教会内で映画鑑賞とはかなりユニークなものに映りますが、このハリウッド・ユナイテッド・メソジスト教会は1929年に創立された由緒ある建造物。プロテスタント教派のひとつ、アメリカ最大のバプテストに次ぐメソジスト派の教会として著名です。日頃はミサや説法といった通常のサービスに加え、パイプオルガンのコンサートなどといったイベントも開催。また、講堂一面の豪華なステンドグラスや30m近くのヴァージンロードは圧巻で、多くのウェディング・セレモニーが行なわれています。かの「若大将」こと加山雄三夫妻が結婚式を挙げた教会としても有名。以来、クリスチャン・スタイルのお式を望むカップル達がはるばる日本から訪れているようです。
一方では、やはり土地柄か本教会は映画業界への貢献でも知られた存在です。例えば今回の上映作「天使にラブソングを…」において、ウーピー・ゴールドバーグ扮するシスター・メアリーがお掃除していた講堂&ゴシップ話に花を咲かせていたキッチンはこちらのもの。また「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマイケル・J・フォックスが演じたマーティが、チャック・ベリーの”Johnny Be Good”を熱唱したあのプロム会場や、ビートルズマニアを自負するトム・ハンクスの初監督作品「すべてをあなたに」で、劇中のThe Wandersがお披露目ライブをしたのもこの教会でした。他にも、エンタメ業界のオーディションやリハーサルの為に敷地を貸し出すなど、石造りの荘厳たる外観からは想像できないオープンな姿勢がみられます。
ハリウッドのど真ん中、フランクリン通りにそびえ立つ白い巨塔。遠くからでも目に飛び込んでくるので、初めてでも迷うことはなさそうです。筆者を含め、多くの日本人にとってはちょっと取っ付き難いイメージの教会ですが、こうして映画行事を通して見ると一気に親近感が沸いてしまうから不思議。今回のイベント同様、多くの催し物は入場フリーですのでLAにお越しの際は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
TEXT BY アベマリコ
2008年07月10日
独立記念日の風物詩: ホットドッグにまつわるエトセトラ
去る7月4日はアメリカ独立記念日。今年は週末に重なったこともあり、あちこちで盛大なパーティが開かれていました。Independence Dayに欠かせないものといえばFireworks=花火ですが、もうひとつ忘れちゃいけないのが「ホットドッグ」。毎年恒例の早食いコンテストの模様に加え、スター達が集うハリウッドの名物店をお腹いっぱいご紹介しちゃいます。
2008年で232回目のお誕生日を迎えたアメリカですが、こちらのコンテストは92回目。もはや独立記念日の恒例行事となった「ネイサンズ・ホットドッグ早食い選手権」がNYのコニーアイランドにて開催されました。本年度は、昨年の覇者ジョーイ・チェスナットさんと我らが日本代表、過去6連覇の記録を持つ小林『TSUNAMI』尊さんの一騎打ちに。近年の12分ルールから2分短縮した10分間で、バンズにソーセージオンリーという純正ホットドッグをそれぞれ59個!完食しました。その後、史上初の「5個のホットドッグ早食い」というプレイオフへ持ち込まれ、結果はチェスナットさんに軍配。昨年に引き続き、トロフィーとチャンピオンベルト(マスタード色)、ネイサンズ社よりホットドッグ1年分が贈呈されています。
それにしてもナゼ独立記念日に「ホットドッグ」となったのか?それは1916年にまで遡ります。92年前のこの日、アメリカ移民4名がネイサンズ1号店のスタンドにて「誰が一番愛国心があるか」を賭け、地味に早食い競争をしたのが始まりだとか。それから時を経て、現在ではスポーツチャンネルESPNで全国放送されるまでの一大イベントへと様変わりしています。ESPNで扱われることからも分かるように、アメリカでは早食い=れっきとしたスポーツ。出場者はフードファイトの王者を狙うアスリートとして見なされます。奇抜な髪色とアニメチックな童顔を持つ小林尊さんは、いわば子供たちのヒーロー。また、大ヒットドラマ「グレイズ・アナトミー (邦題)」の第2シーズンにおいては「早食い女王」が登場する回 (第14話: ゲストスター / Natalie N. Okamoto & Yutaka Takeuchi) もあるほどの定着ぶりです。将来の夢が「フードファイター」なるキッズまでいるとかいないとか…。くれぐれも健康にだけは留意して頂きたいものです。
ここでハリウッドに場所を戻して、LAナンバーワンの名店をご紹介。メルローズ+ラ・ブレア通りの一等地に位置する「Pinks」のホットドッグスタンドは、いまや知らない人がいない程のご当地名物となっています。古き良きアメリカを彷彿とさせるこじんまりとした外観に、遠くからでも目に付く長い行列。ランチ&ディナータイムはもちろんのこと、深夜ともなれば場所柄か、クラブ帰りの若者達などで賑わっています。数あるメニューの中で、よく見かけるのは10インチのチリ・チーズドッグ。バンズからはみだしたパリパリのロング・ソーセージに、同店オリジナルのチリソースとチェダーチーズがトロ~リとかかった一品は、想像しただけでも垂涎ものです。重たい…と思うことなかれ。一度食べたらハマってしまう、絶妙な味わいなのです。他にも、カリッと揚がったオニオンリングやフレンチフライなど、サイドメニューも充実しています。
こちらのお店がここまで有名になったのは、何と言ってもハリウッドスターの口コミ。創業1939年以来、多くのセレブリティ達が足繁く通っているようです。店内にズラリと並べられたヘッドショットとサインはとにかく圧巻。古くは週1ペースで訪れていたとされるオーソン・ウェルズを始め、カーク・ダグラスやトム・ハンクス、ジョニー・デップなどなど、アメリカを代表するスター達のお気に入りスポットとなっています。ハリウッドの旧おしどり夫婦、ブルース・ウィリスがデミ・ムーアにプロポーズした場所でもあることは余りにも有名なお話。残念な結果?に終わったふたりですが、ある意味ロマンチックなエピソードも誇るピンクスなのです。どんなビッグスターでも並ばなくては名物ドッグにありつけないので、セレブの目撃談も多数。LAにお越しの際は、要チェックです。
シンプルなNYスタイルとボリュームたっぷりのLAスタイル、皆さんはどちらのホットドッグがお好みでしょうか。それぞれのメニューや詳しい歴史などは、下記のサイトからどうぞ。この夏休み、アメリカにいらっしゃる方々はぜひとも名物ドッグを味わってみてください。
【Nathan’s (コンテストの模様も掲載)ホームページ 】
【PINKSホームページ 】
TEXT BY アベマリコ
2008年07月04日
LAFF閉幕: 各賞の結果は?
6月19日から29日、夏真っ盛りのロサンゼルスにて行なわれた第14回Los Angels Film Festival。炎天下にもかかわらず、多くの観衆に見守られ無事に幕を下ろすこととなりました。今回は先週に引き続き、LAきっての大映画祭をレポート。上映最終日の土曜、各賞が発表された日曜日の模様を中心にお届けしていきます。
LAFFの本拠地がウエストウッド・ヴィレッジに移って早3年目。広大な敷地を誇る一大イベントへと急成長し、もはやすっかり定着したようです。それまでLAFFはウエスト・ハリウッドのSunset 5内にて、数ブロック離れたDGA(Directors Guild of America: 全米監督協会)を追加会場に「こぢんまり」と行なわれておりました。その頃に比べると、観客動員数はおよそ3倍に。日頃歩きなれていない? 一部の業界関係者の中では移動にせわしい…といった声もあるようですが、シアター数の増加によって上映セレクションが大幅にアップしています。また、もともとUCLAタウンである本エリアはレストランなども充実しており、開催期間中はフリードリンクのクラブ風イベント会場までお目見え。規模拡大が功を奏し、LAFFは年々より多くの注目&来場者を集めています。
土曜の最終上映日は、クロージング作品に”Hellboy 2: The Golden Army (原題)”が登場。本監督であり、前作「パンズ・ラビリンス (邦題)」では3つのオスカーを持ち帰ったギレルモ・デル・トロも来場し、本作の魅力&製作秘話を存分に語っています。人なつっこい笑顔の監督は、ファンサービスも熱心。一般客が集まるパーティにまで顔を見せ、多くの人々で賑わいました。「ロード・オブ・ザ・リング」のスピンオフ、”The Hobbit”シリーズ2作品の監督にも決定した彼からますます目が離せません。
賞金5万ドルが授与される注目の主要2部門は、最優秀長編賞に”Prince of Broadway (監督: シーン・ベイカー)”。NYのストリートで生きる男ふたりを描いたドラマが、最高の栄誉に輝きました。笑いあり涙ありの本作は、必見! の呼び声が高いインディーズ作品です。一方の最優秀長編ドキュメンタリー賞は、”Loot (ダリウス・マーダー)”が獲得。第二次世界大戦から60年の時を経て、とある元米兵の「秘密」が明らかになる実録映画です。振り返ってみると、本年度の優秀作品はそれぞれ男達のストーリーに贈られるかたちに。両氏はデル・トロ監督より本賞を受け取っています。
その他の授賞式が行なわれたのは、LAFF最終日となる29日。ハマー美術館に併設するビリー・ワイルダー劇場にて、華々しい式典が催されました。陰の大本命=観客賞には、長編部門に”The Wackness ”。ベン・キングスレー、メアリー=ケイト・オルセンら豪華キャストが出演するコメディドラマが人気を集めたようです。また、本年度「ウォンテッド」と並んでのガラ上映となった”Anvil! The Story of Anvil”は、長編ドキュメンタリー部門を獲得。更に各賞の授賞式に並び、俳優ドン・チードルに今年の「顔」となるスピリット・オブ・インディペンス賞が贈られています。
230本以上の短編・長編を引っさげて、駆け足で過ぎ去った11日間。スタジオ映画もインディーズ作品も、ジャンルを問わず一挙に堪能できるのが本映画祭の魅力のひとつです。また、LAFFにてプレミア上映される映画も多数。1年を通してお天気&過ごしやすいロサンゼルスですが、映画ファンにとってはこの時期を狙ってのLA観光が面白いかもしれません。
TEXT BY アベマリコ