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2008年09月25日
視聴率より質を重視?第60回プライムタイム・エミー賞
本年度でキリ良く第60回目を迎えた、TVの祭典エミー賞。去る21日、LAダウンタウンのノキア・シアターにて授賞式が行なわれました。会場には、今日のアメリカンTVを代表するハリウッド・スター達が続々と来場。その模様は、ABC局にて全国放送されました。お茶の間が見守ったトロフィーの行方は?2008年の傾向と交え、当日の模様をレポートします。
会場となったコダックシアター客席。
シュラインとはまた違ったゴージャスさです
2008 Emmysは、全体的にしっとりとした面持ち。派手なパフォーマンスは無く、歴代アメリカン・シットコムのパロディーやスキットと呼ばれる寸劇/ミニコントを中心に進められました。盛り上がりを見せたのは、歌手ジョシュ・グローバンによる主題歌メドレー。クラシックで著名な彼がラップ調の曲まで歌い上げるとは、なかなか見られないと好評だったようです。「フレンズ (NBC)」に”Happy Days (原題/ABC)”、はたまた「サウスパーク (Comedy Central)」や”COPS (FOX”)など、次々と声色を変えて器用に歌い上げる姿は圧巻でした。
例年、特に注目が集まるエミー賞の司会ですが、今年は新カテゴリーに加わった「リアリティーショー・ホスト部門」にノミネートされた5名が代わる代わる登壇。昨年のホストだったライアン・シークレスト (「アメリカン・アイドル (FOX)」)を含め、”Dancing with the Stars (ABC)”よりトム・バージェロン、ハウィー・マンデル (“Dear or No Deal (NBC)”)、「プロジェクト・ランウェイ/NYデザイナーズバトル (Bravo)」からハイディ・クルム、ジェフ・プロブスト (「サバイバー (CBS)」らが総合司会を務めています。当人達のやりづらそうな雰囲気が画面からも伝わってくる司会っぷりは、残念ながら酷評の対象に。オープニングに登場したオプラ・ウィンフリーに任せておけば良かったのに…といった声もチラホラ聞こえてきます。結局、ホスト賞を持ち帰ったのは「サバイバー」のジェフ・プロブストでした。
最優秀シリーズ・ドラマに輝いたMADMENの屋外アド。
また、AMCの”Mad Men”が人気シリーズ「ロスト (ABC)」「Dr. House (FOX)」「ボストン・リーガル (ABC)」を抑えて最優秀シリーズ・ドラマ部門を受賞。ケーブル局による本賞の獲得は初となる快挙であり、他5部門のトロフィーも持ち帰っています。同賞コメディ部門には、NBCの”30 Rock”。昨年に引き続き本賞に輝き、更には主演女優/脚本のティナ・フェイ、主演男優にアレック・ボールドウィンらが主要部門を総ナメにしています。今回の結果を受けて、業界各誌で取り上げられているのは各受賞作品の視聴率の低さ。視聴率Top10にランクインする「CSI: 科学捜査班 (CBS)」シリーズや「アメリカン・アイドル」、「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学(ABC)」などは主要部門の受賞を逃しています。
アメリカ大統領選も目前とあって、壇上からは多くのポリティカル・ジョークが聞かれた今年のエミー賞。全体の視聴率は、昨年FOXで放映された授賞式よりも5%ダウンの約1200万人と振るわなかったようです。昨年のWGAスト以来、米国人のTV離れは予想以上に進んでしまったのかも?今月から続々と始まっている新番組に、期待したいと思います。詳しい受賞者リストは、下記のホームページからご確認ください。
TEXT BY アベマリコ
2008年09月18日
ティーンには目の毒?CWのドラマシリーズが絶好調
この秋、注目のスタートを切った”90210 (原題)”と、今期で第2シーズンを迎えた”Gossip Girl”。それぞれLAとNYのリッチな高校を舞台にした学園ドラマですが、これらはすべて、最近話題のケーブル局、CWによる放映という共通点があります。2006年開局と比較的新しいネットワークであり、これまでもティーン向けの番組を十八番にしてきたCWですが、今週、視聴者数の自己ベスト記録を更新しました。米国中の父兄をヒヤヒヤさせまくりの描写、押し寄せる抗議すら上手に「再利用」したマーケティング法など、アメリカ第5ネットワークの戦略に注目です。
CWは、2006年9月よりスタートしたアメリカ地上波放送局。UPNのオーナーであったCBSコープと、WBを所有していたワーナー・ブラザーズによるジョイントベンチャーとして誕生しました。2局の合併後、CBS Corp. とWarner Bros.の頭文字を取って「CW」へと生まれ変わり、今や通称Big 3のABC・CBS・NBC にFOXを加えた5大ネットワークに急成長。開局から、日本でもDVDが発売されたばかりの「ヴェロニカ・マーズ (邦題)」、WBから移動してこの9月で第6シーズンを数える「ワン・トゥリー・ヒル」、スーパーモデルを発掘するリアリティ・ショー”America’s Next Top Model”など、数々のヒット番組を輩出してきました。更に今年からは、土曜の午後に”CW4Kids”としてキッズ枠を設置して、日本のアニメ「遊☆戯☆王 5D’s/Yu-Gi-Oh! 5D’s」などを放送中です。
ティーン向けシリーズを数多く製作するCWにとっては、いかに若年層を惹きつけるかがカギ。よって、各番組の内容は彼らの好奇心をくすぐるために、過激なものへと年々エスカレートしています。本コラムでも特集を組んだ新ドラマ”90210”は、初回放送分からいきなり保護者テレビ審議会 (PTC: Parents Television Council )よりクレームが。TV業界の秩序を正し、特に青少年を暴力/ワイセツ表現から守ることを目的に発足されたNPO団体PTCとしては、運転席に座った男子高校生の股間から女子高生が顔を上げる…といった意味深?なシーンは、一瞬といえど言語道断に映った模様です。それでも、結局は放送してしまったのだから後の祭り。とりあえず謝罪の声明文を出したCWですが、今後の内容を自重するのかどうかは明言されていませんでした。
こうしたCW vs. PTCのバトルは今に始まったことではなく、この春夏に街中を席巻した”Gossip Girl”の広告にも非難は集中。一部では、撤去要請が入るほどの騒ぎになりました。数種類のポスターにはメインキャラクター達の際どいシーンばかりが選ばれ、業界紙などから拝借した「キャッチコピー」が添えられています。特にPTCは、ボストン・ヘラルド紙による番組へのコメント「保護者の悪夢」が載ったブレイク・ライブリー版に対して、明らかにティーンやポップティーンが関心を持つよう助長していると猛抗議。それに対応するかのようにCWが作成した新広告には、PTCによる”Mind-Blowingly Inappropriate (ヒドく不適切)”との声明が引用されていたというから笑えます。双方が過熱するばかりのいたちごっこは、一体いつまで続くのでしょうか。
バッシングすら利用するCW流の戦術が功を奏したのか、ここに来て”Gossip Girl”は過去最高の視聴率を獲得。第1シーズンの平均視聴数が240万だったところ、月曜に放映された第3話は延べ370万人がチャンネルを合わせる結果となりました。全体で昨シーズンより17%もアップ、特に18歳-34歳の女性層では27%、18歳から49歳までの女性で換算すると30%近くも上昇の大躍進。ちなみに、鳴り物入りで始まった”90210”の視聴数は、これまでの3エピソードを平均して445万人。CWの高笑いとPTCの歯ぎしりが聞こえて来そうな数字となっています。
写真は、現在もハリウッドに掲示されている看板の一部。大人の目には単純にホットですが、もし子供に突っ込まれたなら確かに言葉に窮するかも。ダメだ危険だと言われれば、逆にキッズ達は興味を示すもの。そこのところを保護者同様、CWも熟知しているのかもしれません。マスコミの反応をうまく使ったCWですが、今月末からは他局の新番組ラッシュ。これからの視聴率バトルに生き残れるのかが見どころです。
TEXT BY アベマリコ
2008年09月12日
今年も目玉はあのセレブ!MTV Video Music Awards
9月7日、ハリウッドはメルローズ通りに面したParamount Studiosにて開催された第25回MTV Video Music Awards/VMA。年間を通して優れたミュージックビデオを表彰する本式典は、昨年かなりの物議を醸したブリトニー・スピアーズの復帰ステージが記憶に新しいところです。あの微妙なパフォーマンスから1年、2008年度も注目のブリちゃんが再登場。彼女の「リベンジ」や今年の事件簿などなど、多くのセレブリティ達が一堂に会したアワードの模様をお伝えします。
昨年はラスベガスから中継され、メインホストが立てられていなかったVMAですが、本年度はイギリス出身のコメディアン、ラッセル・ブランドが司会に抜擢されました。本国ではタレント活動のみならず、過去の度重なる逮捕歴やドラッグ問題などでも知られる著名人ですが、アメリカでは今夏のコメディ映画”Forgetting Sarah Marshall (原題) ”に出ていた人?ぐらいの認知度のようです。そんな彼の司会っぷりは、のっけからハイテンションな滑り出し。オープニングでは数ヵ月後に迫ったアメリカ大統領選に触れるや「世界を代表して」オバマ候補を推し、現ブッシュ大統領を「頭の弱いカウボーイ」と表現するなどの毒を吐きまくっています。更には、アメリカのティーンに絶大な人気を誇り、敬虔なクリスチャンとしても知られるジョナス・ブラザーズを前に、彼らのプロミスリング (結婚まで純潔を誓う指輪)を下ネタで茶化す始末。直後、プレゼンターとして登壇したジョーダン・スパークスにチクリと批判されて謝罪するも、会場&お茶の間ドン引きのやりたい邦題でした。彼の司会を評するアメリカ各紙は賛否両論ですが、とりあえず全米に思いっきり顔が売れたことは間違いなさそうです。
昨年のVMAに引き続き、やはり話題に上ったのはブリトニー・スピアーズ。事前の番組用CMでもブランドが彼女を「公開ナンパ」するなど、ブリちゃんの登場を匂わす作りでした。実際のセレモニーではパフォーマンスを見せず、コメディ俳優ジョナ・ヒルとのミニコント後に開幕を宣言。その後、”Piece of Me”でノミネートされた3部門全てを次々と制覇しました。VMAにて過去16回のノミネートを受けている彼女ですが、受賞は今年が初。そんなブリちゃんが、女性部門ビデオ賞/ポップビデオ賞/本イベントの最高栄誉にあたる年間ビデオ賞を一気に持ち帰るとは、誰の目にもサプライズ! 仮にVMAがゴシップの祭典だったなら、彼女の3冠は満場一致だったのかも…?結局、翌日の見出しは「Jaw-Dropping=顎が落ちる=口あんぐりの仰天」といった文字が躍りましたが、そこはジョークやアイロニー満載のMTVならではの計らいといったところです。3つの宇宙飛行士型トロフィーを抱えて微笑む彼女は、昨年よりもずっとシャープに。今回の受賞を機に、更なる活躍を期待したいと思います。
全体的に、本年度のパフォーマンスは老舗スタジオでの開催とあってか、かなり派手でシアター然としたものに。R&B歌手のリアーナは小林幸子さんを彷彿とさせる3mはありそうなスカート型装置に乗って登場し、ヒット曲“Disturbia”を披露しています。また、前出のジョナス・ブラザーズはNYを模したセットにて、アコギバージョンの”Lovebug”を熱唱。アップテンポに曲調を変え、熱狂したファン達に囲まれる様子は往年の”Hard Days Night”が重なりました。また、トリを飾ったのは”Love Lockdown”を引っさげて登場のカニエ・ウェスト。北京オリンピックの開会式を思い起こさせる太鼓と花火をバックに、最新曲を披露しています。ちなみに、イベント常連のリンジー・ローハンやパリス・ヒルトンに加え、Beijing 2008の顔となった男子水泳のマイケル・フェルプス、男子バスケよりコービー・ブライアントもプレゼンターとして駆け付けました。
ざっとVMA 2008を振り返ってみましたが、他にもクリスティーナ・アギレラの久々のステージや、”I Kissed a Girl”で一躍スターダムに上り詰めたケイティ・ペリーのパフォーマンス、ドイツ生まれのトキオ・ホテルが新人賞を獲得など、多くの見どころが満載。当日の模様や全受賞者リストは、下記のホームページよりご覧ください。構えることなく、皆で突っ込みながら鑑賞できるのがVMAの良いところ。来年は、どんなサプライズを見せてくれるのでしょうか。
【2008 MTV Video Music Awardsホームページ】
TEXT BY アベマリコ
2008年09月04日
“90210” 待望のプレミア放送!
90年代にアメリカを熱狂させたティーン・ドラマ、”Beverly Hills, 90210 (原題・FOX)”がフィナーレを迎えてから早8年。今や、全米で最も有名な郵便番号となった「90210」が、装いも新たにお茶の間に帰って来ました。製作にグリーンライトが灯って以来、ベールに包まれていた注目のスピンオフ。いよいよ明らかとなった構成や、ちょっと入り組んだ「相関図」などを大特集します。
“Beverly Hills, 90210”といえば、アメリカで最も成功したTVシリーズのひとつ。日本を含め世界をも席巻した「ビバリーヒルズ高校/青春白書 (邦題)」は、日本における海外ドラマ人気に火を点けた立役者といっても過言ではないでしょう。今回のスピンオフ製作が発表された2008年の初頭より、キャスティングや撮影が内々に進められること数ヶ月。更に、通常は業界関係者向けに行なわれるパイロット版 (新作ドラマ第1話目)の試写もなく、その扱いは異例の厳戒態勢がとられました。そして待ちに待った今週2日、ティーンの新学期に合わせたこの日に、満を持しての初回プレミア放送の運びとなったのです。
新バージョンの設定は、スピンオフというよりも「リメイク」といった趣き。アメリカ中東部 (前作はミネソタ、新作はカンザス州)から引っ越して来た一家による、ビバリーヒルズでの新しい生活を軸にした物語です。これだけだと単純に「ビバヒルの現代版」といった雰囲気ですが、この度の”90210 (CW)”の売り&これほど注目を浴びている理由は、何といっても原作との巧妙なる繋がり。前シリーズのキャラクター達をうまく配置したことによって、原作を知らない現在の若者達はもちろんのこと、90年代のオリジナル版にハマりまくった世代までを取り込むことに成功しています。
今回「90210」に戻って来た旧キャラは、現在のところで3名。まずケリーことジェニー・ガースは、母校ウエスト・ビバリーヒルズ高校のカウンセラーとして登場します。また、ビバヒルの主人公でありつつ早々に姿を消すこととなったブレンダ (シャナン・ドハーティー)も、イギリスで活躍する舞台女優として街に戻って来ることに。今後は、同校の演劇部で演出家を務めることになるようです。こうなると、トリ・スペリングが演じていたドナちゃんも見たいと思うのがファン心ではありますが、彼女はオファーを受けるも前出のふたりに比べてギャラが低いのを理由に、出演を見送ることになっちゃいました。また、筆者が最も感動してしまったのは、ナットさん (ジョー・E・タタ)の復活!昔と変わらぬスイートな笑顔で、現在も学生達の溜まり場になっている「ピーチピット」を経営しています。驚かされたのは、お店の変貌っぷり。これまでの50年代風ダイナーといった様相から一転して、かなりオシャレなカフェとなっておりました。また、お店の裏に隣接したクラブスペースも「The Pit」としてモダンに健在です。
パイロット版への出演はありませんでしたが、第2話の予告編にはケリーのママ=ジャッキーことアン・ギレスピーが顔を見せていました。どうやら、相変わらずケリーとはうまくいっていない様子…。また、第2シーズンでジャッキーとデヴィッド・シルバー (ブライアン・オースティン・グリーン)の父親との間に出来たエリンちゃんが、高校生となって登場。彼女が持つブログは、全校生徒の注目の的!といった「ゴシップ・ガール」な女の子に成長した設定です。更には、原作で優等生だったガブリエル・カーテリス演じるアンドレアの娘、ハンナ・ザッカーマン=ヴァスケスも、校内放送のキャスターとして現れるなど、ビバヒルマニアには垂涎ものの設定も。こうした心憎い演出の数々によって、前作ファンの期待に答える準備も万端といったところです。
初回パイロット版は、見応え十分な2時間の拡大放送。オリジナル版と絡めつつ、メインキャラクターに養子の黒人少年ディクソンが加わったり、70年代にハリウッドスターだったという父方の祖母デビーが同居していたりと、新設定も目白押しです。このおばあちゃんの台詞がなかなかウィットに富んでいて、物語をかき回してくれそう。ストーリーもファッションも見応えのある「火曜の90210」、今後しばらくは世代を超えたティーン&ママ達のお喋りトピックになるかもしれません。
TEXT BY アベマリコ