2009年01月29日
BY & FOR アクターズ!第15回SAG Awards
1月25日、全米俳優組合SAG (Screen Actors Guild) が主催したSAGアワード。会場となったLAダウンタウンのシュライン・オーディトリアムは、きらびやかなハリウッドセレブリティ達で賑わいました。昨年度、最も功績を残したと思われる俳優にSAG会員達が投票を行なった結果が発表される本授賞式は、いわば俳優による俳優のためのセレモニー。そんな「同業者」のお眼鏡にかなった受賞者とともに、当日の模様や裏話まで、盛りだくさんでレポートします。
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<映画部門>
アンサンブル・キャスト賞: 「スラムドッグ$ミリオネア (邦題)」
主演男優賞: ショーン・ペン/「ミルク」
主演女優賞: メリル・ストリープ/「ダウト あるカトリック学校で」
助演男優賞: ヒース・レジャー/「ダークナイト」
助演女優賞: ケイト・ウィンスレット/「愛を読むひと」
<TV部門>
アンサンブル・ドラマ部門: “Mad Men (AMC / 原題)”
アンサンブル・コメディ部門: “30 Rock (NBC)”
主演男優賞ドラマ部門: ヒュー・ローリー/「Dr. House (FOX)」
主演女優賞ドラマ部門: サリー・フィールド/「ブラザーズ&シスターズ (ABC)」
主演男優賞コメディ部門: アレック・ボールドウィン/”30 Rock”
主演女優賞コメディ部門: ティナ・フェイ/”30 Rock”
生涯功労賞: ジェームズ・アール・ジョーンズ
注目は、映画部門の主演女優賞に輝いたメリル・ストリープ。”Doubt (原題)”では恐ろしく厳しいシスターを演じていた彼女ですが、呼ばれた瞬間は椅子から飛び上がる程ビックリ。更にはダッシュで登壇するや開口一番「ドレスすら買わなかったのよ!」と黒のトップスとパンツ姿を客席に披露するなど、むしろヒットミュージカル映画「マンマ・ミーア!」のドナさながらといった素顔が印象的でした。
ステージからは、候補者を含むアクトレス全員の「ガールズ」達を賞賛。これには「チェンジリング」での候補、アンジェリーナ・ジョリーも満面の笑みを浮かべておりました。ストリープは過去11回のノミネートを経て、この度でちょっと意外な2つ目となるアクター像を持ち帰っています。同賞男優部門を獲得したショーン・ペンは過去に3度ノミネートされており、これがSAGアワード初受賞。実在したゲイ活動家のハーヴェイ・ミルクを熱演した「ミルク」での受賞に、俳優ならずとも心動かされるスピーチを披露しています。「俳優として、我々はゲイもストレートも演じない。人間を演じるのだ。」これには、会場から熱い拍手が巻き起こりました。
TV部門ではNBC局の”30 Rock”が主要3部門制覇と、圧倒的な強さを見せました。本作の主演/脚本/製作を兼任するスーパーウーマン、ティナ・フェイは壇上にてコメディエンヌらしいジョークを連発。娘のアリスちゃんを引き合いに、SAGの印税問題を散りばめたり、オバマ大統領ネタを混ぜ込んだりと、そうそうたる顔ぶれを前にあの頭の回転の速さはサスガのひと言です。また、同じく本作より主演男優賞を獲得したアレック・ボールドウィンは、会場をいじる余裕も。「今夜は誰と仲良くしようかなぁ。アンソニー・ホプキンスかダイアン・レインか…。だってアンソニーめちゃめちゃカッコいいから!」会場が爆笑に包まれた一瞬でした。
本年度の生涯功労賞に選ばれたのは、名優ジェームズ・アール・ジョーンズ。恐らく「スター・ウォーズ」シリーズのダース・ベイダーの声の主として広く知られているかと思いますが、彼の映画/TV/舞台/ナレーションと幅広いメディアでの活躍が讃えられての受賞となりました。スピーチの最後には、今は亡きポール・ニューマンにトロフィーを掲げる姿も。会場は皆スタンディング・オベーションを贈り、彼の甘美な声と言葉に酔いしれました。
また、この度のSAGアワードでは、超ラッキーな少年が話題になっています。スター達をひと目見ようと多くのファンが駆けつけたレッドカーペットにて、彼が差し出したメモ帳をアンジェリーナ・ジョリーが受け取り、一緒に来場していたブラッド・ピットにも声をかけての「ブランジェリーナ連名サイン」を実現。そのメモ帳、家宝に決定です。
また、同じレッドカーペット上でユニークなエピソードを披露したのは、映画部門アンサンブルにノミネートの「フロスト×ニクソン」でデヴィッド・フロストを演じたマイケル・シーン。
その朝、フロスト本人の生電話で起こされた彼は、寝ぼけて自分のキャラと喋っている錯覚に陥ってしまったとか。ご本人お墨付きのハマり役だったようです。
ちなみに、本作品で主演男優賞にノミネートされたフランク・ランジェラ演じるリチャード・ニクソンは、本来の元大統領のイメージを覆したともっぱらの評判。60-70年代当時、国民規模で憎まれたといわれる氏の知られざる横顔に、思わず涙する人々が続出中です。筆者もオススメのこの1本、3月の日本公開をお楽しみに。
アクターが認めたアクターが勢ぞろいするSAGアワードは、賞レースの中でも特に注目を集めるセレモニー。特に今年は、他の式典と違って華やかなドレスやジュエリーが多く、観客の目を楽しませてくれました。いよいよオスカーまであと1ヶ月を切ったところ、今後も各アワードを含めてご紹介していきます。
TEXT BY アベマリコ
2009年01月23日
第44代アメリカ大統領誕生!Aリスト・スターが続々と応援に
1月20日 (現地時間) 、首都ワシントンD.C.にて行なわれたアメリカ大統領就任式。”Yes, We Can!”のキャッチコピーですっかりお馴染みとなったバラク・オバマ氏が、宣誓を経て第44代アメリカ大統領に就任しました。米国民が待ちに待ったこの日に向けて、現地では様々なイベントを開催。当日の会場に足を運んだビッグな顔ぶれはもちろん、先駆けて行なわれた催しの数々など、2009年度のInauguration=就任式を「ハリウッド的目線」から覗いてみましょう。
数々の表紙を飾るオバマ大統領
まずは、18日に開催の「We Are One」。ワシントンD.C.のナショナル・モール西端に位置するリンカーン記念館では、スティーヴィー・ワンダー、ブルース・スプリングスティーン、メアリー・J・ブライジ、アッシャー、ビヨンセ、シャキーラといった「新旧アメリカの顔」とも言えるアーティストを招いたコンサートが開かれました。
こちらは、就任前のバラク・オバマ氏やファミリー、副大統領となるジョー・バイデン夫妻も観覧。真っ白な巨大リンカーン像の目前で繰り広げられる曲目に、今後のアメリカ「ツートップ」が身体を揺らす様はなかなかファンキーでした。また、かのマーティン・ルーサー・キング・Jr.が1963年に「I Have a Dream」の演説を行なったことでも知られる当地に、ご子息3世も来場。加えてトム・ハンクス、デンゼル・ワシントン、ジェイミー・フォックス、スティーヴ・カレル、ジャック・ブラックといった銀幕スターまで登壇した盛りだくさんのライブは、ケーブル局HBOにて独占放映されました。
その翌19日は、アメリカの祝日”Martin Luther King Jr. Day”。例年この日は各地で様々なボランティア活動が行なわれますが、D.C.内のマーティン・ルーサー・キング図書館ではNPO団体フィーディング・アメリカ主催のチャリティー行事「ナショナル・ハンガー・ラリー」が開催されました。国内の飢えや貧困を払拭すべく立ち上げられた同イベントは、この日のランチになるはずだった食料やお金の寄付を募るといった仕組み。前出のマーティン・ルーサー・キング・3世に並び、ベン・アフレックやデヴィッド・アークエットら俳優陣が訪問し、歌手ジョシュ・グローバンとハービー・ハンコックによるパフォーマンスで盛り上がりました。
そしてこの日の夜、リンカーン記念館で行なわれたのは「Kid’s Inaugural: We Are the Future」。現在ミリタリーに属する家族が中心に招かれたコンサートには、マイリー・サイラスやジョナス・ブラザーズといったキッズに大人気のアイドル達が勢ぞろいしています。新ファーストレディーとなったミシェル・オバマ婦人や長女マリアちゃん、次女サシャちゃん、バイデン副大統領のお孫さん4名も招かれ、それぞれがカメラを片手にはしゃぐなど、子供らしいキュートな横顔が見られました。
ちょっと渋めのオバマさんがボトルウォーターに
そして大統領就任式の当日は、300万人を越す大観衆がナショナル・モール一帯を囲みました。寒空の下、世紀の瞬間をひと目見ようと集ったのは一般人のみならず。ダスティン・ホフマンやスティーブン・スピルバーグ、オプラ・ウィンフリー、モハメド・アリ、マジック・ジョンソン、ジョン・キューザック、ショーン・コムズ (ディディ)、ジェイ・Z&ビヨンセ夫妻などなど、各界の著名人がD.C.入りしています。 オバマ氏がちょっぴり「食い気味」に復唱した宣誓式の後、約20分に渡る就任演説では静粛なムードの中、時折割れんばかりの歓声が。終わりが見えない程の群衆を前に、 スピルバーグ監督は「こんな光景は絶対撮れないよ」とこぼしていました。
就任式直後の速報によれば、各ネットワークのホームページは20日の式典前後にピークを迎え、一時はパンク状態に陥ったとか。CNNでは1億3600万ヒット、動画ストリーミングは2130万件を越える過去最高数を樹立し、FOXでも500万件の動画再生数は歴代最高、MSNBCは1億700万ヒットに1400万件のストリーミングと、昨秋の大統領選を大幅に上回る数字で、軒並み記録更新しています。 また、アメリカ最大級のSNS「MySpace」においては、就任式前日にアップされた特別チャンネル”The Presidential Pledge”にアクセスが集中。デミ・ムーアが製作/監督/編集を務めたセレブリティ50名以上が集ったビデオには、皆さんがお気に入りのあの人も登場するかも?それぞれが様々な事柄に誓約を立て、個々人が今後の変化を担う試みは、一般メンバーの賛同を受けて広がりつつあります。興味のある方々は、下記のホームページからどうぞ。
あちこちに「Historic Event=歴史的事件」の単語が踊った大統領就任式2009。晴れて大統領となったオバマ氏の一挙手一投足に、今後もますます注目が集まりそうです。世界的な不況で、どこを向いてもダークな話題が多い昨今。ハリウッド・セレブリティ達を巻き込んだ怒涛の勢いに乗って、ワールドワイドな活性化に繋がることを願って止みません。
【MySpace “The Presidential Pledge”】
TEXT BY アベマリコ
2009年01月15日
復活!第66回ゴールデン・グローブ授賞式
今月11日、ビバリー・ヒルトンホテルにて開催された第66回ゴールデン・グローブ授賞式。ノミネート者やプレゼンターを含めた300名を越えるハリウッドスターの面々、それを上回る数のファン達で会場は大賑わいを見せました。丸テーブルを囲んでの晩餐スタイルは、終始リラックスムードに。そんな「2年越し」に復活したセレモニーの模様を、各受賞者と交えてご紹介していきます。
Photo by JoeShlabotnik
それでは早速、気になる結果から。GG賞主要部門は以下の作品/俳優陣が持ち帰っています。
・作品賞 (ドラマ部門):「スラムドッグ・ミリオネア (邦題)」
・作品賞 (ミュージカル/コメディ部門):「それでも恋するバルセロナ」
・監督賞: ダニー・ボイル「スラムドッグ・ミリオネア」
・主演男優賞 (ドラマ部門): ミッキー・ローク「ザ・レスラー」
・主演男優賞 (ミュージカル/コメディ部門): コリン・ファレル「イン・ブルージュ」
・主演女優賞 (ドラマ部門): ケイト・ウィンスレット「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」
・主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門): サリー・ホーキンス「ハッピー・ゴー・ラッキー」
・助演男優賞: ヒース・レジャー「ダークナイト」
・助演女優賞: ケイト・ウィンスレット「愛を読むひと」
・外国語作品賞: “Waltz with Bashir (原題)” イスラエル作品
・アニメ賞: 「ウォーリー」
・生涯功労賞 (Cecil B. DeMille Award): スティーヴン・スピルバーグ
今回の式典において最も熱いスタンディング・オベーションを浴びたのが、助演男優賞に輝いた故ヒース・レジャー。昨年、薬物中毒による事故でこの世を去った彼に代わり、同作のクリストファー・ノーラン監督がグローブ像を受け取っています。奇しくも彼の一周忌にあたる1月22日は、アカデミー賞ノミネート者の発表日。GG賞に合わせ、オスカー像も獲得となるのでしょうか。また、ケイト・ウィンスレットは史上4人目となる「Wトロフィー」制覇に感激のスピーチを展開。一方、久々に公の舞台に返り咲いたミッキー・ロークの名前が呼ばれた際にも、大きな拍手が巻き起こりました。
映画のみならず、TV部門の各賞も発表されるのがGG賞。本年度は、”30 Rock (NBC)”と”John Adams (HBO)”が大健闘をみせ、それぞれが作品賞 (TVミュージカル・コメディ映画部門/ミニシリーズ・TV映画部門) に輝いたほか、ノミネートされていた全タイトルも制覇しています。一方、作品賞のドラマ部門は”Mad Men (AMC)”に軍配。2007年のスタート以来、2年ストレートで同賞を獲得しており、他の追随を許さない勢いを見せつけました。
盛大に行なわれた2009年度のGG賞ですが、フタを開けてみれば歴代ワースト2位の視聴率という結果に。昨年はWGAストの影響を被って授賞式を断念、小一時間で受賞者を発表するのみの残念な催しであった為、今年こそは!といった意気込みが感じられただけに残念です。 過去平均2000万人がチャンネルを合わせると言われてきたGG賞ですが、今年は1460万人という低迷ぶり。昨年の600万人に比べればマシとはいえ、2007年度からは26%もダウンしてしまった模様です。アカデミー賞などと違ってライブパフォーマンスが無く、司会者も立てない本アワード。視聴者にとってはちょっぴり地味目に映るのかも?
更には世界的な不況の煽りを受けてか、来場したスター達のファッションはモノトーン系のシンプルな装いが多く、大半の女性達のジュエリーはイヤリングがメインといった「控えめさ」も敗因のひとつに挙げられました。
オスカーを占うに絶好のバロメーターとされるGG賞ですが、演技部門を全て外国勢がさらった昨年のアカデミー賞に似て、ミッキー・ローク以外は全員「外国人」。また、作品内容もアメリカ国外が舞台となっているものが多いあたりも興味深いところです。納得あり、驚きもありのこの結果から、どれだけの番狂わせが巻き起こるのか?今後も各賞レースから目が離せません。
【GG賞公式サイト・全ノミネート&受賞リスト】
TEXT BY アベマリコ