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2011年03月31日

視聴率トップ争いを展開するアメリカ2大リアリティショー

春の訪れとともにやってくる、米2大リアリティショーの一騎打ち。春・秋の年2クールの放送を行なう芸能人社交ダンスバトル「Dancing with the Stars (ABC)」と、ほぼ1年がかりで全国オーディションからハリウッド予選、そしてメインとなる本選バトルを繰り広げるアイドル発掘番組「American Idol (FOX)」。2つの人気番組の戦いの火蓋が切って落とされました。


  毎週LAのスタジオより放映されているAI。
  Photo by BestWDW on Flickr
数ある人気リアリティショーを押しのけ、アメリカ史上最高視聴率記録をキープし続けている「American Idol」(以下AI) 。こちらがシリーズ2ケタ台となる第10シーズンへと突入した今期、それを追うかたちで先週21日より「AI最強のライバル」とされる「Dancing with the Stars」(以下DWTS) のシーズン12が幕を開けました。DWTSの初回プレミア放送は、週明けトップとなる平均2260万人の視聴者を獲得。その一方、ファイナリスト達がTop10の座をかけてモータウン・メドレーを披露した23日のAIは、驚異の平均2390万の視聴数を叩き出して、王者の風格を見せ付ける結果となっています。ちなみに今シーズンより、DWTSの月・火曜の放送日はそのままに、AIは以前までの火・水曜の2夜連続放送から水・木曜へとスロットチェンジ。同日の両者バッティングが無くなった今、どちらがどれだけの数字を稼ぐのかに注目が集まっています。

今期のAIは「辛口ジャッジ」の名を欲しいままにしていたサイモン・コーウェルが番組降板となって以来初のインストールメントであり、近年の視聴率低下や他のリアリティ番組の台頭によって、シーズン10を前にシリーズ続投を不安視する声も上がっていました。しかし、蓋を開けてみれば、新ジャッジの不思議なケミストリー(=相性) が功を奏したのか、名誉挽回に大成功。ゴージャスな美貌はもちろん、回を重ねるごとに審査員としての頭角をメキメキと現しているJ. LOことジェニファー・ロペス、つい先日番組内で63歳!のお誕生日を祝うこととなった現役ロッカー兼フェロモンバリバリの色男スティーヴン・タイラー、そしてこれまで最も地味なジャッジとされてきたランディ・ジャクソンが、コーウェルの去った穴を埋めるかのように見事な進行と仕切りを見せるなど、この「名トリオ」誕生が視聴者に好印象で受け入れられているようです。


  今やミリオネア!ライアン・シークレストの
  蝋人形。AIホストを務めながら、DWTS
  が生んだダンサー/歌手/女優として
  人気急上昇のジュリアン・ハフと交際中
  とのウワサも。
  Photo by cliff1066 on Flickr
一方、ひと足お先に第12シーズン目を数えることとなったDWTSは、今期も各界からのスター、そしてすっかりお馴染みとなっている「あの人は今?」枠も含めたキャスティングで話題沸騰。選りすぐりの出演者11名は、以下のような顔ぶれとなっています。また、今週早々にダンスフロアを去ることになったのが、サイコ・マイクことラジオDJとして知られるマイク・キャサーウッド。歴代の第1敗退者からなる「ワーストダンサー・クラブ」の12人目として、不名誉な仲間入りを喫してしまう結果となりました。


Dancing with the Stars シーズン12 全出演者
<姓アルファベット順>

カースティ・アレイ(女優・コメディエンヌ)
マイク・キャサーウッド(ラジオDJ)★第1週敗退
クリス・ジェリコ(WWEレスラー・ミュージシャン)
チェルシー・ケーン(女優<旧姓スターブ>)
シュガー・レイ・レナード(元プロボクサー)
ラルフ・マッチオ(元「カラテ・キッド」俳優)
ロミオ(ラッパー・俳優)
ペトラ・ネムコヴァ(スーパーモデル・慈善活動家)
ハインズ・ウォード(NFL選手)
ケンドラ・ウィルキンソン(元プレイメイト・リアリティタレント)
ウェンディ・ウィリアムズ(TVパーソナリティ)


来る4月26日よりスタート予定の新オーディション番組「The Voice (NBC)」では、クリスティーナ・アギレラやマルーン5のアダム・レヴィーンらがボイス・コーチに名を連ねており、新たな大ヒットシリーズ?との呼び声も。また、コーウェルが製作総指揮と審査員を兼任する「The X Factor (FOX)」も着々と準備が進んでおり、現在はいよいよ地方オーディションが始まったところです。今後ますます熾烈を極めるであろう、2011年のリアリティショー・ガチンコ対決。今後もしばらくは、TVに釘付けとなる日々が続きそうです。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 12:34 | トラックバック

2011年03月17日

Pray for Japan: 海外スター達から寄せられる日本への祈り

日本時間3月11日に発生した東北関東大震災を報じるニュースは、ここアメリカでも瞬く間に広がり、様々なメディアを通してトップ記事扱いとなりました。そして1週間余りが経過した現在も、被災された方々の安否が気遣われ、また福島原発事故の続報は常時ブレイキング・ニュースとして報道されています。こうした日本の惨状を目の当たりにしたセレブリティ達は、続々と支援を募るコメントや応援メッセージを発表。海を越えて、日本へ向けた言葉と祈りが寄せられています。

西海岸時間10日22時12分、地震発生直後に届けられた第1報から翌11日深夜までの約2時間、ニュースチャンネルCNNのウェブサイトには平均76万7000件ものアクセスが集中。通常時の28万件から実に173%もの急上昇が見られました。その一方、同時間帯に放映されていたFOX局ニュースは平均視聴数が67万人超に。また、背筋が凍るような津波被害の映像は過去2年間を遡るトップクリップとして流されており、我々在米日本人を含む多くの人々が眠れない夜を過ごすこととなりました。


  多くの方々が「Pray for Japan」を掲げ、
  日本を支援して下さっています。
  Photo by Gianluca Divisi on Flickr
こうして速報を受けた一般視聴者からはもちろん、多くのセレブリティ達からもTwitterやFacebookなどのSNS/ソーシャル・ネットワーキング・サービスを通してコメントが集中。現在に至るまで、多くのメッセージと募金支援が続いています。すでに日本国内でも既報の通り、ポップ歌手のレディ・ガガは自らの公式サイトで「WE PRAY FOR JAPAN / 日本の為に祈りを」と印されたホワイト・リストバンドを販売。定価5ドルに最高額100ドルまでの義援金が添えられる仕組みとなっており、開始48時間で25万ドルを超える収益を上げる結果となっています。また、リンキン・パークのメンバーである日系3世のマイク・シノダも、同バンドが立ち上げている基金Music for Reliefを通して、25ドルのTシャツ2種の販売を開始。そして、2004年に起こったスマトラ沖地震で被災、婚約者であった写真家サイモン・アトリー氏を亡くしているスーパーモデルのペトラ・ネムコヴァは、自身が設立したチャリティ団体Happy Hearts Fundsから義援金の呼びかけを続けています。また以下は、地震発生直後からセレブリティ達よりツイートされたメッセージの数々。少しでも多くの被災者の方々の心に届くことを願って止みません。

ジャスティン・ビーバー (歌手): 「日本は地球上で大好きな国のひとつです… ものすごいカルチャーと素晴らしい人々の国。僕の祈りは彼らのもとへ。僕達みんなで助けなければいけません。」
マライア・キャリー: 「私の愛と祈りすべてを日本の皆さんへ。この悲惨な状況からの復興を願っています。神のご加護を、Aishitemasu」
エレン・デジェネレス: 「日本の津波のニュースを見ています。とても胸が痛いです。私の想いが被災者の皆さんへ届きますように。」
レオナルド・ディカプリオ: 「日本の皆さんに祈りを。この悲劇を乗り越えられるよう願っております。」 P. ディディ: 「お前ら、日本の地震を見たか?みんなで祈ろうじゃないか!日本に神のご加護を。」
パリス・ヒルトン: 「ニュース映像を見ていて、胸が張り裂けそうです。日本の皆さんを心配しています。日本に祈りを。皆さんに神のご加護を。」
ミラ・ジョヴォヴィッチ: 「日本は私の人生の大きな比重を占めており、今回の地震はただただ胸が張り裂けるような大惨事です。私達は祈り、ありったけの愛を送らなければいけません。」
クロエ・カーダシアン: 「私の祈りと愛は日本の皆さんへ。どの映像を見ても胸が張り裂けそうです。とても悲しい!強く祈っています!」
エヴァ・ロンゴリア: 「私の祈りは日本の皆さんとともに!」
ケイティ・ペリー: 「私の祈りを、日本の被害に遭われたすべての方々に送ります… #prayforjapan.」
ブリトニー・スピアーズ: 「すごく痛ましい。日本を思うと胸が張り裂けそうです。」
テイラー・スウィフト: 「日本の傷付いた方々へ、心からの想い、祈りと愛を送ります。」
<姓アルファベット順>

今回の地震発生直後から、アメリカ国内を拠点とする通信企業各社は、即座に異例の特別措置を敢行。AT&T社は3月11日から月末までの日本への海外携帯電話通話とテキストメッセージ料金を無料に、また同社のケーブルTVサービスU-Verseの日本語有料チャンネル「TV Japan」も月末までの無料視聴を実施しています。これに続くかたちで、Verizon社も4月10日までの日本向け海外携帯電話とプリペイド・テレフォンカードの通話料を無料に、またケーブルTV会社Time Warner Cable社でも、日本へのデジタル回線通話が4月15日まで無料に設定されました。

そして携帯電話各キャリアは、テキストメッセージ機能を利用しての募金活動を実施。前出のケイティ・ペリーもTwitterにて追って呼び掛けたように、90999に”REDCROSS”のパスコードを送信すると、10ドルの義援金がAmerican Red Cross経由で日本へ送られるシステムとなっています。同様に、計9つのチャリティ団体への番号とパスコードは以下の通り。その他にも、世界中から利用可能なApple社のiTunesにおいて、上記American Red Crossを介して、5・10・25・50・100・200ドルの定額募金が設置されていますので、アメリカにいらっしゃる方々を含め、是非とも参考になさって下さい。

-ADRA Relief: 85944 (番号) / SUPPORT (パスコード)
-American Red Cross: 90999 / REDCROSS
-Convoy of Hope: 50555 / TSUNAMI or SUNAMI
-GlobalGiving: 50555 / JAPAN
-International Medical Corps: 80888 / MED
-Mercy Corps: 25383 / MERCY
-Salvation Army: 80888 / JAPAN
-Save the Children Federation Inc.: 20222 / JAPAN or TSUNAMI
-World Relief Corp. of National Association of Evangelicals: 50555 / WAVE
-World Vision Inc.: 20222 / 4JAPAN or 4TSUNAMI

思わず目を覆いたくなってしまうような映像や、原発事故による未曾有の危機が日々報じられる中、遠く離れた地域に住む我々に果たして何が出来るのか。国境を越え、人種を飛び越えての協力を仰ぐこと、言葉を繋ぐことで救われる方々がいらっしゃることを切に願うばかりです。

日本赤十字社 東日本大震災義援金ページ (日本語): https://gienkin.jrc.or.jp/


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 15:59 | トラックバック

2011年03月10日

ポスト・アカデミーBUZZ!オスカー閉幕後の注目トピック

2月最後の日曜日を華々しく飾った、第83回アカデミー賞。すでに月が替わった今日でも、ここハリウッドでは「ポスト・アカデミー賞」のBuzz (=噂話) が街中を席巻しているところです。カーペットを彩った豪華ガウンの最新トレンドから、栄えあるオスカー俳優のリストに加わった名優達のこれからまで。オイシイとこ取りで、一挙にご紹介していきます。


  オスカー直前のハリウッド大通りは通行止め
  に。こうしてカーペットなどが設置されます。
コダックシアターへと続くハリウッド大通りにお目見えした、オスカー名物ロング・カーペット。本年度は、雨上がりのLAの青空に良く映えるフューシャ・ピンクが選ばれており、しっとりとしたレッドが基調となる例年よりもポップな印象を受けました。そんな「ピンク・カーペット」を闊歩する、豪華絢爛たる女優達に浴びせられる質問ナンバーワンと言えば、”Who are you wearing?” 直訳するなら「誰を着ていますか?」となってしまいますが、賞レース直前のカーペットタイムでは「どなたがデザインしたドレスを着ているのですか?」というように、デザイナーの名前を訊ねる際の決まり文句となっています。

2011年のガウン (正装用ドレス) のトレンドを振り返ってみると、まずは深紅がトップに君臨。ジェームズ・フランコとともに司会に奮闘するも、蓋を開けてみればAMPAS (映画芸術科学アカデミー) 会長のトム・シェラック氏にまで「リハでは良かったのに、当日のふたりにはケミストリー (=相性) が無かった」などとコメントされてしまうなど、何とも踏んだり蹴ったりだったアン・ハサウェイは、ヴァレンティノ・レッドが鮮やかなヴィンテージ・ドレスを選んでいます。その他、式典中にはタキシードからブルーやゴールドのドレスなど、計5度ものお色直しを披露。視聴率は2008年以来のダウンを喫したものの、彼女の着こなしは優に及第点と言えるでしょう。また昨年度のオスカー覇者サンドラ・ブロックも、ヴェラ・ウォンのレッドドレスを着用。そして「ウィンターズ・ボーン」劇中のノーメイク姿とは見紛うばかり、ため息の出るようなカルバン・クラインのセクシー・ドレスをまとったジェニファー・ローレンスもレッド、そして驚異のダイエット大成功でニュー・ボディを手に入れたジェニファー・ハドソンは、ごくごく赤に近いヴェルサーチによるタンジェリン・オレンジのガウンに包まれておりました。

お次は、主演女優賞に輝いたナタリー・ポートマンを中心に、様々なトーンの紫色が会場をジャック。「ブラック・スワン」でも衣装協力をしているロダルテのガウンで、上手にベイビー・バンプを隠していました。また彼女と共演したミラ・キュニスも、エリー・サーブの淡い紫のドレスで観客を魅了。そしてベテランオスカー女優の風格漂うケイト・ブランシェットは、ジバンシィのライラック・カラーの個性的なガウンを選んでいました。そんなパープルに続く人気カラーは、見る者をドキッとさせてくれるヌード。2002年度の感動的なオスカー獲得スピーチが未だ記憶に残るハル・ベリーは、賞レースの御用達=マルケッサの豪華ドレスをまとってのボムシェル・ボディで魅せてくれました。また「トゥルー・グリット」出演のヘイリー・スタインフェルドも同じくマルケッサのガウンを選びながら、弱冠14歳という年齢に相応しくキュートな着こなしを披露。同時に、ダイヤがあしらわれたフレッド・レイトンのプラチナ製ヘッドバンドにも、女性達の熱い視線が集まっています。


  何バージョンも作られたオスカー用ビルボード。
そしてさらに気になるのは、オスカー像を持ち帰った俳優4名の輝かしい今後。前出のナタリー・ポートマンは、恐らく史上最もテンションの低いアカデミー・ホストとなったジェームズ・フランコと共演のコメディ作品”Your Highness”が公開予定。そして5月に封切られる”Thor”ではヒロインを演じており、その後は「最も大切なお仕事」として産休に入る模様です。その一方、昨年度の「シングル・マン」に引き続き「英国王のスピーチ」で主演男優賞に2年連続でノミネート、いよいよ初オスカーを獲得したコリン・ファースは、”Tinker, Tailor, Soldier, Spy”や”The Promised Land”と、立て続けに出身地イギリス作品に出演。そして2012年を予定して、ニコール・キッドマンや「キッズ・オールライト」のミア・ワシコウスカらと共演する”Stoker”、「トゥルー・グリット」監督・脚本のコーエン兄弟による”Gambit”にも出演決定と報じられています。また悲願の助演女優賞を手にしたメリッサ・レオは、犯罪ドラマ”Lost Revolution”を筆頭に、今年中だけで短編/長編5作品にキャスト入り。2012年公開予定のコメディ”Predisposed”では、「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグやTVドラマ”30 Rock (NBC)”のトレイシー・モーガンとの共演が噂されています。そして最後に、レオとのW受賞を飾った「ザ・ファイター」劇中で衝撃のクラック中毒者を熱演、助演男優賞をさらったクリスチャン・ベイルは2012年を待って、あの超ヒット作の続編”The Dark Knight Rises”でアン・ハサウェイと共演。また同年には、チャン・イーモウ監督の最新作”The 13 Women of Nanjing”といった、国内外にて物議をかもすこと必至のタイトルへの出演が決定しております。

映画ファンは言うまでもなく、ファッショニスタにも嬉しいAcademy Awards。もうしばらくは、フューシャピンク・カーペット上での美の競演を見ない日はなさそうです。そして本年度の顔となったアクター達の出演作品、そして来年度のオスカー候補入り間違いなしの話題作など、これから順次公開されていく予定。目玉作品は逐一フィーチャーしていきますので、くれぐれもお見逃しなく。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 17:44 | トラックバック

2011年03月03日

例年以上にLow-key?第83回アカデミー賞

2月27日(現地時間)開幕したThe 83rd Academy Awards。世界中の映画ファン&業界人の視線が一斉に注がれる「映画の祭典」は、新旧スター勢揃いの一夜となりました。今年のセレモニーのキーワードは、ズバリConservative (=保守的)とLow-Key (=控えめ)といったところ。全24カテゴリーの受賞結果に加えて、当日のサプライズゲストや気になる視聴率に至るまで、本年度のオスカーを余すところなく振り返ってみましょう。


  ハリウッドの目抜き通り、ハリウッド×ハイランド
  に登場した特大Oscarビルボード。
近年Oscarsのホームグラウンドとり、今日のハリウッドを象徴するコダック・シアターにて開催された第83回アカデミー賞。前日までの悪天候がウソのように澄み切った青空の下、同劇場に面するハリウッド大通りに潸然と敷かれたレッド…もとい「フューシャピンク・カーペット」には、Aリストスター達はもとより、世界各国から集められた報道陣で賑わいを見せていました。

本年度オスカー授賞式のWホストに大抜擢されたジェームズ・フランコとアン・ハサウェイは、作品賞候補10作品全てに「飛び込んで」のオープニング・スキットを披露。主催のアカデミーことAMPAS (Academy of Motion Picture Arts & Sciences)の名に恥じない、各キャストとの自然な共演を叶えた見事なコンピューター・グラフィック技術が好評となっています。けれども、その後に続いた「テンション低すぎ」なフランコのロー・キーっぷり、そんな彼をカバーしようと空回りする必死さが痛々しくも見えたハサウェイは、残念ながら近年のワースト司会…との呼び声も。さらに「127時間」で主演男優賞にノミネート入りしていたフランコに至っては、出演作「スモーキング・ハイ (2008)」よろしくハイな状態だったのでは…?との良からぬ憶測まで飛び交っている始末です。

一方、主要部門のスコアカードを見てみると、事前に最多12部門のノミネート入りを果たしていた「英国王のスピーチ」が、下馬評どおりの作品賞・監督賞・主演男優賞・オリジナル脚本賞で最多4部門を受賞。また撮影賞・視覚効果賞・録音賞・音響編集賞と、主に技術部門で同じく4部門獲得の大健闘を見せた「インセプション」を追うかたちで、ゴールデングローブ賞を総ナメにした「ソーシャル・ネットワーク」は、作曲賞・脚色賞・編集賞の3部門に留まりました。そして揃って男女助演賞を獲得、それぞれのスピーチにおいて「妻の名前をド忘れ疑惑」と「栄えある舞台でFワード (卑語) 投下」が揶揄されているクリスチャン・ベイルとメリッサ・レオによって「ザ・ファイター」は2部門を、「アリス・イン・ワンダーランド」は予想に反することなく、美術賞と衣装デザイン賞の同2部門を持ち帰っています。またナタリー・ポートマンが主演女優賞に輝いた「ブラック・スワン」と、アンソニー・ホプキンスとベニチオ・デル・トロの競演が話題を呼んだ「ウルフマン」がメイクアップ賞を獲得、ともに1部門受賞を分け合う結果となりました。戦争好き・王室好き・ブリティッシュ・アクセント好き…などなど、アカデミーの嗜好にガッツリ合致した「英国王のスピーチ」の圧勝は、何とも保守的と言えるセレクション。その傍ら、圧巻の映像美と幾重にも仕掛けられたプロットで観る者さえもフリーズさせた「インセプション」の技術カテゴリー4部門制覇も、誰しもが納得の受賞といったところです。

第83回アカデミー賞: 全24部門受賞リスト

作品賞: 「英国王のスピーチ」
監督賞: トム・フーパー「英国王のスピーチ」
主演男優賞: コリン・ファース「英国王のスピーチ」
主演女優賞: ナタリー・ポートマン「ブラック・スワン」
助演男優賞: クリスチャン・ベイル「ザ・ファイター」
助演女優賞: メリッサ・レオ「ザ・ファイター」
オリジナル脚本賞: 「英国王のスピーチ」
脚色賞: 「ソーシャル・ネットワーク」
長編アニメーション映画賞: 「トイ・ストーリー 3」
短編アニメーション映画賞: “The Lost Thing (原題)”
外国語作品賞: “In a Better World (デンマーク作品)”
長編ドキュメンタリー賞: 「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」
短編ドキュメンタリー賞: “Strangers No More”
実写短編映画賞: “GOD of Love”
メイクアップ賞: 「ウルフマン」
美術賞: 「アリス・イン・ワンダーランド」
衣装デザイン賞: 「アリス・イン・ワンダーランド」
編集賞: 「ソーシャル・ネットワーク」
作曲賞: 「ソーシャル・ネットワーク」
オリジナル歌曲賞: 「トイ・ストーリー 3」
撮影賞: 「インセプション」
音響録音賞: 「インセプション」
音響編集賞: 「インセプション」
視聴効果賞: 「インセプション」


  この頃は酷評を受けるなんて露知らず…。
  W司会のジェームズ・フランコ&アン・ハサウェイ。
米TV史上最高視聴率を樹立したスーパーボウルXLV、過去10年間での最高値をマークした「音楽の祭典」第53回グラミー賞など、今年に入ってから行なわれたビッグ・イベントは軒並み大きな数字を連発していましたが、この度のアカデミー賞に限っては視聴率合戦に「惨敗」。向こう2020年までのオスカー独占放送権延長を発表したABC局は、近年のワーストを記録した2008年以来となる数字ダウンを喫し、昨年度の4130万人を10%ほど下回る3760万人と、奮わない結果と相成ってしまいました。往年のオスカー名司会とされるビリー・クリスタルや、御年94歳の名優カーク・ダグラスをサプライズゲストとして招くも、全体的にスローでユルい印象は拭えず。また、4月22日の日本公開が待たれる「サンクタム」で製作総指揮を務めているジェームズ・キャメロンの監督作、自身の「タイタニック (1997)」が保持していた世界興行収入記録を塗り替えた「アバター (2009)」のような強烈なファン・フェイバリット作品が無かったことも、数字後退の要因に上がっているようです。

ここハリウッドで行なわれる一大セレモニーも幕を降ろし、すっかり閑古鳥が鳴く…のかと思いきや、すでに「映画の都」の視線は来る春夏のビッグ・ムービーに向けられている模様。今回それぞれが初となるオスカー像を持ち帰った俳優陣4名も、続々とクレジットに名を連ねています。今後は2011年度映画のラインナップも続々とご紹介して参りますので、そちらもお楽しみに。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 12:20 | トラックバック