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2011年08月25日

リアリティ・シリーズ「Real Housewives」に悲劇

90年代に人気が爆発して以来、米国のテレビ界にすっかり定着したリアリティーTV。時を経るに従いその内容は次第にエスカレート、過激なものもたくさん登場しているのは、この連載でも紹介してきた通りです。こうした中、ついにというか、やっぱりというか、悲劇が起こってしまいました。

今月半ば、ケーブル局Bravoのリアリティ番組”Real Housewives”シリーズ出演者のひとりが自らの命を絶つという事件が起こりました。これを機にエンタメ業界では、リアリティ番組の在り方を問う声が上がっています。


  番組外のイベントにも仲睦まじく参加していた、
  在りし頃のアームストロング夫妻。
  Photo by TaylorArmstrongFans on Flickr

「ケーブル局で最も視聴されている料理番組」と称される”Top Chef (原題)”を筆頭に、数々の人気リアリティ番組を抱えているBravo局。なかでも”Real Housewives(リアルの主婦)”シリーズは、これまでにオレンジ・カウンティ、ニューヨーク、アトランタ、ニュージャージー、ビバリーヒルズ、D.C.、マイアミと、アメリカ7都市でスピンオフが制作されるほどの人気番組になりました。パロディ元であるヒットドラマ「デスパレートな妻たち (ABC / 原題: Desperate Housewives)」を彷彿とさせるような、各都市に暮らすリッチな主婦達の日常描写は、回を追うごとに固定ファンを獲得。また、ニューヨークシリーズに出演した女性実業家/料理人であるベサニー・フランケルのように、同局にて自身の冠番組を持つ程の「リアリティ・スター」をも生み出しました。

悲劇が起こったのは、シリーズの中でも特に人気の高かった”Real Housewives of Beverly Hills(ビバリーヒルズのリアル主婦)”。出演者の主婦、テイラーの元夫ラッセル・アームストロング氏が今月15日、ハリウッドヒルズの自宅にて自殺しているのが発見されました。番組内では昨年末、氏の方からテイラーに別居を告げるなど、二人が破局に到る経過がそのまま番組で流されていました。今年7月、DV/ドメスティック・バイオレンス被害を理由にテイラーが離婚届を提出した矢先に起こった不幸に、同シリーズの出演者を始めとして、関係者やファン達は動揺を隠せない状態です。

投資家であったアームストロング氏の訃報によって次々と明らかになったのは、自己破産歴や違法な株取引など、トラブル続きの人生。金銭的にも困窮しており、テイラーとのゴージャスな生活は虚像であったことも明らかになってしまいました。また、生前には「結婚生活を破綻に追いこんだ」とBravo局を批難するコメントを出していたことも発覚。さらには、アームストロング氏の母親まで登場、“息子は視聴率の為に人の名誉を平気で傷つけるテレビ局に、「悪役」に仕立て上げられた”と同局に抗議しています。批判の高まりをよそに、Bravo局からのコメントは未だ発表されていません。9月5日にプレミア予定であった”Real Housewives of Beverly Hills”第2シーズンの再編集のみが告知され、同日に放送されるかどうかは未定です。一方、奇しくも”Real Housewives of Miami”の出演者アレクシアの13歳になる息子さんが交通事故で重症を負うなど、”Real Housewives”シリーズは波乱続きとなっており、ついに”Real Housewives of New York City”の新シリーズが制作延期になりました。

実は、リアリティ番組の出演者が自殺へと追い込まれたケースは初めてではありません。2008年には国民的アイドル発掘シリーズ”American Idol (FOX)”の出場者が、敗退後に審査員ポーラ・アブドゥルの自宅前にて薬物の過剰摂取を図るという衝撃的な事件が起こっています。また、美容整形などを含む「お直し」番組”Extreme Makeover (ABC)”では、2005年に出演予定だった女性の姉妹が、2010年にはレストラン救済シリーズ”Kitchen Nightmares (FOX)”の出演者が自身の生命を絶つなど、近年のリアリティ番組は問題続出です。

今月20日、1500万ドル越えとされる豪華絢爛な結婚披露宴を行なったキム・カーダシアンら一家のように、私生活の切り売りを「生業」とする人々がいる傍ら、今回のような悲劇さえ生みかねないリアリティ・シリーズ。テレビ局サイドによる編集次第で、出演者は善人にも悪人にも映る為、一度定着した公のイメージに悩む出演者は多数おり、数字の為に「ドラマ」を演出する詐欺にも近い編集に、批判が続出しています。今後のリアリティ番組の製作に向けて、出演者に向けられた配慮や脚色のモラルなどが検討されることを強く願います。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 15:14 | トラックバック

2011年08月18日

夏のハリウッドを満喫するならココ!屋外音楽堂Hollywood Bowl

カラッとした日差しが降り注ぐ夏のロサンゼルスは、言うなれば毎日が「行楽日和」。チャイニーズ・シアターやユニバーサル・スタジオ・ハリウッドといったLA名物スポットは、連日ワールドワイドな観光客達で賑わっています。そして今回ぜひともご紹介したいのが、セレブリティやエンタメ業界人が足繁く通うことで知られる「ハリウッド・ボウル」。LAで最もグラマラスな夏の憩いの場は、今こそ絶好のシーズンを迎えています。


  ハイランド通り沿い・正面入り口の「Big in Japan」告知ボード
ハリウッドのアイコン、ハイランド通り沿いに構えるHollywood Bowlは、ご存知HOLLYWOODサインを望むLA随一の屋外円形シアター。1922年の創設以来、ロサンゼルス・フィルハーモニックの夏場のホーム・グラウンドとして知られ、これまでにフランク・シナトラ、フレッド・アステア、マリリン・モンローやビートルズ、そしてルチアーノ・パヴァロッティといった歴史に名を残すアーティスト達がそのステージを踏んでおり、かのチャールズ・チャップリンやフランクリン・ルーズベルト元米大統領らも足を運んでいたそうです。また、あまり知られていないところでは、米誌Playboyの発刊者であり、大のジャズ好きで知られるヒュー・ヘフナーが、過去33年間に渡って「Playboy Jazz Festival」なるイベントを主催。毎年6月中旬に行なわれているこのフェスティバルでは、黒人エンターテイナーの第一人者ビル・コスビーがMCを務めています。その他、本年度6月26日には「Big in Japan」と題したコンサートが催され、日本が誇るYMO: イエロー・マジック・オーケストラ、ミシェル・ゴンドリー監督によるPV ("Sugar Water") などで知られるCibo Matto: チボ・マット、Buffalo Daughter: バッファロー・ドーター、 Towa Tei: テイ・トウワらが、それぞれのパフォーマンスを披露。和太鼓や獅子舞といった日本伝統芸なども用意されたこの日のステージには、ゲストとしてオノ・ヨーコも招かれ、御歳78歳とは到底思えないほどのシャウトで観客の度肝を抜いてくれちゃいました。



  開幕前のステージに並んだ和太鼓
オーケストラ演奏を筆頭に、ポップ/ロック/カントリーなど多様なジャンルのコンサート、そして演劇やミュージカルが続々と上演されている当シアターは、ハリウッド・ヒルズの傾斜に沿って1万7,376席を確保。最前列を陣取るプライベート・ボックスシートのチケットは、500ドル前後からスタートする高額設定となっています。今日では、毎年オスカーを主催する映画芸術科学アカデミーのシド・ガニス会長らがボックスシートの「顔」に数えられており、同じく常連のハル・ベリーに至っては、毎シーズン2,000ドル以上とされるパーキングサービスを利用しているのだとか。こうした超VIPゲストに限っては、専用通路からの入場が許されているそうです。と、そんなファーストクラス情報はさておき、後部ベンチシートであれば前売りで1ドルからの掘り出しチケットもあり、中級クラスのシートならほとんどのイベントにて50ドル以下と、お財布に優しい価格設定もハリウッド・ボウルの魅力。さらに、お好きなフードやアルコール類を含むドリンクの持ち込みも自由となっていますので、各シートはもちろん、ハリウッド・ボウル自慢のピクニック・エリアでも、お弁当やワインを楽しむことが出来ます。



  YMOの演奏中、ライトとのコラボレーションも
年間を通して、様々なイベントが目白押しのハリウッド・ボウル。随時、何かしらのイベントが行なわれているハズですので、LA旅行の際にはぜひともボックスオフィスをご確認ください。ご当地ビールを片手に、ハリウッド名物Pink'sのホットドッグやTommy'sのハンバーガーに舌鼓を打ちながらの音楽鑑賞…なんていうのも、エンタメ天国ハリウッドならではの楽しみ方です。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 23:31 | トラックバック

2011年08月11日

ティーン羨望のカップルも来場!第13回ティーン・チョイス・アワード

8月最初の日曜日、ユニバーサルスタジオ・ハリウッドのギブソン・アンフィシアターにて行なわれた「TCA」ことティーン・チョイス・アワード。夏休み真っ盛り、この季節の風物詩となっている恒例イベントは、本年度も満員御礼の大盛況となりました。

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  2001年よりTCAの会場になっているギブソン・アンフィシアター。
  Photo by Matthew Field

ハリウッド北部のスタジオ・シティに位置するギブソン・アンフィシアターは、ここ10年来TCAの開催地となっています。会場に敷き詰められたレッドならぬ「ブルーカーペット」には、時代を代表するセレブリティ達がズラリと勢揃いしています。そんな彼らを一目でも見ようと、炎天下に集まったティーンエイジャー達の目前に、今日の注目度ナンバーワン・カップルであるジャスティン・ビーバー&セレーナ・ゴメス、レオナルド・ディカプリオとの交際が噂されているブレイク・ライヴリー、かつてはWテイラー・カップルとして話題を集めたテイラー・ロートナー&テイラー・スウィフトといった、旬な若手スターらが立て続けに登場。その一方、愛娘の手を引いて現れたマーク・ウォルバーグを筆頭に、キャメロン・ディアス、アシュトン・カッチャー、ブラック・アイド・ピーズ、タイラ・バンクスなど、どう考えても「オトナ」にカテゴライズされてしまうであろう御一行様も、若いファン達の黄色い声援に迎えられていました。

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  ティーンにも大人気!「ワイルド・スピード MEGA MAX」

ティーンエイジャー達によるインターネット投票を通して、映画/テレビ/音楽/スポーツ界で活躍する著名人が選出されるTeen Choice Awards。 本年度のTCAでは、人気TVシリーズ「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則 (CBS/邦題)」に出演するケイリー・クオコが司会に抜擢されています。近年のヴァンパイア・ブームにのって、今年はTVドラマ「ヴァンパイア・ダイアリーズ (CW)」が5部門を制覇。また、その一大ブームの立役者とされる映画「トワイライト」シリーズも、主演のロバート・パティンソン&テイラー・ロートナーのコンビによるイケメンジャンルの総ナメはもちろんのこと、2011年11月11日「ゾロ目」のワールドプレミアが待たれる超大作「インモータルズ -神々の戦い-」に出演するケラン・ラッツらとともに、トロフィー代わりのTCA名物サーフボードをごっそりと持ち帰っています。そして世界的な大ヒットを記録、日本では10月1日公開を予定している「ワイルド・スピード MEGA MAX」も、ティーンエイジャーのハートを鷲掴みに。並み居るブロック・バスター作品を抑え、チョイス・ムービー・アクション賞を獲得しました。その他、いよいよシリーズ最終章を迎えた「ハリー・ポッターと死の秘法 Part 2」は、合計7部門を独占。また、女子なら誰もが羨む彼氏?ビーバーを終始お隣りに携えていたセレーナ・ゴメスは5冠、そんな彼女のBFF (=大親友 “Best Friend Forever”の略)であるテイラー・スウィフトは、合計6枚のサーフボードを集める結果となっています。

FOX局にて、日曜日のプライムタイム=いわゆるゴールデンタイム枠に放映されたティーン・チョイス・アワード 2011は、およそ310万人が視聴。18歳から49歳の年齢別視聴数は昨年比26%ものダウンを見せながらも、若年層による高視聴率でランキング上位に食い込んでいます。夏バテ気味なオトナ達を尻目に、流行りにとっても敏感なティーンエイジャー達。彼らの次なるムーブメントに要注目です。


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 22:25 | トラックバック

2011年08月04日

ブルー旋風!「スマーフ」が大ヒットを記録

7月29日、ここアメリカにて日本よりひと足お先に公開初日を迎えた「スマーフ」。スクリーン狭しと縦横無尽に走り回る青い妖精たちは、夏のブロックバスター映画を抑えての鮮烈デビューを果たしています。


  アメリカ版「The Smurfs」の巨大ビルボード
1920年代後半にベルギーで誕生してから80年以上、TVアニメーションや絵本などを通して今も世界中で愛されているブルーの妖精スマーフ。ワールドワイドな人気者たちによる初の3D映画となった「スマーフ (原題: The Smurfs)」は、週末3日間のみで3560万ドルの大ヒットを記録、並み居る強豪サマームービーを抑えて、ボックスオフィスTOP2という快挙を成し遂げました。
なお、トップを死守した「カウボーイ&エイリアン」は、事前のリリース予想値であった4000-4500万ドルを大きく下回る3640万ドルでフィニッシュ。スティーヴン・スピルバーグやロン・ハワードといった制作陣、キャストにはハリソン・フォード、ダニエル・クレイグ、オリヴィア・ワイルドら豪華顔ぶれが揃っていたにもかかわらず、首の皮一枚の僅差という結果となっています。また、第3位の「キャプテン・アメリカ: ザ・ファースト・アベンジャー」に至っては、先々週のデビュー時より62%もの大幅ダウン。驚異のスマーフ・フィーバーに押され、2490万ドルで2週目を終えることとなりました。

「スマーフ」人気の秘密は、まず映画界の隠れた秘密兵器とも呼べるCG+ライヴアクション作品である点。古くは、アカデミー賞7部門にノミネートされたヒット作「ベイブ(1995)」、世界興収3億6133万ドルを叩き出した2007年作品「アルビン / 歌うシマリス3兄弟」、そして今年4月の全米リリース時に週末興収3810万ドルでボックスオフィスNo. 1に君臨、8月19日の日本全国公開が間近に迫る「イースターラビットのキャンディ工場」などなど、実写CGアニメーションによる爆発的ヒットの例は枚挙にいとまがありません。
また、レトロでありながらも年月を感じさせない可愛いキャラクター達の活躍も、今日のキッズはもちろん、かつてのキッズであった親世代にも大好評。ちなみにブルーの彼らは、1980年代から90年代にかけて日本国内にて「チーズキャッチ」なる商品のイメージ・キャラクターを務めており、筆者同様に「スマーフと言えばチーズ!」と連想される方々も多いのではないでしょうか。


  「DETOUR=迂回路」交通標識をパロディーにした
  ポスターは、ハリウッドをジャック
そしてやはり、ヒットの決め手は映画/TV/ミュージック界のスターが勢ぞろいしたキャスト勢。トニー賞、エミー賞、アカデミー賞などのホスト役にも引っ張りだこ、人気TVシリーズ「ママと恋に落ちるまで (CBS)」の顔となっているニール・パトリック・ハリス、名作TVドラマ「シックス・フィート・アンダー (HBO)」、惜しまれながらのフィナーレを迎えた「アグリー・ベティ (ABC)」と「HEROES (NBC)」、そして今や飛ぶ鳥を落とす勢いの「glee / グリー 踊る♪合唱部!? (FOX) 」といった「アメドラ代表作」の常連ジェイマ・メイズ、そして「ナイト ミュージアム2 (2009) 」や「イースターラビットのキャンディ工場」にも出演するハンク・アザリアらを実写キャストに迎えています。

その一方、スマーフ族の紅一点「スマーフェット」をキュートな声色で好演、現在全米ビルボードチャートNo. 1記録を更新中のケイティ・ペリー、自身の冠トークショーを持ちながら「ビバリーヒルズ・チワワ (2008) 」などでの声優活動にも積極的なジョージ・ロペス、「スター・トレック(2009)」や同年公開の「ターミネーター4」を代表作に持つ子役出身のアントン・イェルチンなど、声によるキャスト陣も充実。
更には、人気TVコメディ「モダン・ファミリー (ABC)」で人気に火が付いたソフィア・ヴェルガラ、「プロジェクト・ランウェイ (Lifetime)」シリーズに出演するファッション評論家ティム・ガン、アカデミー賞などのディナーも担当する著名シェフのウルフ・ギャング・パック、人気リアリティショー「Top Chef (Bravo)」の審査員を務めるトム・コリッキオなど、米国テレビの第一線で活躍するスターが目白押し。アメリカンTVマニアの方々は、ぜひとも劇場にて目を凝らしながら&耳を澄ませながら、チェックしてみて下さい。

アメリカ全土を席巻中の「スマーフ」日本公開は、ゾロ目の9月9日を予定。このブルー旋風に乗り遅れないよう、今からスケジュールのご確認を。童心に返れちゃうこと必至の1本です。

【スマーフ 公式サイト】


TEXT BY アベマリコ

投稿者 eigafan : 11:21 | トラックバック