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2008年11月 アーカイブ

2008年11月05日

『かけひきは、恋のはじまり』より ~企画が実現するまで~

プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
今回は、スリリングな“恋のかけひき”を描く、
大人のラブ・ストーリー『かけひきは、恋のはじまり』から。

企画が実現するまで
 アメリカン・フットボールが現在のような未曾有の巨大産業になるずっと昔。純粋にゲームを愛するという理由だけでプレイしていた男たちがいた。荒くれ者で、口は悪く、一度言い出したらテコでも動かない石頭な連中。彼らは試合中にかぶる皮製のヘッドギアから「レザーヘッド」と呼ばれていた。

 80年代の後半、アメリカン・フットボール・リーグの起源を調べていたスポーツ・イラストレイテッド誌の記者ダンカン・ブラントリーは、プロ・フットボールの創成期がそのまま映画になると考えた。というのも、1920年に始まったとされるプロ・フットボールの世界は「事実は小説より奇なり」を地で行くサプライズの連続だったからだ。中でも印象的だったのが、ジョン・マクナリーという当時のスター選手。大学生だったマクナリーは、創設されたばかりのナショナル・フットボール・リーグ(NFL) のダルース・エスキモーズに「ジョニー・ブラッド」の偽名で参加していた。そのおかげで、カレッジ・スポーツの選手資格を剥奪されずにプロとして活躍できたというのだ。

「酒好きでサイドカーバイクを乗り回していたマクナリーの豪傑ぶりが、そのまま主人公のドッジになった」とブラントリーは明かす。さらに同僚記者だったリック・ライリーを脚本の執筆作業に巻き込んだ。ライリーにはブラントリーが認めるユーモアのセンスと、フットボールの深い知識があった。
「20年代当時のオーナーはかなりのケチで、選手にユニフォームを着せたままシャワーを浴びさせ、脱いでからも浴びさせた。洗濯代を浮かせるのが狙いで、濡れたユニフォームは列車の窓から吊るして乾かしたんだ。あの頃はカレッジ・フットボールこそスタジアムに何万人と客を呼べる花形スポーツだったけれど、プロ・フットボールは「まともな仕事じゃない」と思われていたんだ」とライリーも語る。

2人の初脚本はスティーヴン・ソダーバーグ監督に持ち込まれ、『アウト・オブ・サイト』(98)でソダーバーグと仕事をしたばかりだったジョージ・クルーニーが興味を示したものの、15年以上も実現を待つことになる。

 2006年の夏、クルーニーは新たに立ち上げた製作会社スモークハウス・プロダクション・カンパニーで『かけひきは、恋のはじまり』熱を再燃させた。
「突然、このキャラたちを生かす方法を思いついたんだ。それまでは新しいことをやろうとしているのに、どうしても古臭いテーマをなぞっている気がしていた。そこで基本に返り、脚本の一番古い稿を引っ張り出したんだ。やっぱり『フィラデルフィア物語』(40)や、『フロント・ページ』(31)みたいな、僕の大好きな時代のコメディ風にするべきだと思い直した。ある特定の時代を描くには、その時代に一番ピンとくる枠組みを持ってくるべきなんだよ」
 
クルーニーとはスモークハウスのパートナーでもあるプロデューサーのグラント・ヘスロフは、ジョージ・キューカー、プレストン・スタージェスやビリー・ワイルダーらが手がけたハリウッド黄金期のスクリューボール・コメディ以外にも、60年代末から70年代に製作された『スティング』(73)、『明日に向って撃て!』(69)、『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』(76)を参考にしたと付け加える。
「これらの映画は正確にその時代を描いていた。いかにもハリウッドでございという風じゃなく、人間関係やストーリーの面でとても新しいんだ。この映画も、今の時代におけるそういった作品になると思ったよ」

ジョージ・クルーニーの突然のひらめきからようやく企画が実現した本作。
いよいよ今週末公開です。ぜひ劇場でお楽しみください!

【かけひきは、恋のはじまり 公式サイト】

11/8(土)、日比谷みゆき座ほか全国ロードショー
(c) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

2008年11月11日

『デス・レース』より ~キャスティング~

プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
今回は、‘近未来のグラディエーター’ともいうべき
衝撃のアクション大作『デス・レース』から。

世にも悪辣な面々の登場

 『デス・レース』キャスティングに当たって、制作者たちはアンダーソンが想像した常軌を逸した世界のリアリティを体現できる演技者を捜した。英国の俳優ジェイソン・ステイサムと話した後、監督はこれぞ主人公ジェンセン・エイムズだと思った。「大切なのは、肉体労働者的なヒーロー像だ。ジェイソンが理想的だと思った。彼なら不運な人生を背負った男を、充分に演じられる。」
 
 エイムズを通じて、アンダーソンは未来のかたちを創り上げた。
「この暴力的で貧困にまみれた世界で、彼はぼろぼろの寂れた町で、製鉄労働者として働いている。だが、それだけではない。彼には子供があって、それが唯一の人生の希望なんだ。」
 一方、『トランスポーター』シリーズ、『アドレナリン』など多くのスタントを自分でこなしてきたジェイソン・ステイサムはアクションや改造レースカーのチェイスシーンはもちろんだが、近未来世界に対するアンダーソンの精密なビジョンに感銘を受けている。「ポールはこのストーリーの隅々まで豊かなビジョンを持っている。細かいところにまでね。レースカーの外見や、登場人物たちの感情の動き。ストーリーのどんな細部でさえも把握してるんだ。この脚本は感情豊かで、面白くて、ダークで、暴力的だし、セクシーだと思うよ」

 主人公エイムズと対極にある、刑務所長も大きな存在感が必要だ。トニー賞の受賞者で、3度のアカデミー賞ノミネートを受けたジョアン・アレンは、ターミナル・アイランドの全権を掌握するヘネシー所長役を依頼された。
「話のコンセプトがすごいわよね。よくできた脚本だったし、登場人物たちには非常に魅力があったわ。レースカーはすごいし、なにか『マッドマックス』や『ブレードランナー』のような感じを受けた。ポールと会って、彼の考えを聞いた後『すごい、もしかしたら信じられないほどかっこよくなるかも』と思ったわけ。」
 彼女はこれまで扮してきた誰とも違う役柄を演じられるのが楽しみでたまらなかったという。「ヘネシーは非常に信心深い社会病質者ね。メディアと金に呑み込まれ、そこに人間の命が掛かっていることを忘れてしまっている。彼女は“デス・レース”というものを、爆発的に人気があって、人々が見たくてしょうがないテレビ番組としてしか見ていない。」
 プロデューサーのボルトは言う。「彼女が兵士のように悪態をつくのを見てるのはすごく愉快だ、だって普段の彼女の演じる役柄のイメージはどうしたって女大統領とか、女校長だから。」
 
今回、出色の存在といえばナビゲーター役のナタリー・マルティネスであろう。彼女は密かな目的を持ってこのレースに参加してる。「彼女は女受刑者だし、目の前で刑務所長に自由という飴をぶら下げられ、彼女の策謀に手を貸してしまうの。」
ただ、マルティネス自身は、正面からこの役に挑み、銃撃戦のテイクでは、この怪物車が走る最中に大胆にも窓から上半身を乗り出したアクションも果敢にこなしたほどだ。

そして桁外れの無慈悲な殺人者でフランケンシュタイン最大のライバル、マシンガン・ジョーを演じるのが、複数のプラチナ・ディスクを誇るミュージシャン、タイリース・ギブソンだ。彼は余りに無慈悲な殺人者の役作りに苦労したという。
「この役はすごく悪辣なんだ。だからセットにやってきて、この役に自分を追い込むのはすごく難しかった半面、テイクの間に気分を切り替えて、また素の自分に戻って、馬鹿やったり、笑ったり、ジョークを飛ばしたりする落差が激しすぎて、困ったね。」
 
こういった個性豊かな俳優たちが共演している『デス・レース』。
劇中で見せる彼らの熱い演技を、ぜひ劇場で味わってください!

【デス・レース公式サイト】

11/29(土)、有楽座ほか全国ロードショー
※本作はPG-12指定です
(C) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
 

2008年11月17日

『デス・レース』より ~レースカーについて~

プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
前回に引き続き、今回も11/29(土)公開の
アクション超大作『デス・レース』から。
 
狂気のデザイン——レースカーについて
 
 アンダーソンとオースタベリーはこの作業を始めるに当たって、二人のコンセプト・イラストレーターに依頼した。「まず、レース中の闘いのさなかでも、すぐに判別できるような、それぞれが異なったシルエットを持つ車」であり、「それから、幅広い年齢層にアピールする車」ということである。
 これらの車の工業デザインは、犯罪者たちが組み立てたゆえに、向こう見ずで、常軌を逸した美的センスから生まれている。そして、どの役者も、ナパーム弾、亜酸化窒素タンク、射出座席が装備されたそれぞれの車が大好きだった。エイムズとして運転するステイサムの車は、ザ・モンスターとして知られる装飾過剰の2006年型フォード・マスタングGTだが、3/4インチ鋼のトゥームストーン・テール、毎分3000発を発射する2丁のミニガンを装備しており、彼は鼻高々で、「マスタングといえば、アメリカを代表する大排気量スポーツカーだ。その写真を見るだけでどんな男でもぐっとくるのに、こいつのボディに隠された性能ときたら…」という。

 マシンガン・ジョー役のギブソンが運転するのは、武装して、装甲プレートで防御した2004年型ダッジ・ラム1500 Quad Cab 4WD だ。彼のピックアップトラックは武装ヘリコプターから奪ったバルカン機関砲を搭載しているので、他のどの車よりスピードが遅いが、どれよりも重い。「まったく巨大な金属の塊だし、それも道理さ。おれはムショきっての乱暴者だから、いちばん大きな車に乗ってるってわけだ。」とタイリース・ギブソンは笑う。
 
レースカーの製造
 
 レースカーは約8週間を掛けてのコンセプト・設計の後、モントリオールの製作所で車の組み立てとセットアップに取りかかった。特殊効果の責任者ジェイソン・ハンセンと、撮影用車両メカニックのブライアン・ウェルズとそのスタッフたちが、30台以上のベースカーの外装を剥がし、撮影用に改造しはじめた。「はじめに、ABS、エアバッグなど、余分な装備をぜんぶ外して金属の塊にしてから、ロールケージや、レーシングシートを取り付けていくんだ。次に、特殊効果チームに交代して、彼らが車体の製作をすることになる」
 
 これら機械の塊を撮影用車両にするためには同時にコンピュータによるハイテクな処理も行わなければならない。「手持ちの3Dスキャナ(アンディ・スキャンという名前で知られている)で、この車そのものをスキャンするんだ。様々なボディ上の付加物は、最初この3Dモデリングデータ上で配置される。3台の光学カメラと3カ所のレーザー光を使って、スキャンする表面のあらゆる点をカバーできるので非常に正確な作業が可能だ。重さは3ポンドで、コクピット内でもどこでもスキャンできるんだ。」と特殊効果デザイナーのジャン・マーチン・デスマレー。
 その後、メカニックや車体製作者たちが一台について約6週間の作業時間をかけて、すべてのレースカーを製造する。多くの装備は重量を考慮して作られるが、ダッジラムなどはそれでもサスペンションを換装する必要に迫られた。「荷重1500ポンドから、1トンの後輪二重車軸へ取り替えた。そして、装甲、マシンガン、過重な銃架などなど、ほぼ2500ポンドの重量をトラックの荷台に載せた。後部の砲だけで約800ポンドもあるからね。」
 撮影では合計34台の車両を使用した。その中には6台のマスタング、5台のダッジ・ラム、4台のポルシェ、3台のジャガー、3台のBMW、それに各車各様の3台のビュイックが含まれる。11台の主要レースカーと、いくつかのエキストラ・カーを描写することになった。

 そして他を圧して騒々しいのは、ヘネシーのザ・ドレッドノートだろう。この刑務所長が単純に破壊と視聴率アップのために製作を命じた怪物を兵器係責任者チャールズ・テイラーが語る。 
「車の前面には機関車のような排障器がついていて、ボンネット上にM3高速.50口径マシンガン2台が載っている。スリーパーキャブの中には、M134ミニガン2台、屋根には前部に.50口径マシンガンと、真ん中にも.50口径マシンガンを装備している。車体の下面には火炎放射器。後部には76ミリ砲を備えた戦車砲塔にはPKMマシンガンを搭載。この怪物がライトを点灯し、すべての砲を発射し、火炎放射器を使うと、たまげるなんてもんじゃない。その装備は兵器庫をまるまる載せたようなもの、走る地獄だね」
 
“エンジン付きのグラディエーター”さながらのド迫力で、
スクリーンの中を暴れまわるモンスターカーを要チェックです!!


【デス・レース公式サイト】

11/29(土)、有楽座ほか全国ロードショー
※本作はPG-12指定です
(C) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 

2008年11月27日

『デス・レース』より ~撮影・スタント~

プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
前2週に引き続き、今回も11/29(土)公開の
アクション超大作『デス・レース』から。
 
「本当に狂ってるとしか思えない」——撮影・スタント
 
 『デス・レース』のキャストとスタッフは、現場を離れる頃には、打ち身や擦り傷だらけになっており、撮影に使用された車の方も、レースコースに4輪を着いているのがやっとという状態だ。
 「『デス・レース』の撮影はスプリンター・ユニット、ファースト・ユニット、セカンド・ユニットの3つの班に分けた。セカンド・ユニットはスパイロ・ラザトスが監督して、ファースト・ユニットと並行して活動する。彼は特定のアクションそのものを、ポールの絵コンテにしたがって演出し撮影する。ポールはすべての俳優を使ってドラマを演出し、そのほかにスプリンター・ユニットがあちこちさ迷って、すべてのインサート・カット——アクセルを踏む足、回転計、ハンドル…といった実際の映画を作り上げている細かいショットすべてを撮る。」とジェレミー・ボルトは語る。

全部本当にこの現実世界で撮ってるんだ!

 複数のレースカーが最高スピードで競い合うレースの撮影は非常に難しい点が幾つもある。目を見張るようなスタントはたった一度しかできない時が多いので、アンダーソンの撮影チームは可能な限りフィルムをたくさん回した。最大8台のカメラが複数の視点から——しかも空中と地上の両方から撮影したのだ。ある時は何台ものカメラを衝撃、火炎、熱、破片から保護するべく衝撃保護ボックスに入れ、アクションシーンのまっただ中にある車中に置いたカメラの数センチ脇を、車が疾走することもよくあった。
 「1970年代や80年代と圧倒的に違うのはここだ。現代の『デス・レース』は、これまで映画撮影で見たこともないような独自の仕掛けを山ほど使った。この映画専用の特殊装置も開発した。炎上する何台もの車、空中20フィートでスピンする車。この映画では全部本当にやっていて、極限の距離までカメラが近づいて撮影してるんだ。」決死的な場面や瞬間の撮影を実行するため、アンダーソンはベテランの映画スタントマンたちと共同作業を行った。
 セカンド・ユニットのスタント・コーディネーター、アンディ・ギルによれば、「すべてが現実世界で実行できたのは、ラッキーだったね。それがポールの希望だったしね。特殊効果のワイヤー操作も最小限だ。空中を車がくるくるとスピンするなんていう非現実なシーンこそ、なるべく特殊視覚効果を使わないようにしたんだ。」
 現実の車を吹き飛ばすシーンも数多くある。「そういうシーンもリモコン制御で車は動かしてる。高速度撮影をする必要があって、車がバラバラになるような激しい衝突のときはさすがにスタントマンは使えないからね。」

決死のスタント撮影

<狭い視界と猛スピード>
スタントマンも今回は決死の覚悟だったようだ。ほとんどのレースカーは過剰な武装のため、視界が極端に狭い。ダッジ・ラムなどはフロントガラスが3センチ程度しか確保されていなかった。この状況で猛スピードを出し、衝突するレースカーの運転は数多くの危険をはらんでおり、大規模な火炎や爆発のため、スタントマンたちは常に3重の耐火スーツを着込んでいた。さらに銃器から排出される薬莢は、常に車のパンクという危険性があった。
  
<コックピット内の撮影は?>
ストーリーをうまく進行するには、実際に車中で俳優が運転しているショットを撮ることも欠かせない。多くの映画ではブルースクリーンを用いるところだが、『デス・レース』では簡単には許されない。実際、ステイサム自身も数多くの運転をこなしたものの、それ以外の部分はジャック・ギル率いるスタントチームの秘密兵器を使った。ポッド・カーだ。
 「俳優の反応を撮る必要があるときに便利だ。本物のドライビング場面で、実際の車がぶつかり合うときなんかにね。これはレースカーの屋根にポッドが取り付けてあり、それに運転ハンドル、ブレーキ、アクセルが付属している。私がその中で運転する間に、車内の運転席に座った俳優の顔をカメラが捉えるというわけさ。」
 
まさに命懸けの撮影に臨んだスタッフとキャストたち。
衝撃のアクションシーンを、劇場でご堪能ください!

【デス・レース公式サイト】

11/29(土)、有楽座ほか全国ロードショー
※本作はPG-12指定です
(C) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 

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