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2010年09月 アーカイブ

2010年09月22日

『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』~THE BEGININGS~

プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
今回は、10/8(金)公開の『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』から。
このドキュメンタリー映画が作られたきっかけについてご紹介します。

THE BEGININGS

 プロデューサーのジェームズ・ゲイ=リースは、幼い頃から父親の語るアイルトン・セナの話に刺激を受けてきた。父親は1985年に、セナの黒いロータスのスポンサーであるタバコ会社、ジョン・プレーヤー・スペシャルで働いているとき、セナと知り合ったのだった。「わたしの父はあちこちのレースから帰ってくると、あの若者には“なにか他のもの”があると言っていた。『他の若いレーシング・ドライバーたちとはまるきり違うんだ。もの凄く自信があるし、何か強い信念がある。とても変わっているし、とても真剣だ』ってね」こうして、この伝説的なレーシング・ドライバーについてのドキュメンタリーを作る、彼の長い旅路が始まった。

 この旅路の転換点となった日が2006年の3月。ゲイ=リースと、脚本家で制作総指揮のマニッシュ・パンデイがようやくセナの家族と会合を持つことができ、彼らの息子についての映画を作る許可をもらおうと売り込んだときだった。感情的になりやすいパンデイは、妻から「泣いてはだめよ、とにかくプロ意識に徹して」と言われ、音響、映像、スチル写真を交えた40分間のプレゼンテーションをやり遂げながらも、何とか体面を保った。「40分間ずっと、アイルトンの姉ヴィヴィアーニや、他の家族たちはさんざん泣きじゃくっていた。終了したとき、ヴィヴィアーニが立ち上がって、わたしを抱いて、耳に囁いてくれた。『ほんとうに弟のことをよく知っているのね』と。」

 この売り込みの成功に元気づけられ、彼らは英国へ帰った。「セナの家族がずっと連絡を保ってくれ、『あなたとジェームズの二人でこれを是非やって欲しいと思っているの。あなた方がこれに込めた内容が大好きだし、うまくいくと思うわ』と言ってくれてたんだ。2年かかって彼らと契約したけれど、たぶん、他の映画人たちがセナの家族に企画を売り込んだときうまくいかなかったのは、アイルトンの死だけを扱おうとしているのがお見通しだったからだね。ぼくたちは、初っ端からこの映画ではそんなことはないと、主張していたんだ」

 映画制作者たちの売り込みは家族たちに功を奏した。「信頼の問題なんだ」とゲイ=リース。「そして、自分は正しいことをするつもりだと、みんなに確信してもらうことだ」そのような正しさは、パンデイが家族に披露したプレゼンテーションにはっきりと現れている。そのタイトルは『アイルトン・セナの人生と死』だった。プロデューサーたちはたんに悲劇的な死だけに焦点を当てたかったのではない。彼の非凡で、多面的な人生を探訪したかったのだ。セナのストーリーは立身出世物語ではなく――生まれたのはサン・パウロの裕福な家庭だ――ひとつの輝かしい遍歴であり、それは人生に対する非凡なアプローチと、その天才的なハンドルさばき、そして彼自身の確立された深い信念に彩られている。

プロデューサーたちの熱い想いがアイルトン・セナの家族に届き、制作が実現した本作。
世界最速公開まで、あともう少し…お楽しみに!

【アイルトン・セナ ~音速の彼方へ 公式サイト】

10/8(金)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー

2010年09月30日

『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』~TELLING THE STORY~

プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
今回も引き続き、10/8(金)公開『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』から。
実はF1ファンではなかった監督アシフ・カパディアが、
だからこそ考えついた本作の構成についてご紹介します。

TELLING THE STORY

 プロデューサーたちは、監督にアシフ・カパディアを抜擢したとき、間違いなく才能ある作家だと確信していた。王立美術学校の卒業生で、構成に目配りのできる卓越した眼力を持っている。

 脚本家で制作総指揮のパンデイによれば、「セナのストーリーを語るいちばんお手軽な方法は、『イモラの3日間』、つまりセナが事故死したレースに焦点を当てればいい。確かにそれで心打つ映画になるかもしれないが、だが同時にあまりにもありふれている。たとえば手順として、金曜日、土曜日、そして日曜日を描いて、それから、主人公がどうしてそこへ至ったかを根拠づけるためにフラッシュバックを挿入する。折々にインタビューもカットインすれば、間違いなく、非常に説得力のある映画にはなるが、たぶん、それは彼の本質を見失っている映画でもあるだろう。そんなときにアシフがやってきた」

 カパディア自身は、スポーツファンではあるが、熱狂的なF1ファンではないので、実のところ、まったく感情に左右されることなくプロデューサーたちの主題にアプローチをかけた。「この映画以前は、セナやF1についての本を一冊も読んだことはないし、どこのウェブサイトも見たこともなく、レース場に行ったこともない。つまり、僕はそんな地点からこの映画に取りかかった。当初の作業ではまったくの部外者のような感じがしたね。でも僕が魅せられたのは、調査やインタビューを通じて対象について学んでいくという、その旅路だった。素材をまったく新たな視点で眺めるというね」

 「セナが驚異的なドライバーであるだけでなく、深く精神的な面も備えていたことがわかってくると本当に面白くなってくる。だから大切なのは、この映画の外の皮をどんどん剥いていって芯だけにすることだ。そうすれば、F1が好きじゃない誰であっても、セナのことを一度も耳にしたことがない誰であっても、この映画を身近に感じるし、登場人物がどんな人間かもわかるし、本当にこのストーリーに感動できる」とカパディアは微笑む。

 「僕は、単なる『イイ奴』という人間にはあまり興味がない。セナにはいつも何かちょっと暗いところがあるし、ちょっとぼくの気にかかる『何か』も彼にはあった。つまりアウトサイダー的な存在。彼はヨーロッパ世界への侵入者であり、プロストを贔屓にしているように思える大勢のドライバーたちや主催者と対決しなくてはならなかった」

 「彼のストーリーは素晴らしくよくできていて、僕たちはちゃんとした三幕劇をすでに手に入れてるんだ。まず彼の出世、それから成功、そして頂点に達したとたんに直面する困難。登場人物にはレース主催者側の〈喜劇の悪党〉バレストルがいるし、4度の世界チャンピオンを取ったライバルのプロストもいるし、それからセナの個人的な面である彼の家族、ガールフレンドたち、そのブラジルとの関係もあって、こうしてサスペンス、ドラマ、悲劇が生まれる。これは間違いなく、理想的な映画の姿、しかも全部本物だ」

プロデューサーのゲイ=リースも「この映画の素晴らしいところはその構成にあるんだ。栄枯盛衰。最終的には、それがこの世の理だからね」と語っている本作。
ぜひ劇場で、セナの人生のドラマに触れてみてください!

【アイルトン・セナ ~音速の彼方へ 公式サイト】

10/8(金)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー

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