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2011年05月 アーカイブ

2011年05月09日

『アジャストメント』~塗り変えられる運命:「操作」の始まり~

プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
今回は5/27(金)公開の『アジャストメント』から。

フィリップ・K・ディックの短編小説『アジャストメント(Adjustment Team)』をもとにした本作は、
どのようなきっかけから生まれたのでしょうか?

塗り変えられる運命:「操作」の始まり

 ジョージ・ノルフィ監督は別の脚本に取り掛っていた時、長年の友人でプロデューサー仲間のマイケル・ハケットからの電話で、フィリップ・K・ディックの短編小説『アジャストメント(Adjustment Team)』の話を持ち出された。まだ映画化権を獲得していたわけではないものの、ハケットはディックの遺族に強いコネがあり、この企画に大いに乗り気だった。

 ハケットが売り込んできたのは、“運命の擬人化”というコンセプトだった。愛する女性と結ばれないよう裏から手を伸ばす男たちの話に、ノルフィは強く惹かれた。「ノルフィはすぐに興味を示してくれてね」とハケットは語る。「その日のうちに会って、もっと詳しく話を聞かせてくれないかと言われたからね」。ディックの作品は予言的で反理想郷を描いているが、原案である『アジャストメント』の奇想天外さ―――つまり、運命は我々人間の中に忍び込んだ一派が操作している―――を軸に、そこにラブ・ストーリーを盛り込み、スリルあふれる魅力的な展開で人生における“大きな疑問”を掘り下げる、という映画版独自のコンセプトがノルフィの気に入った点だった。

 ノルフィが手がけたマット・デイモン出演作には『オーシャンズ12』があるが、その撮影中にも、ノルフィとハケットは『アジャストメント』の映画化の話を進めていた。二人ともデイモンを主役にしたい意向は固まっており、ノルフィは主人公にデイモンをイメージして脚本を書き始めていた。「マット・デイモンにはこれ以上ない普通っぽさがあって、だからこそラブ・ストーリーにも際立ったリアリティが出るんだ」とノルフィは語っている。

 我々の身近にいる、巨大で、手ごわく、しかも目に見えないはずの世界を垣間見てしまう男の話に、デイモンは興味をそそられた。そして、脚本の出来がよさそうならぜひ参加したい、という意向を製作側に伝えてきた。「ジョージとは親しいし、ずっと仕事をしてきたからね」とデイモンは語る。「彼は自分で書いた脚本をダメ元で僕のところに持ってきたんだ…自ら監督をやりたいと言ってね。信頼してる人だから、彼ならできると思ったよ」

 ノルフィはこの企画に取りかかる前に、自分が共同脚本を手がけた『ボーン・アルティメイタム』撮影中のデイモンとアイデアを練る機会を設けた。「マットのために書き上げた脚本なんだ」とノルフィは語る。「先に作品に参加したいという意向を聞いてたので、あっちへ行ったりこっちへ行ったりの共同作業だったけどね」。同時に、題材について二人は哲学的な会話を交わし、そのやりとりからストーリーを膨らませていった。

 デイモンが感心したのは、ノルフィがディック作品を膨らませ、現代の観客たちにも共感できるように工夫したところだった。「ジョージは何に対してもこだわりを持ってたね。ひと目でどういう人をキャスティングしたいかを見極めるし、この作品ではこうしたいというビジョンが明確だった」

 目に見えぬ不変のパワーを持ち、人間を操ろうとするこの一派は、一体何者なのか?どんな場所にでも、一瞬にして行く事が出来るエージェントなる者たちは、一体何者なのか?「アジャストメント・ビューロー【運命調整局】」という存在について、プロデューサーのハケットはこう説明する。「彼らには官僚的なシステムがあって、我々が進むべき方向へと人生を微妙に調整したり、時には、そっとそそのかしたり、障害を与えたり、突き動かしたり、勇気づけたり、誘導したり、甘い言葉で丸め込んだりするんだ。人が“他の道”を選んでも大丈夫なように、彼らは全ての解釈を図式化してる。“他の道”とは、当人の周辺で起こる出来事によって、結局はあらかじめ決められた選択肢へと誘導していく別経路のことだ。この世には偶然などはなく、最も純粋な形へと昇華した調整局は、宗教的かどうかを問わず、世界中に広がっている無数の信念の体系を匂わせる存在でもあるんだよ」

「アジャストメント・ビューロー【運命調整局】」という全く新しい切り口から展開する予測不能なストーリーを、ぜひ劇場でお楽しみください!


【アジャストメント 公式サイト】

5/27(金)、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー!

(c) 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

2011年05月16日

『アジャストメント』~調整局本部:マンハッタンでのロケーション~

プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
今回も5/27(金)公開の『アジャストメント』から。

本作のストーリーの鍵を握る調整局本部の建物など、
スタッフがこだわり抜いた撮影セットの裏話をご紹介します!

調整局本部:マンハッタンでのロケーション

 ニューヨークの街は、主人公デヴィッド・ノリスがこの地区選出の国会議員であるという点を別にしても、この作品の中で大きな役割を担っている。「様々な理由で、僕はニューヨークをこの物語のビジョンの中心としたんだ」とジョージ・ノルフィ監督は語る。「アメリカの中で最もパワフルだと誰もが認める街こそ、運命を操る本部を置くのにふさわしい場所。となると、それはニューヨークしかないからね」

 その中で、ノルフィがインスピレーションを感じたのは、どの時代だろうが一貫して、宗教的な重要性を持つ著名な建物だった。「僕は、できる限り美しい空間を選ぶよう努めたんだ。そして、そういう空間が、事物をコントロールしているかのように臭わせたかったんだ。それこそが、僕の見せたい世界の姿だった」

 「調整局の建物は、マンハッタンの中心に存在する架空のビルということにしました。それは、街に実在する6つの素晴らしい場所をつぎはぎして作り上げたものです」とプロダクション・デザイナーのトンプソンは説明する。「建物の基盤部分はマディソン・スクエア・パークから採りました。屋根はミッドタウンにあるビルからです。ニューヨーク公共図書館の下の方の部分も使っています。廊下と階段の吹抜けは、ダウンタウンにある旧合衆国税関のものです。私たちは、この街の建築物に見られる、ある時代特有の壮大さと完璧さを象徴的に表している部分ばかりを集めてきては、結びつけたのです」

 ニューヨークの類まれな美しさに加えて、『アジャストメント』のストーリーは、この世にはありえないような部屋や場所も必要としていた。リアルに見せたいと願っていたノルフィは、できる限り実在する場所を使うようにしていたが、特殊効果が必要な場面もあった。

 現実にはありえない、だまし絵のような調整局のオフィスの階段や廊下や部屋を作るにあたって、監督のノルフィは、実際にセットを組む場合はトンプソンを、想像を絶するような構造が必要な場合は特殊効果スーパーバイザーのマーク・ラッセルを頼った。ラッセルは以前に、同じくフィリップ・K・ディック原作の『マイノリティ・リポート』を手がけていて、作家独特の感性に通じているとの定評があった。

 観客と同様、登場人物にとっても、調整局は人智を超えた場所だと感じるような眺めになるよう、視覚的なトリックを駆使して意図的に作られた。ラッセルは、スタッフが際限なく複製を繰り返して作り上げた、本がぎっしり詰まった空間についてこう語る。「基本的には13のセットでできています。プラン・ルームを作るために最終的に集められた、さまざまな場所のさまざまなアングルですけどね」と、彼は続ける。「ここは目まぐるしいシーンなので、実際よりずっと精巧なものに見えるはずです」

スタイリッシュでアイデア溢れる建築美を、ぜひスクリーンでご堪能ください!


【アジャストメント 公式サイト】

5/27(金)、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー!

(c) 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

2011年05月23日

『アジャストメント』~スーツが男を作る:本作の衣装~

プロダクションノートをご紹介するこのコーナー、
今回が最後となります、5/27(金)公開の『アジャストメント』から。

男性の方にはオシャレの参考にもなるかも?
エージェントたちの衣装についてご紹介します!

スーツが男を作る:本作の衣装

 『アジャストメント』の中の建築を入念に選んだジョージ・ノルフィ監督は、その世界を仕上げるエージェントたちの衣装も、視覚的に人間離れしたものでありながら、あまり自分たちの存在に注意を引かないようなものにしなくては、と考えた。そこで、この超自然的な感じを、最も控えめな服装で表現することにした。いつの時代も変わらない、時代を超越したスーツと帽子というスタイルだ。

 調整局のエージェントは、自分たちが影だとすると、光となる人物の服装と似たようなものを身につけるのがセオリーだ。主人公のデヴィッド・ノリスは裕福な政治家なだけに、彼の人生の映し鏡となるエージェントも、よりフォーマルな装いとなるはずだ。

 「小粋なスーツと帽子というスタイルにしようとも思ったんですけど、特定の時代を感じさせるものにはしたくありませんでした」と製作のハケットは言う。「40年代かもしれないし、30年代かもしれないし、現代かもしれない。レトロでいながらモダンなものにしたかったのです。天使や悪魔のように、あまりに人間とかけ離れた姿へと誇張せずに、あくまでもそれとなく彼らがあちら側の世界に属する存在だと臭わせるようなスタイルですね」

 エージェントたちには人間の行動を調整する能力や、レーダーにしたがって網目のような街を縦横無尽に移行できる能力があり、ノルフィの脚本は調整局のパワーを目に見える形で巧みに表現している。「高次元のパワーを使うには、エージェントは帽子を被らないといけないんだ。どの帽子も、内側を見れば、パワーのランクが分かる。上級幹部たちは、人間により強い影響を与えるだけのパワーを出せる帽子を被っているんだよ」

 帽子が高次元のパワーのシンボルであるのに合わせて、ノルフィと衣装のワリッカ=メイモンは、スーツにも何かひとひねり加えたいと考えた。「私たちは、『局が象徴的に表しているパワーを喚起させる色は、何色だろう?』とずっと考えていました。そして、ふと、それは絶対グリーンだとひらめいたんです。調整局のあちこちに、グリーンをほんの少しずつ入れようと。ただし、落ち着いた色のパレットの範囲内のグリーンですけどね」

 しかし、また一方で、エージェントには軍隊のような雰囲気もある。局の中に一歩足を踏み入れれば、そこは、明確に統制された秩序の下で動いている世界だ。「私たちが真っ先に考えたのは、調整局には軍隊のような優雅さがあるということでした。すっきりと清潔感のあるライン、すべてにきちんとアイロンがかけられた、几帳面な感じです」と、ワリッカ=メイモンは説明する。「ジョージは、調整局には、根源的に軍隊的な構造があり、だから、ランク付けがはっきりしているんだよと、繰り返し言っていましたね」

一見ではみな同じに感じられるエージェントたちの帽子やスーツも、実は少しずつ違っています。
ぜひ衣装にもご注目を!


【アジャストメント 公式サイト】

5/27(金)、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー!

(c) 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

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