TEXT BY 尾崎佳加

 「ロード・トゥー・オスカー06」 Part. II IMDbが選ぶ、ワースト・オブ2005

先週から引き続きお伝えしている、米国映画データベースサイトIMDb(The Internet Movie Database/インターネット・ムービー・データベース)の授賞式シーズン特集「ロード・トゥー・オスカー06」「ベスト・オブ2005」があれば当然、裏版「ワースト・オブ2005」あり。褒めるばかりじゃ伸びませんとばかりに、IMDb会員たちが選出した愛のダメだしは以下のとおり。前回とはまた異なるユニークな部門を設けている。
【IMDb's Worst of 2005】
作品賞:「宇宙戦争」
監督賞:ウーヴェ・ボル(「アローン・イン・ザ・ダーク」)
脚本賞:「スター・ウォーズ エピソードIII/シスの復讐」

主演男優賞:トム・クルーズ(「宇宙戦争」)
主演女優賞:ジェシカ・シンプソン(「デュークス・オブ・ハザード(原題)」)
助演男優賞:ジャック・ブラック(「キング・コング」)
助演女優賞:パリス・ヒルトン(「蝋人形の館」)

テーマソング賞:「デュークス・オブ・ハザード(原題)」
映像効果賞:「ファンタスティック・フォー」
タイトル賞:「Get Rich or Die Tryin'(原題)」
ポスター賞:「Get Rich or Die Tryin'(原題)」
予告編賞:「ステルス」
作品賞は、優れた歴史的作品も得意だけれどたま~に偏ったSFオタクぶりを発揮してしまうスピルバーグ監督の「宇宙戦争」が、まあ納得の受賞。でも、男優賞を受賞したトム・クルーズは、同作品の演技よりもサイエントロジーへの信仰や遅咲きの恋に対する異常な喜び方が評価に影響した結果ではないかと思われる。監督賞、脚本賞は、観客の期待が高かった故に「イマイチだったな」と裏切られた感の票が集まったのだろう。
演技の下積み経験ゼロという女優陣の受賞には言い及ばないが、ジャック・ブラックの場合、プライベートで見せる強烈な個性と、作品で演じたもっとキョウレツなキャラクターが重なり、お腹いっぱいになった観客の「もう結構です」という声の表れではないかと思う。役のためには自己を押さえるべき俳優という職種で、彼ほど主張の強い人が成功していることはむしろ評価に値するのだが。
残りのユニークな部門の受賞リストは、みなさんがご自分で評価してほしい。主演のジェシカ・シンプソンが歌う非常にノリにくいカントリーロック「These Boots are Made for Walking」に、オリジナルコミックが超現実的すぎて実写での表現に限界があった「ファンタスティック・フォー」。「金持ちになれなきゃ死んじまえ」という、ゴリゴリのブラック・コミュニティーものを想像させるタイトルをつけたラッパー、50セントの自伝映画は、ハングリーさは伝わるがあまりにもストレートでひねりが無い。自らを50セント(50円くらい)と名乗ってスターダムを勝ち取った叩き上げのスローガン投球も2度は通用しなかったようで、ポスター賞までいただくハメに。
また、予告編部門まで設けて厳しくチェックを入れるIMDbのオタクぶりにも驚くが、栄えある受賞作である「ステルス」の予告編、これと言って悪い点が見つからない。作品の要所をうまく抜粋した厳選クリップに仕上がっていると思うのだが、私のジャッジが甘いのか。
厳しい目で作品を斬ってこそ一人前の映画ファンということだろうか。私も言いたい放題のブラックウェル氏やラジー賞にならい、辛口に磨きをかけて立派な毒舌批評家を目指したいものである。


<<戻る


東宝東和株式会社