TEXT BY 中条佳子(N.Y.在住)

 映画に登場した場所を訪ねてPart7 セントラルパーク
 ニューヨークを彩る四季折々の風景の中で、一番も美しいのは秋。その理由はやはりセントラルパークの紅葉でしょう。文字通り都会のど真ん中にあるこの自然空間が、マンハッタンをよりいっそう魅力的な場所に仕立てています。映画のロケ地としてもお馴染みの、NYでもっとも人気がある公園セントラルパークが今回のテーマ。
 ニューヨークが舞台となっている映画にかならずといって良いほど登場するセントラルパーク。843エーカー、南北は59丁目から110丁目までの約4km、東西はセントラルパーク・ウェストから5番街わたる約800mの広大な敷地が、マンハッタンに潤いを与える役目を果たしている。ニューヨーカーにとってセントラルパークは散歩や昼寝、ジョギング、ローラーブレード、サイクリングを楽しむためのなくてはならないスペースだ。
 ここでは様々なカルチャー・イベントが開催される。特に毎年夏、グレート・ローンで行われるメトロポリタン・オペラとニューヨーク・フィルハーモニーのフリー・コンサートは見逃せない。デラコルテ劇場でもフリーのシェイクスピア劇(連載69参照)が野外上演されるし、もちろんジャズやロック、RB、Hip-Hopのフェスティバルも目白押しとなる。

 春には花々が咲き乱れる中で、そして紅葉シーズンには落ち葉を踏みしめながらニューヨーカーはセントラルパークでデート。『オータム・イン・ニューヨーク』('99)、『恋人たちの予感』('89)にロマンチックで美しい秋の情景がとらえられていた。
 この公園を訪れるなら一度は馬車に乗ってみたい。でもこれはロマンチックなアイディアかどうかは疑問。馬も歩けば馬糞も落ちる、臭覚の鋭い人は馬車酔いしてしまうかも。というわけでクリス・ロックのコメディ『Down to Earth』(01)ではマスクしながら馬車に乗る場面があった。

 『私に近い6人の他人』('93)の夜の馬車のシーンも印象的。ゴシップではハリソン・フォードとララ・フリン・ボイルが、月夜の馬車に乗ったと報道された。
 11月4日には毎年恒例のニューヨークマラソンが無事開催されたが、このマラソンの最終地点はセントラルパーク内のタバーン・オン・ザ・グリーン前(連載79参照)。セントラルパークでは人が走る、りすも走る。そして『スチュアート・リトル』('99)を観るとねずみも走っている。

 最近の映画では、サミュエル・L・ジャクソンがセントラルパークの洞穴に住む破綻した天才ピアニストを演じる『The Caveman's Valentine』(01)や、ロマンティックコメディ『僕たちのアナ・バナナ』(00)の撮影が行われている。『リトル・ニッキー』(00)ではニッキーが大いびきをかきながらパークの岩の上で寝ていた。

 過去にさかのぼるとでは『クレイマー、クレイマー』('79)、『アニー・ホール』('77)、『ウォール街』('87)、『マンハッタン』('79)のロケーションになっている。
 最後に紹介したいのは、セントラルパークの一番の人気スポットはストロベリー・フィールズ。レノンのドキュメンタリー映画『イマジン』('86)にも登場している。ここにはオノ・ヨーコ寄贈によるイマジンの歌詩「Imagine all the people living in peace/すべての人々が平和の中で生きることを想像してみよう」を刻んだ石碑がある。その下に連なる世界各国の名前のトップが、アフガニスタンだということに気がついているアメリカ人は果たして何人いるのだろうか。
ストロベリーフィールズ ストロベリーフィールズの石碑


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