ムーブオーバーとは? |
ムーブオーバーという言葉に関してはこれまでの中で既出のものですが、今回はムーブオーバーが持つ意味というものを特に説明していきたいと思います。 |
ここでムーブオーバーとは何のことか忘れてしまったという方に簡単に説明すると、上映映画を“別の映画館に移動させる”ということを意味しています。つまりある映画館で上映していた映画を公開数週間して終了した際に、別の映画館で上映するということを指しています。この言葉はチェーン(興行網)という概念から生まれたもので、東宝系のチェーンで言えば、“日本劇場で公開されていたが日本劇場で上映終了後、日比谷映画やみゆき座で上映をする”というのがムーブオーバーの例になります。 映画の興行収入は、当然公開期間が長ければ長い程増加致しますので、成績が良い映画であれば興行会社にしても、勿論配給会社にしても可能な限り上映を続けたい訳です。ですが既存の東宝系や松竹(&東急)系のチェーンの全国の映画館数には当然限りがあります。各配給会社から年間持ち込まれる数多くの映画をチェーンで上映していくには(勿論その全てが必ずしも上映できる訳ではないのですが)、興行会社がうまく編成をして、チェーンでの上映のやりくりを付けていかなくてはなりません。つまりどんなに大ヒットした映画であっても、際限なく同じ映画館で上映する訳にはいかないのです。 |
確かに現在も超大ヒットロングラン興行を続けている『千と千尋の神隠し』のようにずっと同じ映画館(チェーン)で上映しているものもあるのですが、これは特別な例であって、それぞれの映画館が持つアベレージ(以前お話した週間アベレージ(週アベ)というものです)を、ずっと上回っている(新記録が出るくらい大幅に)からこそ可能なことなのです。 |
通常時期の通常映画で概ね3~4週間、夏や冬などの大作映画でも長くて6~8週間ぐらい(つまり約2ヶ月ぐらい)で上映は終了となります。これは何も考えず週アベのことだけを考慮した場合なのですが(基本的な興行の考え方は、週アベを下回りそうになったら上映終了というもの)、当然興行会社は複数の配給会社を相手にしているので、1社だけのことを考える訳にはいかず、様々な政治的要素(A社は正月に○○○という大作を持っているから、無下には出来ない…等々。これはあくまで一例ですが。)が絡んで後番組を決めていきますので、週アベを超えているからといって、ずっと1作品だけを上映できないという局面が多々訪れる訳です。そんな時は、本来であれば6~8週間上映できる力を持った映画でも、4週間ぐらいで一旦上映を終了して、そのチェーンより下位チェーンで上映するようにムーブオーバーをする訳です。 例えば日本劇場の週アベを超えているのに、興行側の都合で日本劇場での上映を終了させられるなどという場合には、配給会社側は当然よりよい条件のムーブオーバーを要求する訳です。日本劇場チェーンで仮に6週間まるまる上映するのと、4週間日本劇場チェーンで上映して2週間日比谷映画チェーンでムーブオーバーして上映するというのでは、興収に大きな違いが出てしまいますし、シネコンでの上映にも影響を及ぼすからです(シネコンは直接チェーンとは関係ないのですが、やはり大きなチェーンで公開されている映画の方がシネコンでのブッキングも有利に進められることは間違いありません)。 ムーブオーバーには上記のようなケースもありますが、同時に映画の成績があまりに悪い為に上映を非常に早期(2~3週間)で打ち切ってしまって、前売券などをまだ持っているお客さんへの為にムーブオーバーして上映するというケースもかなりあります。 |
他に映画館が無いからという場合もありますが、日本劇場で上映している映画が2~3週間で上映終了して、日比谷シャンテシネ(元々は東宝の単館系映画の上映館なのですが、3館ある為に近年はムーブオーバー先になることが多いのです)で上映するというケースなどはまさにこれにあてはまりますね。 またこのムーブオーバー、全ての映画で行なわれる訳では当然ありません。各チェーンの混雑具合によっては、ムーブオーバー先が無いという事態もありますので、あくまで上位チェーンでの公開映画、そしてヒットしている映画、配給会社と興行会社間の政治的問題等々様々な要素が、その背景には存在しているのです。 |
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