「悪魔のいけにえ」
夏と言えばホラー映画! そんな納涼気分を味わえることうけあいのホラー映画の伝説の傑作を紹介します!
1974年製作の映画で、イギリスなどで公開禁止にもなった作品だ。ホラーとしては、実は血の描写などは少ないのだが、異様な迫力で圧倒する。ストーリーは、若者の集団が旅の途中で通りかかったテキサスの片田舎で殺人鬼一家に狙われるのだが、電動ノコギリを振り回すレザーフェイスと呼ばれる大男の存在感が凄まじい。
筆者が初めて観たのは輸入ビデオでだった。80年代前半には「既に観ることのできない伝説の作品」として映画ファンには知られていて、ビデオがない時代にアメリカではリバイバル公開するたびに興収トップ10に入ったり、マンガ家の藤子不二雄氏がお気に入りだったり(ブラックコメディとしてらしい)、テレビ東京の午前中枠で放送されたことなどを知ってはいた。渋谷に輸入ビデオを貸し出している。当時、渋谷に輸入ビデオをレンタルしている「ICBM」という店があり、そこでレンタルしたのだった。この映画を見て、あまりの描写力に圧倒されて思わずおかしくなってきて、「人は怖すぎると笑うんだ」と、恐怖を笑いは紙一重であることに気付かされた。そのことは、観た人には強烈な印象と共に、爽快感すら漂わせる解放感をもたらすエンディングを見れば分かるだろう。監督自身が共同で手がけている不気味なノイズのような音楽も素晴らしい。
監督のトビー・フーパーは一躍有名になり、後に今作のファンであるスティーブン・スピルバーグからの依頼で「ポルターガイスト」(82)を監督することにもなる。本来は演出力がありながら、今作の突出した衝撃度から評価が低い監督なのが残念である。今もホラーを中心に撮り続けているので、今後にも期待している監督だ。
日本では長らくDVDが廃盤で、海外版DVDの特典のみを収録した「悪魔のいけにえ」ドキュメンタリーパック「ファミリー・ポートレイト」&「ショッキング・トゥルース」が2年前に出ているほどの発売が待たれていた作品だったが、今年になって豪華2枚組と3枚組になって発売された。アメリカで昨年に出たスペシャル・エディション版DVDの日本盤化だが、3枚組には日本盤独自のブックレットと上記したテレビ東京で放映された時の貴重な日本語吹き替え版(サブタイトルは「テキサス大恐怖 殺戮チェーソーが迫る」だった)も収録。ニューヨーク現代美術館にも保存されている映画史にも残る傑作だ。
TEXT BY わたなべりんたろう
【著者プロフィール】
映画・音楽・ファションのライター。雑誌「Elle Japon」、「映画秘宝」、「TV Bros」、「ミュージック・マガジン」、「CDジャーナル」などで執筆中。
ここ数年の作品では「トゥモロー・ワールド」をこよなく愛す。
2007年07月25日 17:31
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