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「SPEED MAN」

秋は恋愛の季節。熱いカップル誕生の手助けとなるラブストーリーが氾濫する時期ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。すでに倦怠期を迎えている男女の場合は、秋もへったくれもないものだが、会話もなくなった危機的状況のふたりの距離を再び縮めるには、アドレナリンがドクドク出ちゃうパンチの効いた映画が必要だろう。

そんなムチャなリード文を経て紹介されてしまう日本未公開映画は、『SPEED MAN』。あのスタン・リー製作総指揮によるアメコミ映画で、基本的に単なるアクションもの。が、神業的な特殊能力を誇るのがアメコミヒーローの特徴ならば、SPEED MANの持ち味は放射線を大量に浴びたことによる副作用の“俊足”だけ。そのうえ、ヒーローのアイデンティティでもあるコスチュームをスポーツ量販店で普通に買って揃えてよしとする庶民派で、しかも、高速で事件現場へ走っていくため、着いた頃にはバテて息が上がっているという困ったちゃんなのだ。


   ↑SPEED MAN

ストーリーなど紹介する気もおきない冗談のような映画だが、深読みさせる異様なシチュエーションとは別に、『SPEED MAN』は映画的にいてもたってもいられない妙なポイントがいくつかある。心配な脚本、進行上カットすべき不要なシーンが多いことなど映画に一家言もっている人はノリツッコミで楽しんでもらいたいほど。なによりヒーローを、名優ショーン・コネリーの息子ジェイソン・コネリーが演じているのが、とても残念な感じ。お父さんにちょっと似ている顔が、悲哀をさらに高めている効果があるようにも思う。それに完璧に中年です。中年のヒーロー。ヒーローに憧れた『ゼブラーマン』の哀愁あふれる背中とは違い、“ジェイソンよ、中年にもなって何をしているの?”っていう悲壮感がたまらない。いやぁアンチエイジングですなぁ。意味が違うけど。

そんな脱力感と虚無感に支配されながらも、観たら絶対誰かに報告したくなる『SPEED MAN』。怪人ヘビ男がヘビっぽい攻撃を一切しないとか、そのヘビ男が陰謀を企む動機も壮大すぎる勘違いなんじゃねぇの? とか、アメコミ映画なのに人死にすぎじゃね? とか、とにかく論点だけには事欠かない。『SPEED MAN』はカップルだけでなく、人と話すきっかけにもなってくれるはず。仲たがいした旧友に、そっとプレゼントするのも悪くないと思う。中身は異様だけど人恋しくなるアメコミ映画で、この秋は豊かな人間関係の構築にトライしてみては?

TEXT BY 鴇田崇

【著者プロフィール】
総合映画情報サイト「映画生活」の編集を経て、フリーのライター/エディター/WEBプロデューサーに。WEB…「Yahoo!映画」「シネマトゥデイ」「映画生活」、雑誌…「この映画がすごい!」、「Newtype」などで執筆中。映画の趣味はミーハーで特段の深い愛情もないが、『シベリア超特急』に象徴される、とりとめのない娯楽を好む。

2007年10月09日 21:30

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