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「THE 有頂天ホテル」

「偽」が今年の世相を表す漢字だそうで、それにちなんだDVDでも探そうかと思ったら全然思い浮かばず……。仕方がないので、年末→大晦日→それが舞台の映画→『THE 有頂天ホテル』という流れに落ち着く。
僕自身が誠に恥ずかしく、悲憤に堪えない。この体たらく……。例の清水寺の(?)森清範貫主に怒られてしまいそうだよ。 

というわけで2007年最後にご紹介するのは、三谷幸喜の監督第3弾作品『THE 有頂天ホテル』。
物語の舞台は、大晦日のとある高級ホテル。従業員たちは、ホテルの威信がかかったカウントダウンパーティーの準備で大忙しだ。が、そこへ汚職が明るみに出て窮地に陥った国会議員をはじめ、ちょっとワケありの宿泊客たちがホテルで新年を迎えるために続々とチェックインしてくる。やがて、ホテルに集った人々は、思わぬ事態に巻き込まれていく――という、三谷幸喜お得意の、脚本の巧みな構成力で見せきるシチュエーション・コメディが展開する。


THE 有頂天ホテル スペシャル・エディション

劇場公開は2006年の1月14日で、年は明けていたものの、年初は楽しい映画で大笑いしたい大衆心理も手伝ってか、興行収入60億円を越える大ヒットを記録した。
それまでの三谷監督作品(『ラヂオの時間』『みんなのいえ』)とは比較にならない数の23人の超豪華キャストが一堂に会し(とくにラストシーン)、登場人物の数だけ存在する多彩なエピソードが魔法のように交差して、素敵な人生のドラマが紡がれていく。

覚えきれないほどの伏線が散りばめられるのだが、そこは三谷脚本! “あるアイテム”を使って交通整理を行ない、その着地点にはとてつもないカタルシスを用意して待ち構えている。これこそが三谷映画、三谷脚本の真骨頂で、日本では滅多にお目にかかれない本格的な群像劇に。
とりあえず、“グランド・ホテル形式”という難しい言葉はさておきで。

また、『ラヂオの時間』『みんなのいえ』に比べ盛り上がるスコアも少ない(というか、ほとんどない)のだが、その分、YOU扮する桜チェリーが歌う“If My Friends Could See Me Now”が胸にジーンと響く。この曲の歌詞こそがこの映画のテーマを言い表していると言っても過言ではなく、すべての登場人物の心情を代弁している。さんざん笑わせた後に、涙が出るほどの共感を呼び、感動させる。

ここに、エンタメ娯楽作の醍醐味がある! まさしく「看板に偽りなし」の傑作喜劇。
本作を“年越しDVD”にいかがでしょう? それでは、よいお年を!

TEXT BY 鴇田崇

【著者プロフィール】
総合映画情報サイト「映画生活」の編集を経て、フリーのライター/エディター/WEBプロデューサーに。WEB…「Yahoo!映画」「シネマトゥデイ」「映画生活」、雑誌…「この映画がすごい!」、「Newtype」などで執筆中。映画の趣味はミーハーで特段の深い愛情もないが、『シベリア超特急』に象徴される、とりとめのない娯楽を好む。

2007年12月25日 15:53

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