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「エキストラ Extras」

「エキストラ Extras」(原題”Extras”)は、2005年からイギリスのBBCで放送されたコメディ・シリーズである。日本でもWOWOWで放送され、放送時のタイトルは「エキストラ/スターに近づけ!」だった。最近の作品でも屈指の面白さで、第1シーズンと第2シーズンの「the complete」盤が発売されるので紹介しよう。




エキストラ Extras the complete first series

今作は「The Office」で知られるリッキー・ジャーヴェィスの主演による作品である。見ていない人はロバート・デ・ニーロ、ケイト・ウィンスレット、ダニエル・ラドクリフなどの豪華ゲストで、タイトルが「エキストラ」なので、有名スターがエキストラをする番組だと思っている人もいるようだが(筆者の周りに実際にいた)、全く違っていてエキストラ止まりの中年男アンディ(リッキー・ジャーヴェィス)がエキストラ仲間で友達のマギー(アシュリー・ジェンセン)の協力でエキストラからスターを目指すプロセスを描く。見どころは撮影現場の内幕をかなりブラックなユーモアで描き出しているところで、毎回ゲストに実在の有名スターが本人役で出演していることが大きな話題となった。

 例えば、第1シーズンの第2話「オレ様が行く! ベン・スティラー」はベン・スティラーがゲストなのだが、かなりイヤなヤツとして描かれる。アンディが台詞も無いエキストラで入った現場の監督がベン・スティラーだ。ベン・スティラーは世界中で自分の出演作品がどれだけヒットしたかなどを話した後に、でも今は世界に役立つ作品を作ろうとしていると話す勘違い野郎で、むりに社会派を気取っているセレブというわけだ。第1シーズンの第3話「ケイト・ウィンスレットの楽しいテレフォン・○ックス講座」では、交際している小道具担当の男がHな電話をかけてくる事に悩んでいるマギーが、そのことをアンディに相談しているのをケイト・ウィンスレットが偶然聞いてしまう設定だ。堅そうなイメージのケイト・ウィンスレットが実は気さくな人柄で、気さくすぎてテレフォン・○ックス指南までしてくれるのが笑いを誘う。パブリック・イメージを逆手にとってゲスト本人が楽しんでいる様子がとても面白いし、自己パロディを演じることで懐の深さを十分に感じさせてくれる。ケイト・ウィンスレットはノミネートが4回なのに、いまだにアカデミー賞がとれないので「ホロコースト映画の尼僧役をやっている」と告白する自虐ネタを披露する。




エキストラ Extras the complete second series

それは第2シーズンの第1話「オーランド・ブルーム、アノ船長への悪口炸裂!」も同じで、女性関係のゴシップでも知られるオーランド・ブルームがマギーを口説いたり(「ハリー・ポッター」シリーズの主演で知られるダニエル・ラドクリフが子供キャラのイメージに思い悩み、女性なら誰でも構わず口説いて回っている第2シーズンの第3話「ダニエル・ラドクリフと賢者のナンパ・テク」も同じ趣向)、第2シーズンの第5話の「イアン・マッケランの “ロード・オブ・ザ・ゲイ”」ではゲイとしてカミングアウトしたうえで認められて、サー(Sir)の称号もいただいているイアン・マッケランの演出する芝居のオファーが舞い込んできたアンディが狙われたりするのだ。

 今シリーズが高い評価を得ていることは第1シリーズがエミー賞コメディ部門のゲスト男優賞(ベン・スティラー編、パトリック・スチュアート編)、ゲスト女優賞(ケイト・ウィンスレット編)などでノミネートされ、 第2シリーズがエミー賞コメディ部門の脚本賞(ダニエル・ラドクリフ編)、ゲスト賞(イアン・マッケラン)、監督賞(オーランド・ブルーム編)などでノミネートされていることからも分かるだろう。他にもロバート・デ・ニーロや、音楽ファンには見逃せないデヴィッド・ボウイ、コールドプレイのクリス・マーティンがゲストの回もある。特典でドキュメンタリーやNG集も入っていて、こちらもとても楽しめる。これだけ楽しめる作品もめったにないので是非見てほしい。

TEXT BY わたなべりんたろう

【著者プロフィール】
映画・音楽・ファションのライター。雑誌「Elle Japon」、「映画秘宝」、「TV Bros」、「ミュージック・マガジン」、「CDジャーナル」などで執筆中。
ここ数年の作品では「トゥモロー・ワールド」をこよなく愛す。

2008年03月25日 19:01

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