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人生の機微にあふれる アイリッシュ映画の今

The Celetic Heart Festival 2007がハマースミスで開催

ロンドン西部・ハマースミス周辺は、古くからアイルランドの人々の多い地区として知られている。駅周辺にはアイリッシュセンターがあり、ロンドンへやってきた人々の情報交換の場にもなっている。90年代半ば、IRAの爆弾テロが激化していた頃、爆撃の標的にされていたところ、として記憶に残っている人もいるかもしれない。その地区で、恒例のアイルランドの音楽や映画のフェスティバルが催された。

 歌あり、ダンスあり、芝居ありのフェスティバル演目のなかで、アイルランドを舞台にした新旧のアイルランド映画も上映。アイルランドの独立戦争を描いた、ケン・ローチ監督の『麦の穂を揺らす風』のほか、病に冒された9歳の少年が奇跡を探して旅に出る『48 ANGELS』、劇作家として世界的に知られるマーティン・マクドナーの“ギネスよりも黒い”ブラックコメディ『Six shooter』 やアイルランド映画をリードするジョン・デイビス監督の『HOBO』などが上映された。

 アイルランドの映画には、ハリウッドのような派手な演出もないし、号泣できるような上手ないいシーンもない。それでも見終わったとあとに満足感があるのは、ドキュメンタリーでもコメディでも、その作品が現実の人生や姿を描いているから、ではないだろうか。

映画に見るアイルランドらしさ、とは?

 さて、アイルランド人、と聞いて人々とがまず思い浮かべるのは、どんなものだろう。音楽の才に長け、貧しくも信心深く、酒とギネスを愛する、そんなところだろうか。最近の映画で言えば、アラン・パーカー監督の『コミットメンツ』や『アンジェラの灰』が、その国民性を感じさせるものとしてあげられる。しかし、アイルランドを舞台にしたもの以外にも、アイルランド人が登場するものは少なくない。

 たとえば、『タイタニック』。映画に登場する労働者風の人たちは、アメリカへ夢を抱いて渡ったアイルランド系移民だ。サウンドトラックにもアイルランド音楽(やアイリッシュダンス)がふんだんに使われていたし、死を恐れずに船室で神に召されることを選んだ、(おそらく)信心深い母は、幼い娘にケルトの神話を聞かせていた。もうひとつ、ラッセル・クロウが家族を愛するボクサーを演じた『シンデレラ・マン』もアイルランドの香り漂う作品。実在した主人公のジェームズ・ブラドックはNY生まれらしいが、おそらくはアイルランド系移民2世ではないか、と思う。映画のなかでははっきりとは明言されていなかった(と思う)けれど、彼の復活試合のとき、アイルランドの旗が会場中で翻っていたのがその根拠。さらに言えば、アイルランド人はどこにいても故郷を忘れないし、決して諦めない不屈の精神は、アイルランド人の真骨頂! そしてどんなに貧しくとも家族の絆は深~いのである。
 “ステレオタイプ”といってしまえばそれまでだが、『コミットメンツ』にあるように、白人のなかの黒人として扱われたアイルランド人は、自国を愛す、誇り高き民族なのだ。英語を話す人たちとして英国人と混同されがちだが、うっかり一緒にしてしまうときついお叱りを受けてしまう。

映画の本筋とは関係ないが、登場人物の“国民性”に注目するのも、また違った映画の楽しみ方、かもしれない。


TEXT BY シラヤナギリカ

2007年04月24日 17:28

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