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「ひつじのショーン」TVに登場!

英国が誇るアニメーション「ウォレスとグロミット」の短編映画、「ウォレスとグロミット 危機一髪!」(1995、原題:「Wallece & Gromit Close Shave」)に登場してたちまち大人気となったキュートな子ひつじを覚えているであろうか。その名は、ショーン!目に付くものを何でも食べてしまう大食漢だが、悪者にさらわれるもアクロバット妙技でサラリとかわし、絶体絶命のピンチをグロミットと切り抜けたひつじである。今回ナント、このショーンが主人公のショート・ストーリーが、英国のTVで放映されたのだ。

農場のひつじたちが繰り広げる愉快なストーリー

その名も「ひつじのショーン」(原題:「Shaun The Sheep」)。1話7分程度の超ショート、完結ストーリーで、好奇心旺盛なショーンが毎回楽しませてくれる。登場人(?)物は、「ウォレスとグロミット」の時よりさらに活躍度の増したショーンとその仲間のひつじたち。その中でも、おしゃぶりをくわえた赤ちゃんひつじのティミーは、愛嬌たっぷり。そして、農夫とひつじたちを見守る牧羊犬のビッツァー、その他にちょっと意地悪で食いしん坊のブタやニワトリなど、あらゆる農場の動物たちが登場する。動物たちが主人公の話なので台詞はない。ひつじは、「メェエエエエ~ッ」とか「バァ~ッ」とかのひつじ語に、犬のビッツァーも「ブワゥ」と犬語で返答。
農夫でさえも「ウ~ムゥ」という音しか発さず、ほとんど「ミスター・ビーン」状態である。「台詞がない農場の動物ストーリーのいったいどこが面白いのだ?」とお考えの方、ご心配はご無用だ。いたずら度満点で賢く、器用なショーンは、何でもやってのけてくれる。例えば、フリスビーやサッカーのドリブルはお手のもの。ディスコではDJをしたり踊りまくったり、時には「ミッション・インポッシブル」さながらの忍び込みをするなど、毎回さまざまな特技を披露してくれるのだ。いつもウォークマンを聴いている犬のビッツァーはひつじたちに優しくて、寝付けられない嵐の晩には彼らのために本を(もちろん犬語で)読んでくれたりもする。子供用として作られてはいるけれど、大人も笑えるネタが多く、「ロッキー」や「大脱走」などの映画のパロディもあるので、映画ファンから笑いが漏れることは間違いなし。グロミット同様、言葉は話さないけれど動きが細やかで、何を考えているかは一目瞭然なのである。

また、台詞が無いと言うことには、大きな利点がある。それは、吹き替えも字幕もなしで、どこの国の人々にも理解が可能であるということ。そのため、既に世界中72カ国の国々での放送が決定している。うれしいことに、日本もしっかりその中に含まれているからご安心を!NHK教育テレビで、今月8日から放送がスタートしたばかりだ。うっかり見逃してしまった方も、全部で40話作られているのでまだまだ大丈夫。ショーンの楽しさは、じっくり味わっていただける。日本語版のホームページに加え、英語のオフィシャル・サイトもある。傑作シーンを覗き見できるビデオクリップ・コーナーやゲームのほか、ダウンロード・コーナーもあるので、是非お立ち寄りいただきたい。


「ひつじのショーン」日本語サイト

英語のオフィシャル・サイト

しかし、コンピュータを使わずに、クレイ人形を1コマずつ手で動かして撮影するこのストップ・フレーム・アニメーション手法。楽しそうではあるが、かなり忍耐の要る作業である。今回、「ひつじのショーン」を撮るためには1秒間に25コマが必要で、つまり、1分間の動きを撮るためには1,500回も動物たちを動かす必要があるのだとか。1日中かかってたった7秒間分の撮影が出来るため、7分足らずの1話分を制作するには、全部で約2ヶ月かかるのだそうだ。とはいえ、完成までに5年の歳月を要した、長編映画の「ウォレスとグロミット 野菜畑で大ピンチ!(原題:「Wallece & Gromit The Curse Of The Were-Rabbit」)と比べると、その3分の1の時間で作れたというのだから、かなりスピード・アップされていることになる。キャラクターの中で扱うのが一番大変なのは犬のビッツァーであるそうで、その表情や動作を作るアニメーターたち泣かせであるらしい。是非、制作者たちの苦労と努力を噛み締めて、じっくりと鑑賞したいものである。

アーダマンの新しい旅立ち

ところで、2ヶ月ほど前に、その制作会社、アードマン(Aardman)に関する気になるニュースがあった。昨年のアカデミー賞で「最優秀アニメーション」作品として見事オスカーを受賞した「ウォレスとグロミット 野菜畑で大ピンチ!」をアードマンと共同制作したドリーム・ワークス社が、突如契約を打切ったのだった。アードマンもさぞがっかりしていることだろうと心配したが、さもありなん!その解約も早々に、今度はソニー・ピクチャーズと3年間の共同開発契約を結んだというニュースが飛び込んできた!現在、アードマンは、3本のストップ・フレーム・アニメーションと2本のCGアニメーションを制作中だが、ソニーはその全ての開発に携わっていくそうだ。ストップ・フレーム・アニメーション1本の制作費は、約6,000万ドルだそうだから、ソニーのその太っ腹加減がわかると言うもの。何はともあれ、「ウォレスとグロミット」ファンにとっては、願ってもない好ニュース!早くも新作が待ち遠しい。

TEXT BY 岬 遥奈(みさき・はるな)

【著者プロフィール】岬 遥奈(みさき・はるな)
ロンドン在住歴、早10年以上のフリーランス・ライター。また、ガーデン・デザイナーの顔も持つ。ホラー、コメディ、シリアスもの、和・洋・中、何でもゴザレの映画好き。

2007年04月11日 21:19

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