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新法則?自主制作映画で夢の豪華キャストを得る5つの方法

ここハリウッドのみならず、アメリカでは通年星の数ほどの自主制作映画が作られます。大監督・有名脚本家といった未来の成功を夢見る映画クリエーター達は、日夜映画制作に没頭。ロサンゼルスのあちこちで、彼らの撮影風景を見かけることも少なくありません。けれど、そのうち公開まで漕ぎ着く作品はほんの一握り。まるでロト(米国版宝くじ)にでも当たるような確率の世界ですが、5月に行われたニューヨーク・トライベッカ映画祭で話題となったインディーズ映画「Mini’s First Time」は、こうした難関を乗り越えた、極めて異例の作品と言えるでしょう。

「Mini’s First Time」は、LAを舞台に家族の崩壊を描くブラックコメディ。ニッキー・リード扮するティーンを主人公に、ドラッグ、近親相姦、裏切り、殺人、と何でもあり。タブーの連続といったダークなストーリーですが、何がすごいって、まずその豪華な顔ぶれ!プロデューサーにはかのケビン・スペイシーが名を連ね、メインキャストはアレック・ボールドウィン、キャリー=アン・モス、ルーク・ウィルソン、ジェフ・ゴールドブラム、そしてニッキー・リード。ここまで来るともう、自主制作の域を超えていると言っても過言ではありません。更に驚いたことに、ニック・グーテ監督にとって本作は監督デビュー作品。おまけに自身で脚本も手がけています。そんなハリウッドっ子達も興味津々の「一体どうやって?」を、グーテ監督が5つの法則として明かしました。

1、演劇学校に行くべし
グーテ監督曰く、映画監督というものは役者達の信頼を得てこそ良い作品が仕上げられるとのこと。演劇を理解し、どれだけ役者が大切かを理解することが成功への一歩だそうです。実際にグーテ監督は、ジェフ・ゴールドブラムも講師を務める演劇学校に2年半通ったそう。もしかしたら、そこでゴールドブラムとの交流が生まれたのかも。コネクションも大切な鍵のひとつとなるこの世界、そういった意味でもグーテ監督はなかなかの策士のようです。


2、目と耳を常に「オープン」に
グーテ監督夫人も脚本家であり、彼の脚本にはスターが必要だとアドバイスしていたそうです。そんな折グーテ監督がたまたまラジオを聴いていたら、ケビン・スペイシーが「新しい才能と若手発掘のための製作会社作り」についてインタビューを受けていたとのこと。それからすぐに、脚本をサンプルとしてスペイシーのプロダクションに送り、とんとん拍子に本作品の製作が実現したそう。いつどこにチャンスやブレイクが来るかは誰にも分からない、というのが監督の弁。常に情報を集め、更に迅速な行動力を持つことが成功の秘訣かもしれません。


3、「グレート」な脚本を書くべし
素晴らしい脚本が「戦い」の半分を占める、というのがグーテ監督の持論。脚本家でもある監督ならではの視点であり、興味深い脚本こそが映画の成功を決めるということでしょう。確かに、最初のサンプルで誰の目にも留まらなければ今日の映画化は無かったかもしれません。当たり前のようで難しいこの教訓。もしかしたらこれが一番の難関かもしれませんね。


4、幸運を掴め
この映画で母親役を好演しているキャリー=アン・モスをキャスト出来たのは、監督にとって本当にラッキーだったようです。実は「M:I:III (2006)」の監督変更などゴタゴタの際に、当初そこにキャストされていた彼女が降板することに。そこに目を付け、出演依頼をしたのがグーテ監督だったとか。この映画で、今までとは雰囲気の違った役柄に挑戦しているキャリー=アン・モス。結果的に、彼女にとっても監督にとっても「吉」と出たようです。


5、まずアレック・ボールドウィンをキャストしろ
ちょっと分かりづらいこの最終項目。平たく言うと、最初に大物を配役することで芋づる式に良いキャストが得られるということです。ボールドウィンが出演を承諾したあと、2日の間にルーク・ウィルソン、キャリー=アン・モス、ジェフ・ゴールドブラムが出演を快諾。むしろ、そんなに共演を望まれるアレック・ボールドウィンの底力に脱帽、といったところです。


そんな豪華キャストによる鮮烈デビューを果たしたニック・グーテ監督。彼のユニークな5つの法則は、ハリウッドの新しいスタンダードになるのか否か?「Mini’s First Time」は7月14日からNYとLAで公開、他各都市でも順次公開予定。キャストでこれだけの話題をさらった本作品、インディーズ映画の枠を超えてどこまで注目されるのかが楽しみです。


TEXT BY アベマリコ

2006年07月20日 22:16

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