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LAフィルムフェスティバル 期待の新作が続々と登場

初めまして!今週からFromハリウッドを担当することになりましたアベマリコと申します。ゆるく温かい目で見守って頂ければ幸いです。今後も、気になるハリウッド情報を続々とお送りしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします:)

連日30℃を超え、ちょっとした異常気象のロサンゼルス。梅雨の日本より一足お先に夏真っ盛り!といった状況です。街の老若男女はこぞってアイスドリンクを求めカフェに走り、フラペチーノ片手にグッタリ…。「カラッと爽快なロスの夏」はもしかしたら迷信になるのでは?そんな今年の蒸し蒸しと暑いハリウッドから、更に熱いフィルムフェスティバルのレポートです。

本年度で12回目となる「ロサンゼルスフィルムフェスティバル」が、6月22日から7月2日までの10日間開催されました。事前に募られて審査を通過した長編・ドキュメンタリー・短編・ミュージックビデオが、10日の間に余すところ無く上映され各賞を競い合います。このフェスティバルは、あの「Los Angeles Times」と大手スーパーマーケット「Target」がメインスポンサーということもあり、最優秀長編とドキュメンタリーへの賞金が$50,000と超破格。今年は最優秀長編にスティーブ・コリンズ監督の初長編映画「Gretchen」が、最優秀ドキュメンタリーにエイミー・バーグ監督の「Deliver Us From Evil」が選ばれました。

昨年はハリウッドのど真ん中にある、ここを知らない人はモグリ?というほどに有名な映画スポット「The Arclight」で行われましたが、今年はハリウッドから車で20分ほどのウエストウッドエリアでの開催。この地域はUCLAがあることで有名で、大学所有の施設や数々の老舗映画館・レストラン・ホテル・アパレルショップが立ち並ぶオシャレスポットです。先日のサンダンスフィルムフェスティバルでは、サンフランシスコの「Kabuki Theater」がベースになると発表されましたが、LAフィルムフェスティバルも本年度よりここを本拠地にするとのこと。またひとつ、新しい映画観光スポットとしてウエストウッドが賑やかになりそうな期待大です。

この映画祭の特徴のひとつは、新進気鋭の映画クリエーター達の作品上映にとどまらず、クラシック作品も合わせて上映してくれるところ。一般の観客達も気軽に足を運べ、往年の名作を大スクリーンで鑑賞出来ます。毎年選出されるゲストディレクターに今年はジョージ・ルーカスが選ばれ、監督のお勧め映画が上映されました。奇才スタンリー・キューブリック監督の「Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb (1964)」(邦題:「博士の異常な愛情 / または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」)、巨匠ジャン・リュック・ゴダール監督の「Masculine Feminine (1966)」(邦題:「男性・女性」)、そして我らが黒澤明監督の「The Seven Samurai (1954)」(邦題:「七人の侍」)の3本で、これらの名作を求める多数の観客でこちらも大盛況でした。特に「七人の侍」に関しては、ルーカス監督が自身の「Star Wars」シリーズで黒澤映画から多大なインスピレーションを受けたというエピソードが余りにも有名なお話。日本だけじゃなく、世界中で黒澤明監督の作品が愛され根付いているという事実、何だか日本人として誇らしいですよね。

今年のフェスティバルでひときわ注目を集めていた作品が、先日のカンヌ映画祭でも大好評だった「A Scanner Darkly」です。原作は同名のベストセラー小説で、リチャード・リンクレイター監督が「Waking Life (2001)」(邦題:「ウェイキング・ライフ」)でも用いたロトスコープの手法によるSFアニメ映画。出演はキアヌ・リーブス、ロバート・ダウニー・Jr、ウィノナ・ライダーなどなどで、あの独特な「揺れた」映像感覚がしっかりとよみがえっています。ロサンゼルス郊外を舞台に、ドラッグ犯罪と政府スパイ達のしがらみを描いた作品。各映画祭でガッチリと前評判を掴んでいるこの1本、ストーリー・キャスト・映像のどれを取っても大ヒットの予感です。

映画の都ハリウッド近辺という場所柄もあり、今年もLAフィルムフェスティバルは大盛況のうちに幕を閉じました。本年度の共同議長のひとりであり、「Star Wars」でハン・ソロを演じたハリソン・フォードも来場。集まった映画制作者達に「我が道を行け」と激励しました。今までに作られた公式だけにとらわれずオリジナリティを追求する、今後の映画制作を担う新しいクリエーター達の活躍が今から楽しみです。


TEXT BY アベマリコ

2006年07月06日 15:31

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