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暗黒時代に突入?ハリウッドの憂鬱
先日の、「カリフォルニアに熱波到来」というニュースを耳にした方々も少なくないはず。連日40℃を越える猛暑の中、ハリウッドっ子達にとって映画館は良い納涼スポットとなっています。そんな夏休みのかき入れシーズン真っ只中の今日この頃ですが、ハリウッドのスタジオ関係者達は、何だか頭を痛めている様子。外からは派手に見えるハリウッドの映画業界は、どうやら「飽和状態」に突入している模様です。数々のシリーズ物、CGアニメや海外リメイクもの等、あらゆるジャンルの作品がひしめく昨今のアメリカ映画。ここでちょっと「最近のハリウッド」を紐解いてみましょう。
ケーブルテレビの台頭、ホームシアターやインターネットの普及により、例年映画館に足を運ぶ人の数は、このところずっと横ばい。 今ハリウッドは曲がり角に差し掛かっています。興行収入自体は上がっているのですが、それはチケットの価格も同時に上がっているから。また、観客の方にも、「$をかけた映画ってスゴイはず!」という思い込みがあり、自然に製作費用合戦が起こってきます。観客数は伸びないのに制作費は膨れ上がるばかり、という矛盾の中、スタジオは利益を上げるためのいくつかの原則を発見しました。それらは、「当たった映画は続編を作れ!」「低予算で作れるアニメは儲かる、おまけに家族連れで来てくれる」「海外でウケた作品や原作は、とりあえず拝借しときましょう」などといったもの。こうした安易な“成功法則”に則って映画が製作されているのがハリウッドにおける今日のトレンドなのです。
そういえば、近頃ハリウッドでささやかれているこんな噂も。最近のスタジオは、若き映画制作者達が持ち込む新しい映画のアイデアには目もくれず、90秒程度の予告編を見せ「ほら、こんなの作ってみてよ」などと要求するのだそうです。ちょっと眉唾だけれど、こういう噂話が生まれるということ自体、ローリスク・ハイリターンを狙うスタジオの「飽和状態」を物語っているのではないでしょうか。製作サイドの「こんな新しい作品が作りたい」よりも、マーケットサイドの「こういうものを作っておけばお金が儲かる」という保守的な映画制作が行われる今日のハリウッド。新しい才能に対する足かせになるのでは?という懸念を抱いてしまいます。
…と、ちょっと暗めのトーンで進んできましたが、そうそうダークなお話ばかりでもありません。前回のアカデミー賞でも見られた傾向は、一見地味ではありましたが、従来のスタジオ映画から独立映画へのシステムの移行を物語る結果でした。そこそこ成功しそうな、いわゆる安全パイ的な映画より、強いメッセージ性を持つ映画が評価され、結果として高収益を招くことになりました。スタジオシステムの枠を超え、観客に伝えたいからその映画を作る、という姿勢が改めて見直されてきていると言えるでしょう。 ハリウッド産業の裏でどんなマネーゲームが繰り広げられていようと、一観客として目の前に映し出される物語は常に「面白く」あって欲しいもの。それがFunnyなのかInterestingなのか、どちらにしても印象深い、どこかで観たな…的な映画ではないものを期待しつつ、この夏は避暑も兼ねて映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。「面白かった!」と絶賛するも、「二度と観るかっ!」とコキ下ろすも、私達のリアクションひとつひとつとチケットの一枚一枚が、今後の映画作りを左右する…と言っても言い過ぎではないでしょう。
TEXT BY アベマリコ
ケーブルテレビの台頭、ホームシアターやインターネットの普及により、例年映画館に足を運ぶ人の数は、このところずっと横ばい。 今ハリウッドは曲がり角に差し掛かっています。興行収入自体は上がっているのですが、それはチケットの価格も同時に上がっているから。また、観客の方にも、「$をかけた映画ってスゴイはず!」という思い込みがあり、自然に製作費用合戦が起こってきます。観客数は伸びないのに制作費は膨れ上がるばかり、という矛盾の中、スタジオは利益を上げるためのいくつかの原則を発見しました。それらは、「当たった映画は続編を作れ!」「低予算で作れるアニメは儲かる、おまけに家族連れで来てくれる」「海外でウケた作品や原作は、とりあえず拝借しときましょう」などといったもの。こうした安易な“成功法則”に則って映画が製作されているのがハリウッドにおける今日のトレンドなのです。
そういえば、近頃ハリウッドでささやかれているこんな噂も。最近のスタジオは、若き映画制作者達が持ち込む新しい映画のアイデアには目もくれず、90秒程度の予告編を見せ「ほら、こんなの作ってみてよ」などと要求するのだそうです。ちょっと眉唾だけれど、こういう噂話が生まれるということ自体、ローリスク・ハイリターンを狙うスタジオの「飽和状態」を物語っているのではないでしょうか。製作サイドの「こんな新しい作品が作りたい」よりも、マーケットサイドの「こういうものを作っておけばお金が儲かる」という保守的な映画制作が行われる今日のハリウッド。新しい才能に対する足かせになるのでは?という懸念を抱いてしまいます。
…と、ちょっと暗めのトーンで進んできましたが、そうそうダークなお話ばかりでもありません。前回のアカデミー賞でも見られた傾向は、一見地味ではありましたが、従来のスタジオ映画から独立映画へのシステムの移行を物語る結果でした。そこそこ成功しそうな、いわゆる安全パイ的な映画より、強いメッセージ性を持つ映画が評価され、結果として高収益を招くことになりました。スタジオシステムの枠を超え、観客に伝えたいからその映画を作る、という姿勢が改めて見直されてきていると言えるでしょう。 ハリウッド産業の裏でどんなマネーゲームが繰り広げられていようと、一観客として目の前に映し出される物語は常に「面白く」あって欲しいもの。それがFunnyなのかInterestingなのか、どちらにしても印象深い、どこかで観たな…的な映画ではないものを期待しつつ、この夏は避暑も兼ねて映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。「面白かった!」と絶賛するも、「二度と観るかっ!」とコキ下ろすも、私達のリアクションひとつひとつとチケットの一枚一枚が、今後の映画作りを左右する…と言っても言い過ぎではないでしょう。
TEXT BY アベマリコ
2006年08月03日 17:45
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