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『ブラック・ダリア』全米でいよいよ公開!

10月14日の日本公開が待たれる『ブラック・ダリア』。本サイトで予告編を見て、首を長くされている映画ファンの方々も多いことと思いますが、ここアメリカでは去る9月15日、一足お先に封切られました。
約4年振りとなるブライアン・デ・パルマ監督の最新作は、ロサンゼルスでも公開前から話題沸騰。実際に起きたロサンゼルス最大の未解決ミステリー事件とあって、地元紙Los Angeles Timesでも見開き4面に渡り、当時の新聞記事や掲載写真で特集が組まれたほどの前評判でした。「スカーフェイス」(1983)・「カリートの道」(1993)・「スネーク・アイズ」(1998)などを手掛けた巨匠のカムバックを、多くのファンが今か今かと心待ちにしていた様子。その内容を書きたい気持ちもやまやまですが、いわゆる”Spoiler=ネタバレ”になってしまいそうので、それは見てからのお楽しみにとっておくことにして。今回は、本作のちょっぴり”通”な見どころに迫ってみたいと思います。

映画を観るとき、あなたはどこに注目しますか?誰が監督したのか、どんな俳優達が出ているのか、物語はどんなジャンルなのか…などなど、個人によってそのポイントは千差万別かと思います。映像を学ぶ人々が一般的に強く意識するのが、撮影監督。私達が目の当たりにする映像を、映画監督が頭に描くイメージに限りなく近付けて撮影をするのが彼らの使命です。監督と撮影監督の息が合っていればいるほど、監督の持つイメージがそのまま画面に投影されるということになります。アメリカでは、DP (Director of Photography)やCinematographerなどと呼ばれるこの役職。ハリウッドで映画制作を学ぶ者達にとっては、ディレクターやプロデューサーと並ぶ人気を誇るポジションなのです。

本作の撮影監督はヴィルモス・ジグモンド氏。名前だけではなかなかピンと来ないかもしれませんが、アカデミー賞での最優秀撮影監督賞はもちろん、撮影監督のための組合であるASC (American Society of Cinematographer)では、すでに生涯功労賞を受賞。アメリカ映画界では言わずと知れた存在となっています。数え切れないほどの映画に携わって来た氏ですが、特に「未知との遭遇」(1977)・「ディア・ハンター」(1978)・「マーベリック」(1994)などが、彼の代表作となっています。

1956年にハンガリーからアメリカに移住して来たジグモンド氏は、今年で76歳。言葉も不自由なまま飛び込んだハリウッドで、今も現役で活躍を続ける氏は、いわゆるハリウッドドリームを掴んだひとりと言えるでしょう。彼の映像の特徴は、類稀なる光のセンス。出来るだけ自然光を駆使し、更にははっきりとした色使いとコントラストで映像を引き立たせる、映像の魔術師。「ブラック・ダリア」の中でも、屋内外を問わず絶妙なバランスで人物や風景をとらえており、その映像美は圧巻です。特に本作はフィルム・ノワール調(=Film Noir)で撮影されており、白黒のシーンでは、光に敏感に反応する彼の才能が如何なく発揮されています。その美しさに、場内でため息がもれることもしばしば。映画ひとつに対してもリアクションが大きいアメリカの観客ならではの反応でしょうか。

ご本人はかなり小柄で、どこからあの映像のパワーが出てくるのかと思ってしまいますが、一枚一枚のスチール写真になっても、その繊細さが伝わってくるようなジグモンド氏が映し出す映像美はとにかく必見。映画館に足を運ぶ前に、本サイトの特集やホームページにて是非じっくりとご覧下さい。


TEXT BY アベマリコ

2006年09月28日 22:09

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