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「海賊版王子」に禁固刑・No more Piracy!
去る12月1日、ロサンゼルスの裁判所で”The Prince of Piracy”(海賊版王子)ことジョニー・レイ・ガスカ被告に、懲役7年の判決が下されました。近年では、映画のみならず映像・楽曲などを含めた著作権・知的財産権の侵害が取り沙汰されています。この事件は映画に対する”Piracy”(海賊版コピー)ですが、実はアメリカ国内で実刑判決が下りたのはこれが初めて。悪質な事件の数々にようやく決着がつきました。そこで今回は、ガスカ被告のこれまでと、海賊版がはびこる今日の現状をレポートしたいと思います。
ガスカ被告は、90年代に窃盗罪や殺人罪で起訴され、服役していたという経歴の持ち主。釈放後、海賊版販売のビジネスで一儲けしようと、ニューヨークからロサンゼルスにやって来ました。その手口はカメラを持って試写会に侵入し、公開前の映画をこっそり隠し撮りするというもの。バッグに高価な撮影機材を忍ばせ、多くの映画試写会に足繁く通っていたということです。こうして撮影した映画のコピーを製作して売りさばき、多い時には1週間に$4000以上、日本円で50万円以上もの収益を得ていました。
彼の行動が明るみに出たのが2002年の9月。” The Core”(邦題:ザ・コア)のプライベート上映会にて御用となり、その後15ヶ月の保護観察処分付きで釈放されるも、翌月には”8 Mile”(同邦題)の試写会に盗撮用ビデオを持ち込んだことが発覚。
更には、2003年の1月に”Anger Management”(邦題:N.Y.式ハッピー・セラピー)の試写会で、最前列でビデオカメラを設置しているガスカ被告の姿が、館内の防犯カメラに捉えられていました。
何度も逮捕されながらも飽きずに違法コピーを製作するガスカを人々はいつのまにやら被告を昔の映画の題名に引っ掛け、「Prince of Pirates(海賊版王子)」と呼ぶようになります。やりたい放題やってきたガスカですが、警察の長期に及ぶ捜査の結果ついに逮捕され、7年の懲役に加え、出所後も3年間の保護観察処分と”Anger Management”(皮肉にも上記の映画タイトルと同じですが、カッとなりやすい・キレやすい人々を対象としたサイコセラピー)への出席が言い渡されています。
そもそも海賊版が世の中に出回り始めたのは、1970年代後半から。テクノロジーの発達と、インターネット上における違法ダウンロード、「ファイル・シェアリング」の誕生によって、その普及率はうなぎのぼり。2004年には、メル・ギブソンが監督した”The Passion of the Christ”(邦題:パッション)の違法コピーが、世界中で数百万枚も発見されます。このような事態を受けて、近年アメリカでは市販DVDや映画館での予告編上映時に、”Anti-Piracy”(反海賊版コピー)キャンペーンのCMを流し、海賊版を買うのをやめよう、というキャンペーンを繰り広げていますが、それでも海賊版は相変わらず街に出回っています。映画スタジオが被る損害は毎年数十億ドルとも言われています。そして何よりも、海賊版コピーを購入・ダウンロードすること自体が違法。作る側だけでなく、買う側も「共犯者」ということを、心に留めておきたいものです。
今日では、試写会当日の深夜にはインターネット上に海賊版が出回り、その後の数日間には皆が競ってクオリティーの高い映像をアップしているのが現状です。しかし、海賊版が映画産業に与える影響は、そのまま映画ファンに跳ね返ってきます。海賊版が与える損失分が各スタジオへ戻れば、更に上質な次回作が期待出来ることになるでしょう。映画ファンとして、今回の事件をきっかけに、海賊版コピーが撲滅されることを願います。
TEXT BY アベマリコ
ガスカ被告は、90年代に窃盗罪や殺人罪で起訴され、服役していたという経歴の持ち主。釈放後、海賊版販売のビジネスで一儲けしようと、ニューヨークからロサンゼルスにやって来ました。その手口はカメラを持って試写会に侵入し、公開前の映画をこっそり隠し撮りするというもの。バッグに高価な撮影機材を忍ばせ、多くの映画試写会に足繁く通っていたということです。こうして撮影した映画のコピーを製作して売りさばき、多い時には1週間に$4000以上、日本円で50万円以上もの収益を得ていました。

更には、2003年の1月に”Anger Management”(邦題:N.Y.式ハッピー・セラピー)の試写会で、最前列でビデオカメラを設置しているガスカ被告の姿が、館内の防犯カメラに捉えられていました。
何度も逮捕されながらも飽きずに違法コピーを製作するガスカを人々はいつのまにやら被告を昔の映画の題名に引っ掛け、「Prince of Pirates(海賊版王子)」と呼ぶようになります。やりたい放題やってきたガスカですが、警察の長期に及ぶ捜査の結果ついに逮捕され、7年の懲役に加え、出所後も3年間の保護観察処分と”Anger Management”(皮肉にも上記の映画タイトルと同じですが、カッとなりやすい・キレやすい人々を対象としたサイコセラピー)への出席が言い渡されています。
そもそも海賊版が世の中に出回り始めたのは、1970年代後半から。テクノロジーの発達と、インターネット上における違法ダウンロード、「ファイル・シェアリング」の誕生によって、その普及率はうなぎのぼり。2004年には、メル・ギブソンが監督した”The Passion of the Christ”(邦題:パッション)の違法コピーが、世界中で数百万枚も発見されます。このような事態を受けて、近年アメリカでは市販DVDや映画館での予告編上映時に、”Anti-Piracy”(反海賊版コピー)キャンペーンのCMを流し、海賊版を買うのをやめよう、というキャンペーンを繰り広げていますが、それでも海賊版は相変わらず街に出回っています。映画スタジオが被る損害は毎年数十億ドルとも言われています。そして何よりも、海賊版コピーを購入・ダウンロードすること自体が違法。作る側だけでなく、買う側も「共犯者」ということを、心に留めておきたいものです。
今日では、試写会当日の深夜にはインターネット上に海賊版が出回り、その後の数日間には皆が競ってクオリティーの高い映像をアップしているのが現状です。しかし、海賊版が映画産業に与える影響は、そのまま映画ファンに跳ね返ってきます。海賊版が与える損失分が各スタジオへ戻れば、更に上質な次回作が期待出来ることになるでしょう。映画ファンとして、今回の事件をきっかけに、海賊版コピーが撲滅されることを願います。
TEXT BY アベマリコ
2006年12月08日 18:13
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