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大盛況!「Mu: 無」The Screening
先々週にお伝えした、ハリウッドで話題のインディペンデント映画「Mu: 無」の試写会。予定通り、2月19日にユニバーサル・スタジオ内のシアター2にて開催されました。夜8時と9時の二回公演は、両方とも満員御礼。110席余りの劇場は、大勢の観客で埋め尽くされました。入り口も、振舞われたワインと日本酒(その名も「無」)を片手に、本作や近況について話し込む人々でいっぱい。その光景は「いかにもハリウッド!」といった感じでした。それでは、大盛況のうちに幕を閉じた試写会の模様と、より詳しいあらすじをお伝えしていきます。
演出中のヤコノ監督
シュールなミステリー寓話に仕上がった「Mu: 無」は、古典落語の名作「粗忽長屋」をベースにした作品。舞台を現代のロサンゼルスに移し、日本の伝統的手彫り刺青職人・誠至(Seiji)の心理的葛藤を描いた物語です。ある朝、ブラック・マーケットのビンゴゲームで一攫千金を狙うグスタヴォ(Gustavo)は、親友であり「ビジネス」パートナーでもある誠至が死んでいると連絡を受けます。確かに、目の前に横たわっているのは誠至だけれど、さっき電話で話したばかり。一方、第一発見者のパトロール官・ボブ(Bob)は、死体は昨夜からここにあったと言い張る始末。腑に落ちないグスタヴォは、誠至のアパートメントに直行。「お前、死んでるぞ」と伝えに…。
映画の1シーン
一方、死んでいる筈の誠至は自宅で父親的存在であるヤクザの親分に刺青を入れています。 グスタヴォから自分が死んでいると聞かされ、混乱する誠至に対してグスタヴォは、昨夜からの出来事を思い出すよう促します。思い浮かぶのは、湧き上がる性欲に翻弄された自分の姿と、己に言い聞かせるかのように筆で何度も書き殴った「無」。一心不乱にその一文字を足の裏に彫り込んだことや、酩酊状態でさまよいながら見た不可思議な風景。途切れ途切れの記憶を辿りますが、結局最後に覚えているのは、目覚めた時に見た自室の天井…。夢かうつつか、自分が死んだとは到底思えない誠至は、グスタヴォ、ボブとともに自分の死体と直面します。
自分の死体に対面する誠至(ユタカ・タケウチ)
という具合に、かなり観念的でちょっと難しいストーリーなのですが、エンドロールが流れると、観客からは盛大な拍手。日本庶民に親しまれた落語の一話が、西洋人であるポール・ヤコノ監督の手によって、新しい可能性を引き出される形となりました。「自分は一体誰なのか?」という抽象的なテーマのもと、個性的なフラッシュバック、印象に残る色味で表現された「Mu: 無」。全てを見せない「オープン・エンディング」のスタイルでクライマックスを迎えるこの作品、一言で表すなら「アート映画」と呼ぶのがしっくりくるかも。人々に「理解」させるのではなく、「禅問答を投げかける」この一本。きっと観る者の心理状態や経験から「答え」が変わってくるのでしょう。
監督との質疑応答では、「落語」という日本の伝統芸能を中心に質問が飛び交いました。今後、落語をモチーフにした”Made in Hollywood”の映画が続々と誕生しそうな予感です。また、出演者による会場でのパフォーマンスも、いたって個性的。各上映前には、親分の右腕を演じた堤啓(ツツミ・ケイ)が着物を羽織ってヴァイオリンを演奏。普段はロサンゼルスでスタンダップ・コメディアンとして活躍する彼の登場で、会場の空気は一気に物語と同様「”Surreal”=シュール」なものとなりました。更に、誠至役でその圧倒的な存在感と確かな演技を披露した竹内豊(タケウチ・ユタカ)も来場。彼は二回目の公演の後、いきなり着物を脱いでフンドシ1枚に!話によると「成人になる為の通過儀式」だとか。あまりに突然のハプニングに、筆者もビックリでした…。
あらゆる面で個性が光る「Mu: 無」。まるで、心に引っかき傷を付けられるような後味が新鮮です。日本での上映は残念ながらまだ未定ですが、とりあえずは予告編を下記のホームページからお楽しみ下さい。さて、「あなたは誰ですか?」と聞かれたら、皆さんは何と答えますか?
「Mu」公式ホームページ
TEXT BY アベマリコ
演出中のヤコノ監督
映画の1シーン
一方、死んでいる筈の誠至は自宅で父親的存在であるヤクザの親分に刺青を入れています。 グスタヴォから自分が死んでいると聞かされ、混乱する誠至に対してグスタヴォは、昨夜からの出来事を思い出すよう促します。思い浮かぶのは、湧き上がる性欲に翻弄された自分の姿と、己に言い聞かせるかのように筆で何度も書き殴った「無」。一心不乱にその一文字を足の裏に彫り込んだことや、酩酊状態でさまよいながら見た不可思議な風景。途切れ途切れの記憶を辿りますが、結局最後に覚えているのは、目覚めた時に見た自室の天井…。夢かうつつか、自分が死んだとは到底思えない誠至は、グスタヴォ、ボブとともに自分の死体と直面します。
自分の死体に対面する誠至(ユタカ・タケウチ)
監督との質疑応答では、「落語」という日本の伝統芸能を中心に質問が飛び交いました。今後、落語をモチーフにした”Made in Hollywood”の映画が続々と誕生しそうな予感です。また、出演者による会場でのパフォーマンスも、いたって個性的。各上映前には、親分の右腕を演じた堤啓(ツツミ・ケイ)が着物を羽織ってヴァイオリンを演奏。普段はロサンゼルスでスタンダップ・コメディアンとして活躍する彼の登場で、会場の空気は一気に物語と同様「”Surreal”=シュール」なものとなりました。更に、誠至役でその圧倒的な存在感と確かな演技を披露した竹内豊(タケウチ・ユタカ)も来場。彼は二回目の公演の後、いきなり着物を脱いでフンドシ1枚に!話によると「成人になる為の通過儀式」だとか。あまりに突然のハプニングに、筆者もビックリでした…。
あらゆる面で個性が光る「Mu: 無」。まるで、心に引っかき傷を付けられるような後味が新鮮です。日本での上映は残念ながらまだ未定ですが、とりあえずは予告編を下記のホームページからお楽しみ下さい。さて、「あなたは誰ですか?」と聞かれたら、皆さんは何と答えますか?
「Mu」公式ホームページ
TEXT BY アベマリコ
2007年02月22日 19:04
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