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アジアを発掘するハリウッド

2003年の「ラストサムライ(邦題)」に始まり、「SAYURI(邦題:2005)」や昨年の「バベル(邦題)」、「父親たちの星条旗(邦題)」、そして「硫黄島からの手紙(邦題)」などなど。ここ数年で、日本やアジアをテーマにした”From Hollywood”の映画が多く見られます。そして今回、我々にとってちょっと耳寄りなニュースが舞い込んで来ました。アメリカの大物プロデューサーが、アジア映画市場の開拓に力を注いでいくと発表。その気になる詳細をお伝えしていきます。

ハリウッドを揺るがすニュースを持ち込んだのは、アメリカの有名プロデューサー兄弟として知られる、ボブ(弟)&ハーヴェイ(兄)・ワインスタイン。ニューヨーク出身の彼らが設立した映画会社が、後にMiramaxとなったのは有名なお話です。今までに彼らがプロデュースして来た作品として「トゥルー・ロマンス(邦題:2003)」、「パルプ・フィクション(邦題:1994)」、「ジャッキー・ブラウン(邦題:1997)」、「キル・ビル(邦題:2003)」などの、同社の看板であるクエンティン・タランティーノ監督の作品や、世界中をとりこにした「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズがあります。他にも、彼らによるヒット映画は枚挙にいとまがありません。ワインスタイン兄弟は、タランティーノ監督も含めて、新進気鋭の映画制作者を発掘するのに力を注いでいることでも知られていますが、一方で「ギャング・オブ・ニューヨーク(邦題:2002)」のマーティン・スコセッシ監督のような大物監督達の作品もあります。そんな売れっ子のワインスタイン兄弟が2005年に設立した「ワインスタイン・カンパニー」が、今回のお話の主役。この度、アジアの要素を持つ映画に2億8500万ドル(約330億円!)もの基金を投資することを明らかにしました。


アジアの象徴チャイニーズシアター
2億8500万ドルという莫大な金額は、アメリカ発祥・世界の投資銀行として知られるゴールドマン・サックスと提携して実現されたもの。ちなみに、ワインスタイン・カンパニーの設立に出資したのもゴールドマン・サックスでした。今回の投資金は、権利の取得や映画制作そのもの、マーケティングまでといった「映画流通」のほとんどを視野に入れて使われていくことになるようです。彼らはすでにアジア各国から31作品を発掘し、製作の準備を進行中。今後6年以内に21作品を映画館にて上映予定、残りの10作品をビデオ・リリースとして検討しているようです。残念ながら、まだそれらの国籍や内容は具体的には明らかにされていませんが、日本の作品が入る可能性は極めて濃厚です。

最新情報によると、どの作品もアジアがテーマとなっている様子。俳優はアジアンを中心にキャストしていき、製作や撮影から各ストーリーが展開する場所に至るまで、ほとんどアジア国内になるであろうとのこと。彼らはとことん「アジア」を追求している模様です。また、今のところ候補に挙がっているとされている作品は、カンヌ映画祭でオープニング上映されたばかりの新作、ウォン・カーウァイ監督の”My Blueberry Nights (原題)”。また、1966年に香港で製作されたアクション映画”Come Drink with Me(洋題)”が、タランティーノ監督によってリメイクされる企画も進んでいるようです。

今回のワインスタイン・ブラザーズによる新たな計画によって、アジア映画の更なる可能性が広がっていくことになりそうです。ネタ切れが囁かれるハリウッドの住人達にとって、アジア諸国はエキゾチックな「宝の宝庫」なのかもしれません。今まで以上に、日本人俳優が世界のビッグ・スクリーンを彩る日も近いかも?今後も、彼らの動きから目が離せなくなりそうです。


TEXT BY アベマリコ

2007年05月08日 16:27

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