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WGA発表:2007年度の「脚本家白書」
アメリカは人種の坩堝、なんて良く言われていますが、なかでもハリウッドは、様々な国籍、人種の人々がせめぎあってエンタテインメントを創造している場所です。特に昨今は、白人以外の俳優、監督の台頭が目覚しく、かつての白人オンリーのイメージはすっかり消えています。しかし、脚本家の世界に目を向けると、まだまだ各人種に門戸が開かれているとは言えない状況。今回はそんな脚本家の世界を覗いてみましょう。
今週の火曜日、全米脚本家組合(Writers Guild of America:WGA)西海岸支部が、2007年度の報告書を発表しました。WGAとは、アメリカで活躍する映画・TVの脚本家が加入するユニオンのこと。SAG(Screen Actors Guild:全米俳優組合)やDGA(Directors Guild of America:全米監督組合)などと並ぶ、映像業界で働く人々の為の労働組合となっています。この度発表されたレポートによって、女性やマイノリティ作家に対する歴然とした格差が明るみに。彼らの地位向上が、今後の課題として挙げられました。
↑SAG(Screen Actors Guild:全米俳優組合)ロゴ
「2007年度ハリウッド脚本家レポート:我々は誰の物語を語っているのか?」と題された今回の報告書では、雇用数や賃金における均衡に向けて、まだまだ発展途上であるという事実が露呈しました。WGAの代表であるパトリック・ヴェローン氏のコメントによれば、幾らかの部門においては女性・マイノリティ作家の地位向上が見受けられる一方、まだまだ白人男性が優位なポジションを独占している、とのことでした。
このレポートは、2005年の一年間を通しての雇用状態と収入格差を性別・人種・年齢に分けて検証したもの。
社会学とアフリカン・アメリカン学の権威であり、2000年度のSAG報告書にも携わったダーネル・ハント氏が作成しました。彼の調査によれば、女性を含めたマイノリティライター達による地位向上は未だ「乏しい」と言わざるを得ない状況だとか。今日では、アメリカの全人口のうち30%以上が白人以外=マイノリティ人種であるのに対し、WGAに在籍している有色人種の作家は、TV部門で全体の10%にも満たないとの統計が出ました。更に、映画界においてはほんの6%未満と、ごくごく一部といった数字となっています。
人種別年収:
マイノリティ作家 v.s. 白人作家(女性を含む)
TV部門・中堅クラス
・マイノリティ作家:$78,107
・白人作家:$97,956
映画部門・中堅クラス
・マイノリティ作家:$66,666
・白人作家:$77.537
性別年収:
男性作家 v.s. 女性作家
映画部門・中堅クラス
女性作家:$50,000
白人男性作家:$90,000
年齢別割合:
TV部門
40-50代:35%
31-40代:37%
31歳以下:7%
上記は主要部門の値ですが、他にも女性の雇用率はTV・映画業界を合わせて全体で25-27%、現在会員である映画脚本家のうち55%は40歳以下、若手脚本家が健闘しているなどの数字が出ています。
SAG代表のヴェローン氏は、これらの数字がアメリカのTV界やハリウッドにおいて意思決定権を持つ人々への警鐘になれば、と話しています。この時期(特にTV業界では雇用シーズン)に今回のような報告をすることで、今からでも女性やマイノリティ達の脚本により一層目が向けられるようになれば。また、組合員みんなが平等な機会の下で競争がすることが出来れば、とも語りました。女性ならではの観点、マイノリティの背景から生まれる国際色豊な発想。業界内でのチャンスが公平になることで、我々に届く作品の幅も更に広がっていくのではないでしょうか。スクリプト採用などの決定権を持つのは、最終的にはやはりエグゼクティブ達。彼らが今回のレポート結果を前向きにとらえてくれることを期待します。
TEXT BY アベマリコ
今週の火曜日、全米脚本家組合(Writers Guild of America:WGA)西海岸支部が、2007年度の報告書を発表しました。WGAとは、アメリカで活躍する映画・TVの脚本家が加入するユニオンのこと。SAG(Screen Actors Guild:全米俳優組合)やDGA(Directors Guild of America:全米監督組合)などと並ぶ、映像業界で働く人々の為の労働組合となっています。この度発表されたレポートによって、女性やマイノリティ作家に対する歴然とした格差が明るみに。彼らの地位向上が、今後の課題として挙げられました。
↑SAG(Screen Actors Guild:全米俳優組合)ロゴ
このレポートは、2005年の一年間を通しての雇用状態と収入格差を性別・人種・年齢に分けて検証したもの。
社会学とアフリカン・アメリカン学の権威であり、2000年度のSAG報告書にも携わったダーネル・ハント氏が作成しました。彼の調査によれば、女性を含めたマイノリティライター達による地位向上は未だ「乏しい」と言わざるを得ない状況だとか。今日では、アメリカの全人口のうち30%以上が白人以外=マイノリティ人種であるのに対し、WGAに在籍している有色人種の作家は、TV部門で全体の10%にも満たないとの統計が出ました。更に、映画界においてはほんの6%未満と、ごくごく一部といった数字となっています。
人種別年収:
マイノリティ作家 v.s. 白人作家(女性を含む)
TV部門・中堅クラス
・マイノリティ作家:$78,107
・白人作家:$97,956
映画部門・中堅クラス
・マイノリティ作家:$66,666
・白人作家:$77.537
性別年収:
男性作家 v.s. 女性作家
映画部門・中堅クラス
女性作家:$50,000
白人男性作家:$90,000
年齢別割合:
TV部門
40-50代:35%
31-40代:37%
31歳以下:7%
上記は主要部門の値ですが、他にも女性の雇用率はTV・映画業界を合わせて全体で25-27%、現在会員である映画脚本家のうち55%は40歳以下、若手脚本家が健闘しているなどの数字が出ています。
SAG代表のヴェローン氏は、これらの数字がアメリカのTV界やハリウッドにおいて意思決定権を持つ人々への警鐘になれば、と話しています。この時期(特にTV業界では雇用シーズン)に今回のような報告をすることで、今からでも女性やマイノリティ達の脚本により一層目が向けられるようになれば。また、組合員みんなが平等な機会の下で競争がすることが出来れば、とも語りました。女性ならではの観点、マイノリティの背景から生まれる国際色豊な発想。業界内でのチャンスが公平になることで、我々に届く作品の幅も更に広がっていくのではないでしょうか。スクリプト採用などの決定権を持つのは、最終的にはやはりエグゼクティブ達。彼らが今回のレポート結果を前向きにとらえてくれることを期待します。
TEXT BY アベマリコ
2007年05月11日 16:10
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