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アカデミーからの「お触れ書き」:No More CDs!!

来年度のアカデミー賞に向け、すでにキャンペーンを進めているハリウッドの各スタジオ。そこに、イヤ~なムードが立ち込めてしまうこと間違いなしのニュースが飛び込んで来ました。毎年オスカーを主催する映画芸術科学アカデミー(AMPAS:Academy of Motion Picture Arts and Sciences)がこの度、アカデミー会員に向けたサウンドトラックCDの郵送を全面的に禁止する意向を発表。エグゼクティブ達が頭を抱えてしまうような状況になっています。

この動きは、オスカーシーズンを前にアカデミー会員の元に大量に届く「心付け」を受けてのもの。メンバーには、サウンドトラックCDのみならず、映画本編そのもののDVDや脚本のコピー、キャラクターグッズまでもが無料で送られます。こうした大金を注ぎ込む戦略は昨今のトレンドであり、各スタジオにとっては当たり前のものとなっていましたが、今回アカデミーが待ったをかけたのは音楽部門。映画音楽がどのように本編で使われているのか、いかに映像とコラボレートしているのかが審査の基準となるべきであり「CDプレーヤーやカーステレオで、音楽だけを聴いても意味ないじゃん!」というのが、AMPAS側の主張のようです。また今回の新ルールによると、サウンドトラックCDだけではなく、ミュージックビデオや楽譜すらも配布禁止の対象になるとか。とにかく、映画本編に挿入される音楽すべてを「単独」で宣伝活動させないというのが、アカデミーの姿勢となっています。

この速報に、映画音楽の関係者は当然のことながら猛反発。ジョン・ウィリアムズ、ハンス・ジマー、ハワード・ショアなど世界的にも著名な映画音楽の作曲家をクライアントに持つ広報は「失望した」とコメントしています。また「作曲家は映画を仕上げる最後のライターである」という作曲家の誇りを冒涜するルールだとする声や、脚本家はスクリプトを送ってアカデミー会員達と文字で作品を分かち合うことが出来るのに、どうして作曲家は音符を通してシェアしてはいけないのか?という疑問も。一方、CDを送ることで本編に使われたどの曲が誰の手によるものなのかを明確にできるとし、サウンドトラックは宣伝活動だけではなく著作権をクリアにする面でも有効だという意見も挙がっています。

この新ルールは、AMPASが今年6月に行った会議で可決されていたそうですが、発表は今週まで見合わされていました。そんな突然のニュースに、映画業界はてんやわんや。それでもアカデミーは、この方針を本年度より実施していく構えのようです。各スタジオからは悲嘆の声が聞こえてきそう…。この動きが、音楽部門の審査にどのように影響するのでしょうか?2008年度で第80回を迎えるアカデミー賞は、2月24日にコダック・シアターにて開催の予定。来年は、今までの主要部門に加えて最優秀作曲賞、最優秀歌曲賞からも目が離せません。


TEXT BY アベマリコ

2007年08月10日 15:03

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