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世界最大級の短編映画祭:LA Shorts Fest

9月に入ってからというもの、ハリウッドは数々のイベントで大賑わい。本コラムでも、MTVアワードやエミー賞など「アメリカンTVの祭典」をご紹介して参りましたが、映画ファンとして気になるのはやっぱり映画祭!去る9月5日から17日までの約2週間に渡り、「LA International Short Film Festival」が開催されました。およそ1万5千人もの観客を集めた会場で、今年は気になる日本人クリエイターを発見。フェスティバルの模様に合わせ、その監督と作品に迫ってみたいと思います。

短編映画祭では世界一の規模を誇るLA Shorts Festは、年々スケールを拡大中。今年で第11回目となりますが、2007年度はメイン会場をハリウッドのArcLightからバーバンクのAMCシアターに移し、開催日数を3日間増やして700本以上ものショートフィルムを一挙上映。本映画祭では2000年より、各カテゴリーの最優秀作品がアカデミー賞の審査候補になるというだけあって、年々エントリー数が増え続けているようです。延べ25本のショートフィルムがノミネート、うち8作品がオスカーを持ち帰ったという功績は、多くの映画制作者たちを惹きつけて止まない魅力のひとつかもしれません。

そんなハイクオリティーな短編映画がしのぎを削る中、ひときわ個性が光っていたのが中島央(なかじま・ひろし)監督。幼少の頃から映画に親しみ、高校卒業後に単身渡米。カレッジと四年制大学を映画専攻で卒業後、脚本家として活躍して現在に至るという経歴の持ち主です。今回、彼が監督・脚本・プロデュースしたのが「Lily:リリィ(37分)」。ひとりの女の子をメインキャラクターに展開する本作は、あの仏カンヌ映画祭にも招かれ、本フェスティバルはLAでのプレミア上映となりました。更にこれまでの映画祭では、3つの受賞と6つのノミネート。難関とされるLA Shorts Festの審査を通過したのも納得です。


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中島央監督
物語は、主人公リンの失恋から始まります。ボーイフレンドから一方的に別れを告げられ、一切の連絡を断たれてしまうリン。鳴らない携帯電話を見つめ、出ないと分かっていながらも何度もダイアルして留守電を残してしまうのは、恋する女の子であるのと同時に、もう一つ大切な理由がありました。子供の頃から「25歳の誕生日にユリ(Lily)の花を贈ってくれる男性が運命の相手」という言い伝えを信じ続けて来た彼女は、あと1週間で25歳になってしまうのです。あの手この手を使って彼とコンタクトを取ろうとしますが、気持ちばかりが焦る一方で進展はなし。あの言い伝えと出会った頃の自分を思い出しては物思いに耽る中、とうとう誕生日がやって来てしまいます。半ばあきらめかけていたリンのドアベルが鳴ったのは、日付が変わる寸前。そこに立っているのは…?リンすらも予期していなかった出来事が、彼女を待ち受けています。

本作を拝見して印象に残ったのが、まず主人公リンの魅力。ピュアな女の子の可愛らしさが、画面いっぱいに広がってこちらに迫って来ます。不安になってしょんぼりしたり、空想の世界に浸って思いっきり笑顔になったり、クルクルと表情を変える彼女には思わず恋してしまいます。物語が進むにつれて、どんどんリンに惹き込まれてしまうのは筆者だけではないはず。そんな彼女の繊細な気持ちの移り変わりを上手くとらえているのが、手持ちカメラ特有の揺れた映像です。細かい心理描写を各フレームで表現するカメラワークは絶妙。更には、画面の色合いで空想と現実の世界を描き分けていて、その適度なバランスが見ていて心地良いものとなっています。信じるものに向かってパワフルに突き進む女の子を描いた本作は、恋愛中の女性にはもちろん、カワイイ彼女が欲しい!なんて思っている殿方に、そして映画制作を志す方々にも見応えのある1本です。

今年のLA Shorts Festの結果は、以下のウェブサイトの通り。この中に、来年2月に行われる第80回アカデミー賞に登場する作品が潜んでいるかもしれません。残念ながら「Lily:リリィ」は本映画祭での受賞はなりませんでしたが、中島監督は現在、日米合作の長編劇場映画を準備中だとか。今後は、こちらの動向にも注目です。「Lily: リリィ」の詳細、ロングインタビューやプロフィールは下記のホームページからじっくりとご覧下さい。また、中島央監督への質問や応援メッセージも受け付けています。

「LA International Short Film Festival」:http://www.lashortsfest.com/


「Lily:リリィ」公式サイト:http://www.Lily-themovie.com/

中島央監督 Email アドレス:
HN@Superfilmmaker.net

TEXT BY アベマリコ

2007年09月27日 16:37

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