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11月恒例!AFI International Film Festival
今年も、LAの映画ファン達がシアターに入り浸ってしまう時季が到来。11月1日からの11日間、AFI Los Angeles International Film Festivalが開催されました。話題の新作はもちろん、日本からのエントリーや各受賞作品もご紹介していきます。
本年度で第21回目を迎えたAFI Festは、北米最大級との呼び声が高い映画祭。全米でも指折りのフィルムスクールAmerican Film Institute: AFIが主催、ハリウッド映画のみならず、世界各国から選りすぐりの長編・短編・ドキュメンタリー・アニメーションが一挙に上映されることで知られています。AFI Festの前身は、1971年から83年まで行われていたFlimex映画祭。その関係者達が発足したNPO団体American Cinemathequeによって、映画の発展/向上を目指すスピリットが受け継がれて来ました。20年以上が経った今日では、AFIに加えAFM(American Film Market)なども協賛、アウディーやLA Timesを始めとする数々のスポンサーが付いた一大祭典へと成長。アメリカで最も歴史ある映画祭として、近年は6万5千人以上もの来場者を惹き付けています。
例年、AFI Festで”Gala”=目玉作品としてフィーチャーされる映画の多くは、アカデミー賞に絡んで来ます。まず今年のオープニングを飾ったのは、本フェスティバルが北米プレミア上映となった”Lions for Lambs (原題)<邦題:「大いなる陰謀」>”。監督としても定評のあるロバート・レッドフォードがメガホンを取り、トム・クルーズやメリル・ストリープらと競演した話題作です。アカデミー会員が好みそうな社会派、アフガニスタン紛争をテーマに用いた本作ですが、作品自体に対する意見は賛否両論の様子。むしろ、仮面夫婦疑惑がささやかれるトム&ケイティ・クルーズ夫妻が来場した模様の方が、より目立っていた印象です。先週末のBox Officeでは初登場4位。今後、巻き返しとなるのでしょうか?
続いて、注目作品に選ばれたのは「サンキュー・スモーキング(邦題/2005)」などで知られるジェイソン・ライトマン監督の”Juno”。片田舎に住むティーンエージャー、ジュノが予定外の妊娠から出産を決意、まだ見ぬ子供の里親を探すコメディドラマです。ローマ国際映画祭でグランプリを獲得した本作は、多感なジュノの台詞に大爆笑。現実的な問題ながら、コミカルかつ感動的に仕上がっています。共に80年代後半生まれではありますが、子役からの芸歴は長いエレン・ペイジ、マイケル・セラの若手ベテランコンビにも注目です。
そして、最終日のクロージング作品として登場したのが”Love in the Time of Cholera”。「モナリザ・スマイル(2003)」や「ハリー・ポッターと炎のゴブレット(2005)」などで知られる英国人監督マイク・ニューエルの新作は、コロンビアを代表する作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの同名小説の映画化です。メインキャストには、米国アカデミー賞にもノミネートされたスペインの名優ハビエル・バルデム。2004年の「海を飛ぶ夢」における彼の名演技に、滝のような涙を流した方々も少なくないはず。そんな彼が、最愛の女性を50年以上も想い続ける悲恋の主人公に挑んでいます。
日本からは長編2作品がエントリー。1本目は「働きマン」や「ハッピーマニア」などで知られる安野モヨコ原作、蜷川実花初監督の「さくらん (洋題:Sakuran)」。舞台は江戸吉原の遊郭、花魁の成長と愛憎劇を描いた本作。豪華絢爛な着物はもとより、従来の「日本」のイメージを覆すような色彩と音楽の融合に話題が集中していました。もう一方の作品には、吉田大八監督による「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」が登場。当人は気付いていないけれど、傍から見れば「面白過ぎる」傍若無人な人物を客観視してしまう、ユニークな視点が印象に残ります。個性的なタイトルと凄まじい内容には、LAの観客も大ウケでした。そして、上映時には監督ご本人も来場。洋題 “Funuke, Show Some Love You Losers!”に「腑抜け」を残された理由を、今日ではあまり使われなくなった日本語を、”Tsunami”などと同様に世界共通語にしたかったからだと説明されていました。また、観客からの質問に「準備中」とだけ語った次回作にも期待が高まります。
毎年、審査委員会のメンバーによって選出される審査員特別賞。本年度の最優秀賞は以下のようになりました。各監督には5千ドル相当のコダックのフィルムや編集用ソフト一式が贈られています。
★最優秀短編賞:”Spider”/ナッシュ・エドガートン監督
★最優秀長編賞:”Munyurangabo”/リー・アイザック・チュン監督
★最優秀ドキュメンタリー賞(本年度は2作品タイ):
”Afghan Muscle”/アンドレア・モル・ダルスガード
“Operation Filmmaker”/ニナ・デイヴェンポート
また、お客さん達の票が集計された観客賞作品にも編集用ソフト一式が贈られました。
★短編部門:”Kids + Money”/ローレン・グリーンフィールド監督
★ドキュメンタリー部門:”Spine Tingler! The William Castle Story”/ジェフリー・シュワルツ監督
★長編部門:”The Diving Bell and the Butterfly”/ジュリアン・シュナベル監督
大盛況のうちに幕を閉じた第21回AFI Fest。100を優に超える上映作品の中に、2007年度を代表することになる名作が潜んでいるかもしれません。こちらでは書き切れなかった特別上映作品や生涯功労賞、各ワークショップなどの様子は下記のホームページからご覧下さい。
TEXT BY アベマリコ
2007年11月15日 12:44
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