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いよいよストライキ決行!脚本家 V.S. エグゼクティブ
全米脚本家組合(Writers Guild of America: WGA)と全米映画/テレビ製作者連合(Alliance of Motion Picture and Television Producers: AMPTP )の間で、長期に渡って対立していた手当て問題。正当な報酬を要求する脚本家側と、うなぎのぼりの制作費を出来るだけ抑えたいプロダクションの間の綱引きは、一向に決着がつきませんでしたが、去る11月4日、とうとう交渉が決裂してしまいました。WGAサイドは翌月曜日より、交渉成立まで無期継続の本格的なストライキに突入。多くのエンターテイメント会社が建ち並ぶロサンゼルスでは、組合員達による大規模なスト活動が始まっています。
事の起こりは先の日曜日。今年7月より行われていた交渉は、この日ウェスト・ハリウッドにて10時間以上にも渡る会議の末、合意に至ること無く物別れに。現地時間の夜9時過ぎに、1万人以上とされるWGA組合員に向けて一斉メールが送信され、月曜日からのストライキ決行が告知されたのでした。
WGAの主な要求は、まず家庭用ビデオ/DVD販売における二次使用料の増額。ひとつの媒体(ビデオ/DVD)が販売される毎に5セントの使用料が脚本家に発生する、と制定されたのは1985年ですが、その値段が20年以上も据え置きとなっていることにWGA側の不満が噴出。家庭用ソフトの販売は当時と比べて著しく成長した分野であり、その普及率や重要性から脚本家としては相当の増額を希望しています。しかし、AMPTPサイドはこれに猛反発。現在、組合員に支払われている使用料の総額は、西海岸だけでも年間6000万ドル以上に上ることから、これ以上の増額は難しいという判断が出されています。
もうひとつの要求は、番組のインターネット閲覧や携帯電話/iTunesなどでのダウンロードに対する使用料。現状では1セントも支払われておらず、WGAはこれに対しオンライン上では1.2%、ポッドキャストなどのダウンロードには5セントずつの使用料を請求しています。一方のAMPTPとしては、これらの収益は脚本家やプロデューサー達の為の企画・開発費に割り当てられていると説明。これが使用料として個人に吸収されれば、組合などで保護されていない裏方やアシスタントらの首が飛んでしまうとの危機感をあらわに。また、新しいテクノロジーの分野がどれだけ拡大していくのかが未知数である為、決断に踏み切れないとの意見も上がっています。
こうした双方が一歩も譲らない「無理難題」が長期に渡って討議され、今回のストライキに至ることに。現在、ロサンゼルス一帯に点在する各スタジオ前には、数千人規模の組合員達が集まっています。アカデミー受賞作品「チャイナタウン (1974)」などで知られるロバート・タウンや、「クラッシュ (2004)」や「硫黄島からの手紙 (2004)」などを執筆、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのポール・ハギスも参加中。しかし、中には今回のストには不参加、懐疑的な組合員も。週給25万ドルと噂されるハギス氏のような人物は別として、彼らの多くは収入が不安定。普段からアルバイト生活を余儀なくされている人々が、今回のように時間もお金も体力も消耗してしまう活動をしていては、今後の生活に支障が出るというのが本音のようです。また、運動や日光には縁遠い脚本家達が、どれだけストを粘れるのか?というちょっと笑える見解も飛び出しています。
遡ると、WGAが最後にストライキを行ったのは1988年。その際は22週間にも及び、業界内の被害総額は5億ドルに上ったと言われています。それが現代に起これば、10億ドルの被害は下らないだろうという見方も。今日のハリウッド/TV産業による経済効果は、ロサンゼルス郡全体の7%、年間約300億ドルを支えています。もし今回のストライキが長引けば、少なくとも25万人の関連業者に影響が出てしまうと懸念されています。
一般視聴者への影響ですが、映画の脚本に関しては来年分のほとんどが執筆完了、撮影の段階に入っているので大きな問題は無いと予想されています。TVドラマは、多くが年内分は入稿済みのようですが、中にはストが12月に入ってしまうとマズイ番組もあるとか。一方、すでに危険視されているのがレイトナイト・ショーと呼ばれる深夜のコメディ番組。旬のネタ満載の脚本が日毎に必要なので、冠番組を持つジェイ・レノ、ジョン・スチュワート、デヴィッド・レターマンらは、作家不在の為に新エピソードの収録延期を発表しています。
いつまで続くのか見通しが立たないストライキに、各テレビ局は穴埋め用の再放送番組など「在庫探し」に大わらわだとか。また、WGAに対する活動支援はセレブリティー達にも飛び火。来年の大統領選を控えたヒラリー・クリントンやバラック・オバマ、ジョン・エドワーズの各民主党候補は、すかさずスト中の組合員に対し応援コメントを発表しました。また、上記のジェイ・レノが彼らに大量のドーナツを持参したのを始めとして、ドラマ”Medium (NBC)”のパトリシア・アークエットがペストリーを、”Desperate Housewives (ABC)”のエヴァ・ロンゴリアはピザ、トーク番組の司会者ジミー・キンメルはブリトー、などの軽い差し入れ合戦も繰り広げられている模様です。
キーボードから離れ、太陽の下で特製パネルを握り締めている組合員達。彼らと製作者側の行く末を見守りつつ、来年に起こり得るSAG(全米俳優組合)のストライキにどのような形で影響するのかにも注目です。
TEXT BY アベマリコ
2007年11月08日 20:40
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