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オスカー前哨戦がスタート!2007年度の秀作は?

イルミネーションも華やかなアメリカの年末は、映画鑑賞のベストシーズン。アカデミー賞狙いの大作が次々と封切られ、オスカー像のゆくえを占うには恰好!とされる各賞発表の時季に突入します。中でも、最もアカデミー会員のお好みに近いとされるのが、今週アナウンスされたばかりのニューヨーク映画批評家協会賞。辛口で知られる評論家達の御眼鏡にかなったのは、どの作品だったのでしょうか?先週発表された米国映画批評会議賞、9日のロサンゼルス映画批評家協会賞の結果も交え、じっくりとご紹介していきます。

本年度で73回目となるニューヨーク映画批評家協会賞 (New York Film Critics Circle Awards: NYFCC賞)にて絶賛されたのは、”No Country for Old Men (邦題:ノーカントリー)”。巧みな映画創りの手法から世界中に熱烈なファンを持つジョエル&イーサン・コーエン兄弟の新作が、最優秀作品/監督/脚本/助演男優賞 (ハビエル・バルデム)の4冠制覇を成し遂げる快挙となりました。5日に発表された第79回米国映画批評会議賞 (National Board of Review Awards: NBR賞)でも、最優秀作品賞を獲得。コーエン兄弟によって、コーマック・マッカーシーの同名原作が映像化された本作は、現代映画界に一石を投じるかのような「挑戦」と、奇抜なメインキャスト達による攻防戦には舌を巻くこと間違いなし。特に、冷血漢の殺し屋を演じたバルデムの怪演は「史上稀に見る恐ろしさ」との評判も。初見では仰天(爆笑?)させられる彼のオカッパ髪も、考え様によってはどんなカメラアングル/ポジションにも耐え得る絶妙な髪形です。また、脇を固めるキャラ達もコーエン節の効いた個性溢れる人々ですので、乞うご期待。日本では「缶コーヒーBossのおじさん」の印象が強いトミー・リー・ジョーンズも登場し、強烈な南部アクセントの保安官というハマリ役を好演。殺人鬼&逃亡者を追う渋いオヤジぷりが素敵です。

一方、今年で33回目を迎えたロサンゼルス映画批評家協会賞(Los Angeles Film Critic Association Awards: LAFCA賞)においては、”No Country~”の受賞はならず。ダニエル・デイ=ルイス主演の”There Will be Blood (原題)”が、最優秀作品/監督/主演男優賞の3部門受賞となりました。
ちなみに、NYFCC賞の主演男優賞もダニエル・デイ=ルイスに。いかなる役柄でも観客を惹き込んでしまう英国の名優は、笑顔ですら人々を凍りつかせる強欲な石油試掘者を演じています。そんなカメレオン俳優デイ=ルイスと堂々やりあう若干23歳のポール・ダノにもご注目。2004年公開の「テイキング・ライブス 」、そして昨年大ヒットした「リトル・ミス・サンシャイン」等、「影を持つ青年」を演じさせたら右に出る若手俳優はいないのではないでしょうか。今後、ますます注目が集まりそうなアクターです。

その他、NYFCC賞・主要部門は以下の通りに。”Away from Her (原題)”で、認知症を患った主婦を熱演したオスカー女優ジュリー・クリスティが最優秀主演女優賞を獲得。ちなみに、NBR賞でも同賞を獲得しています。また、本作の監督/脚本家を務めたカナダ出身の女優サラ・ポーリーには、最優秀新人監督賞が贈られました。最優秀助演女優賞は、ベン・アフレックの長編監督デビュー作”Gone Baby Gone (原題)”に出演のエイミー・ライアンへ。愛娘が誘拐されてしまう母親を演じた彼女は、NBR賞・LAFCA賞も獲得しています。また、今年の話題作のひとつ、賞レースにも絡んで来そうな”Before the Devil Knows You’re Dead (原題)”におけるイーサン・ホークの元妻役でも存在感を見せたライアンは、LAFCA賞においては2作を合わせたW最優秀助演女優賞獲得となっています。

最優秀ドキュメンタリー賞には、イラク占領におけるアメリカの内情を赤裸々に描いた”No End in Sight (原題)”。最優秀アニメーション賞は、個性的なタッチが話題となったフランスの「ペルセポリス」が受賞しています。こちらの2作品はLAFCAでも完全にカブっており、東西の批評家が認める秀作だったことがうかがえます。そして最優秀外国語作品賞は、前回オスカー像を持ち帰ったドイツ作品「書き人のためのソナタ」に贈られました。

1935年の創立以来、最優秀作品賞の43%がアカデミー賞と重複しているNYFCC賞。昨年の「ユナイテッド93」は違っていたものの (アカデミー賞:「ディパーテッド」)、最優秀主演男優/主演女優/監督/助演女優/アニメーション賞は見事に一致しています。来年2月24日の授賞式が待たれるアカデミー賞でも、批評家達が選んだようなタイトルが並ぶのでしょうか。もしくは今後に控えている賞レースから、ガラッと違う作品がオスカー候補に影響するかも?残り約2ヶ月の動きから、ますます目が離せなくなりそうです。

TEXT BY アベマリコ

2007年12月14日 12:39

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