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史上最高の盛り下がり!?第65回ゴールデン・グローブ賞
昨年11月の決行より早2ヶ月。長引くWGA(全米脚本家組合: Writers Guild of America)ストライキの影響で、授賞式典の中止が発表されたゴールデン・グローブ賞。華やかなハリウッドスター達は全員が「欠席」、トロフィー授与も無い会見形式へと姿を変え、13日に各受賞者が発表されました。ニュース番組のダイジェストのように矢継ぎ早に発表されていく様子は、文字通り「前代未聞」。良くも悪くも印象深い特番となりました。
例年、3時間以上かけて放映されるゴールデン・グローブ賞(以下GG賞)のセレモニーですが、今年は何と1時間番組へと縮小。そんな切羽詰った状況で光ったのが、ワイドショー”Access Hollywood”の看板ホスト、ビリー・ブッシュ(あのジョージ・W・ブッシュのいとこ)とナンシー・オデールの、ゴシップ記事で鍛えられた滑舌でした。彼らのマシンガントークによって次々と発表されていった主要部門を、こちらもどんどんお伝えしていきます。
本年度、GG賞の話題をさらったのは最多7部門にノミネートされた「つぐない(邦題)」。現代エピック・ロマンスの真骨頂、キーラ・ナイトレイ&ジェームズ・マカヴォイのフレッシュな若手コンビによって描かれたドラマの本受賞は2部門に留まりましたが、ひとつはベスト・オブ・ベストともいえる最優秀作品賞ドラマ部門。更に、感傷的なムードを存分に高めたダリオ・マリアネッリが最優秀作曲賞を受賞しています。2006年度アカデミー賞(「プライドと偏見」)では惜しくもオスカーを逃した氏。本年度への期待が高まります。
「つぐない」を含め、今回のGG賞で2つのトロフィーを持ち帰ったのは計4作品。「スウィーニー・トッド:フリート街の悪魔の理髪師」は最優秀作品賞ミュージカル/コメディ部門に加え、劇中で美しい歌声を披露したジョニー・デップが最優秀主演男優賞(同部門)に選ばれました。意外にも、彼にとってGG賞は初めて。過去7回のノミネートを経ての初受賞となりました。
ネオ・ウエスタンとの呼び声が高い「ノーカントリー」は、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟に最優秀脚本賞、最優秀助演男優賞にハビエル・バルデムの2冠。キッチリ前髪オカッパの執拗な暗殺者を演じた彼は、オデール女史に「元ウェイター、警備員とストリッパーだった」と衝撃のトリビアを披露されることに。本来の式典ならあり得ないこの行為…。それにしても、バルデム様はステキ過ぎです。
そして、最優秀監督賞と最優秀外国語作品賞を持ち帰ったのは、ジュリアン・シュナーベル監督「潜水服は蝶の夢を見る」。フランス人ジャーナリストによる自叙伝をもとに構成された本作は、モダン芸術家でもある監督のアーティスティックな表現が満載。痛切なストーリーの中にもダイナミックな色彩と音楽が使われています。
一方、最優秀主演男優賞を受賞したのは”There Will be Blood (原題)”のダニエル・デイ=ルイス。ドラマというよりもむしろ「ホラー」に近い程、人間の内面の恐ろしさを示すパフォーマンスが評価されています。また、同女優賞は”Away from Her”よりジュリー・クリスティー。認知症という難しいテーマのもと、彼女だからこそ見応えがあると評判になった1本です。
今年のちょっとした番狂わせは、人気作品「ヘアスプレー」主演のニッキー・ブロンスキーと”Juno”のエレン・ペイジが無冠に終わったこと。特番では、ニッキーちゃんが家族と自宅にてノミネートを聞きつけるや、コーヒーテーブルを蹴散らして大喜びするクリップも公開されましたが受賞はならず。最優秀主演女優賞ミュージカル/コメディ部門には「エディット・ピアフ:愛の賛歌」より、素晴らしい歌唱力をみせたマリオン・コティヤールに、最優秀助演女優賞は”I’m Not There”でボブ・ディランの「潜在的自我」として男性を演じる新境地を開拓したケイト・ブランシェットに贈られています。
また、昨年度に追加されたてホヤホヤの新カテゴリー「最優秀アニメーション映画賞」には、「カーズ」に引き続きPixar製作の「レミーのおいしいレストラン」。本年度もピクサー旋風が吹き荒れるのでしょうか?
最後にTV部門では”Longford (HBO)”が最優秀ミニシリーズ/TV映画部門を含む3冠、AMCの新シリーズ”Mad Men”が最優秀ドラマ賞を含む2冠を獲得。本年度のテレビ勢は、近年のGG賞らしく「比較的新しい顔ぶれ/作品」にトロフィーが贈られた模様。アメリカンドラマにどっぷり漬かっている方々は、下記のリンクより詳しい結果をご覧下さい。
駆け足で放送された、今年のゴールデン・グローブ賞。1時間番組と言えども多くのスポンサーに配慮して、トータル20分以上がCMに割かれておりました。連ドラよりも短い、正味30分少々の間に19部門も発表する忙しさ…。どうにも不完全燃焼といった感が否めませんが、これから気になるのはアカデミー賞!主催のAMPASは前向きに式典開催を目指している模様、無事に授賞式が拝めることを期待します。今回のドタバタ劇がオスカーの視聴率アップに繋がるか、それともアメリカ国民のテレビ離れが進んでしまうのか。各賞の行方やスター達の饗宴に合わせ、そちらも気になるところです。とにもかくにも、アカデミー賞の開催を心から祈りましょう。
TEXT BY アベマリコ
2008年01月18日 13:48
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