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ハリウッドがヨーロッパ化?第80回アカデミー賞

去る2月24日、待ちに待ったアカデミー賞が開催されました。当日はあいにくの雨天となりましたが、多数のセレブリティ達、ファンや報道陣が詰め掛け、コダックシアター周辺は例年通りの通行止めに。映画ファンの皆さんはすでに結果をご存知だとは思いますが、オスカー像の行方に合わせて授賞式のハイライト&小ネタを続々とご紹介していきたいと思います。

本年度のアカデミー賞は、2度目のホストを務めたジョン・スチュワートによる10分近くのスピーチで開幕。WGAストライキの終結はもちろんのこと、客席のノミネート者達にとどまらずオバマ/クリントン両候補もネタにしてみたりと、大統領選に揺れるアメリカにふさわしいジョークの連続でした。地味だ単調だと何かと物言いが付いた今回のオスカーですが、他の出演者をイジりまくるスタイル、政治分野にも見識が深い彼の司会進行は高評価を得たようです。

それでは、ガンガンいきましょう。まず注目の作品賞は、コーエン兄弟監督の「ノーカントリー(邦題)」へ。8部門にノミネートという圧倒的な評価を受け、監督賞・脚色賞・助演男優賞を合わせた4冠制覇となりました。恐ろしくシャイな弟イーサンは、相変わらず言葉数の少ないスピーチを披露。兄ジョエルは30年前にふたりで8mmから始めた映画作りを回顧、ほぼ変わることなく製作を続けられていることに感謝の意を述べました。映画好きの間ではカルト的な人気を誇るコーエン・ブラザーズ。とうとう、映画の最高栄誉であるオスカー像を持ち帰りました。

今年の俳優4部門は、何と全てヨーロッパ勢に渡るという異例の事態に。主演女優賞は「エディット・ピアフ~愛の賛歌~」のフランス人女優マリオン・コティヤールが獲得。昨年の同男優部門受賞のプレゼンター、過去に彼女と”Mary (原題)”で共演したフォレスト・ウィテカーよりオスカー像が受け取りました。信じられない!といった様子で、涙を溜めて震えながらのスピーチ。劇中の老けメイクからは考えられないほどの美しさでした。印象的だったのは、アナウンスの瞬間に超ビックリ&大喜びした候補者のひとり「エリザベス:ゴールデン・エイジ」のケイト・ブランシェット。現在は妊娠中、少しふっくらとした優しい顔つきがステキでした。

主演男優賞にはイギリス出身、アイルランドに市民権を持つ「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ=ルイス。「今年は絶対に彼が獲る。あんなにスゴイ演技をされて、候補者みんなでムカついてるよ!」なんてジョークを飛ばしていたジョージ・クルーニーのおでこにキスをして、ステージに上がりました。両耳にピアス、187センチの長身、50歳でもスリムな体型はまるでミュージシャンの風貌。出演作品を慎重に選び、ひとたび出ればアカデミー賞に絡んでくる実力派俳優ですが、オフには靴職人として普通に働いちゃったりするのも数ある逸話のひとつ。それにしても、街中の靴屋さんに彼がいたらかなりの衝撃。こちらの職人技も気になります。

前述の「ノーカントリー」より助演男優賞を獲得したのは、スペイン俳優のハビエル・バルデム。各賞総ナメの個性的なピッチリ横分けオカッパキャラで、初のオスカー像を持ち帰ることになりました。スピーチの最後はスペイン語で、同伴した女優のお母様ピラー・バルデムに捧げています。彼の受賞には誰も驚かないとは思いますが、ビックリなのはまだ30代という事実。今回は、アカデミー賞の「お約束」=ジャック・ニコルソンの隣りに座っていて、その為か何度もカメラに抜かれていましたが、ハリウッドの伝説の傍らでも物怖じせずに終始ニコニコ顔。何をどうしたらそんなに貫禄がつくのか、ちょっと問い詰めてみたい気持ちでいっぱいです。

もともとサプライズが多いとされるこのカテゴリー、助演女優賞には「フィクサー」のイギリス人女優ティルダ・スウィントン。これにはご本人が最も驚いたようで、ステージでのひとこと目は、”Happy Birthday, Man.” オスカー像に問いかけ、共に渡米したエージェントにそっくりだと笑いました。劇中では黒髪の手厳しい女性弁護士を演じていますが、式典当日の彼女は赤毛のベリーショート、他の女優とは一味違うゆったりとした黒のドレス、とボーイッシュな雰囲気。開口一番のセリフといい会場を沸かせるスピーチといい、独特な雰囲気がカッコイイ女優さんです。

ヨーロッパ陣が活躍したのは、演技部門のみならず。美術賞・メイクアップ賞・衣装デザイン賞と短編アニメ賞も、すべてヨーロッパ出身のクルーに贈られています。また、長編アニメ賞を獲得したPixar製作「レミーのおいしいレストラン」も舞台はフランス。本年度のアカデミー賞は、様々なアクセントの英語が入り混じる結果となりました。また、「ノーカントリー」に加えてアメリカ映画で大健闘したのは「ボーン・アルティメイタム」。編集賞・録音賞・音響効果賞と、映画に無くてはならない重要な部門でのオスカー獲得となっています。この結果を踏まえて、再度観直してみるのも一興かもしれません。一方、日本から参加の浅野忠信さん主演・外国語作品賞にノミネートされた「モンゴル」、「マッド・ファット・ワイフ」でメイクアップ賞にノミネートされた辻一弘さんは残念ながら受賞はならず。しかし、今年のアカデミー賞を見る通り、ハリウッドは外国勢に押され気味。この勢いで、ぜひアジアも!日本人が続々と壇上に立つ日も近いかもしれません。

WGAストライキの犠牲になることなく、無事に開催の運びとなった2008年度のアカデミー賞。けれども、視聴率は歴代ワーストワンを記録してしまいました。ABCにて約3200万人もの視聴者が見守った計算になるようですが、今月初めのNFLスーパー・ボウルの9750万人 (過去最高/FOX) には遠く及ばず。原因には諸説が挙がっていますが、式典・台本の準備不足やノミネート作品が全体的に暗いこと、商業的な作品が少なかったという意見が多く聞かれます。ちなみに「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」が11部門をさらった2004年度は4350万人、「ディパーテッド」が4部門を制覇した昨年は4000万人の視聴数。やはり、アメリカ人は派手な大作映画を好むのかもしれません。

1929年から続く歴史、華々しいスター達に彩られるアカデミー賞。数字はどうであれ、映画好きにはやっぱりたまらない一大祭典です。本年度の詳しい結果は下記のリンクから。写真や動画も満載、華やかな雰囲気をぜひ味わってください。また、本年度は主催の映画芸術科学アカデミー (AMPAS: Academy of Motion Picture Arts and Sciences )とYouTubeが提携し、これまでの授賞式の模様などを公開していますので、そちらも要チェックです。2008年も、気になる新作&話題作が目白押し。ちょっと気が早いかもしれませんが、すでに来年のオスカーが楽しみです。

【アカデミー賞ホームページ】
【第80回アカデミー受賞者リスト】
【YouTube オスカー・チャンネル】


TEXT BY アベマリコ

2008年02月28日 16:52

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