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祝☆オスカー開催:ここでWGAストライキをおさらい!

WGA (全米脚本家組合: Writers Guild of America) によるストライキもいよいよ終結、急ピッチで準備が進む2008年度のアカデミー賞。街中では、各ノミネート作品の看板がガンガン増設されています。ゴールデン・グローブ賞中止の二の舞になるのでは?との懸念を一蹴、例年以上にお祝いムード満点のオスカー直前!これまで深刻化してきたWGA vs. AMPTPの関係、100日間にも渡ったストライキとその経緯をここでちょっとおさらいしてみましょう。

全米にて1万人以上の会員数を誇り、NY・LAと東西に支部を持つWGA。彼らの契約は3年ごと、更新時にはAMPTP (全米映画テレビ製作者協会: Alliance of Motion Picture and Television Producers)と基本手当て (MBA: Minimum Basic Agreement)が交渉されることになっています。この度の契約満了日は昨年10月31日でしたが、同月25日から始まった契約交渉は難航。WGA・AMPTP双方が出す条件に折り合いが付かず、結局翌月の2日にはWGAサイドがストライキ決行を表明。翌週11月5日を待って、以来100日間に及ぶストへと突入したのでした。
今回、WGAが出した要求のうち焦点となったのは、1985年以降20年以上に渡って固定されていた、DVDなどの家庭用媒体における二次使用料の増額。そして「ニューメディア」と呼ばれるインターネット・携帯電話・ストリーミングなどの著作権料の支払いでした。これらの要求に、追い詰められてしまったのがAMPTP側。WGAのみならず、DGA (全米監督組合)やSAG (全米俳優組合) など他のユニオンとの交渉も控えている上、年々膨大な額になっていく使用料、更には今後の伸び率が読みづらい新しい媒体に対する脅威など、どうにも首を縦に振れる状況ではありませんでした。

WGAにとって約19年振りとなった大規模なストライキは、結果3ヶ月以上に渡る長丁場に。そして2月に入り、アカデミー賞開催をも危ぶむ声が囁かれ始めた矢先、WGAは会員に向けてAMPTPとの仮契約を告知。その条件を呑むのかどうかのヒアリングを行いました。9日に行われた投票の結果が出た翌月曜日、92.5%のメンバーが仮契約の条件に合意およびスト終結を望んでいることが明らかに。そして、12日をもってスト解除の運びとなりました。ちなみに、投票同日に行われたWGAアワードでは、脚色賞にご存知コーエン兄弟の「ノーカントリー (邦題)」が、オリジナル賞には「元ストリッパー」という異例の肩書きを持つ美人脚本家ディアブロ・コーディによる”Juno (原題)”が選ばれています。

気になる仮契約は「ほぼ」WGAの要求に沿うかたちとなっており、先の1月中に一足早く仮合意に至ったDGA・AMPTP間の交渉を踏襲したような内容に。TV放映における使用料が一部3%から3.5%に引き上げられたほか、注目のニューメディアを通した使用料も最大2%が支払われるなどの項目が盛り込まれています。しかし、AMPTPがかなり頑張ったにも関わらず「~の場合に限り○%」といったトリッキーかつ細かい条件付きリストに意義を唱えるWGA会員も。例えば、TVシリーズのネット放映は、地上波で放送後17日間(新シリーズは24日間)は「宣伝期間」につき使用料が発生しないとあって「普通、見逃しちゃった番組は数日以内に観るんじゃないの?」といった不満の声も聞こえています。また、低予算のウェブ用番組などにはAMPTP側のフレキシブルな契約の元で「非WGA組合員」を雇用できる、といった条件も含まれており、現役会員の活躍の場を狭めてしまう可能性も懸念されています。

2月12日以降はスト解除、会員達は職場復帰を果たしていますが、現状はあくまで「暫定」。最終的には2月25日に予定されている最終投票によって、現在の仮契約が採択されます。この度のWGAストによって、60本以上ものTV番組が休止となり、被害総額は20億ドルとも30億ドルとも。ハリウッドはしばらく、数ヶ月間ストップしていたお仕事の巻き返しに奮闘することになりそうです。

駆け足でおさらいしてきましたが、WGA vs. AMPTPの攻防戦は一段落。ピケットラインも無くなり、これで俳優陣も堂々とコダックシアターのレッドカーペットを歩くことが出来そうです。映画やTV番組はもちろん、各授賞式にも脚本家達の影あり。WGA会員がより一層腕を振るうであろう台本にも期待が高まります。見どころ満載になりそうな本年度のアカデミー賞、来週のレポートをお見逃し無く!

TEXT BY アベマリコ

2008年02月21日 21:17

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