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アメリカンTV: 視聴率が軒並みダウン
2007年の秋から今春までのシーズンを振り返ってみると、各ネットワークの視聴率は著しく低下。中には今期を「史上最も困難だったシーズン」とするテレビ関係者も少なくないようです。一体何がどうしてこうなったのか、今回はその経緯を探ってみましょう。
アメリカのTVシリーズは、多くがシーズン制。約3ヶ月をワンクールとするバラエティ番組などの例外は除いて、秋に開始したドラマは翌年の春まで続き、また次の秋から新シリーズに突入するのが通例となっています。2007秋-2008春の今期も5月に入って続々とフィナーレを迎えましたが、その数字は下降の一途。昨秋に勃発したWGAストライキの影響に加えてDVRの普及やニューメディアの拡大に後押しされ、アメリカ国民のテレビ離れは止まらないようです。
まず主な原因の一つ目は、近年のヒット作不足。1998年から2004年に放送され、待望の映画版が30日に全米公開を控える”Sex and the City (HBO/原題)”を始め、2001年より開始の”24 (Fox)”や2004年から始まった”Lost (ABC)”、その翌年スタートの”Grey’s Anatomy (ABC)”のような「社会現象」クラスの作品となると、残念ながら昨今では見当たりません。また、どんな人気ドラマでも回を重ねてしまえば飽きて「脱落」しちゃう人が出てくるのは当然といえば当然。実際にWGAスト前でさえ、前述の人気ドラマ達の視聴率は前年比平均8%のダウンがみられています。
そんなところにWGAのストが重なり、事態は深刻化。度重なる再放送により、人々のTV離れは加速しました。一時はリアリティーショー人気でやや持ち直すも、全番組が戻った頃には数字は下り坂。絶大な人気を誇るオーディション番組”American Idol (Fox)”は今期もトップの座をキープしてはいましたが、蓋を開けてみれば前シーズンに比べて全体で約10%も落ち込んでしまいました。一方、こうした間に番組数が豊富なケーブルテレビへと視聴者が流れたことも、数字不振の要因のひとつ。ニールセン社が出すレートは一般放送とケーブルとで分けられる為、全体視聴数に変化が無くても、メインとなる一般部門の数字は必然的に下がってしまうことになります。
また、昨年度は15%程の普及率だったDVRが、今期になって24%にまで増加。録画して後日に鑑賞する場合は視聴率に換算されないので、観られてはいるけれど数字に反映されない、という現象も指摘されています。オンタイムでTVの前に座る必要がなくなる上、5分近くも続くCMがカットないし早送りできてしまうDVRは視聴者としては有難いのですが、製作側としては悩みの種。スポンサーが付かなくなれば制作費の捻出も難しくなる訳で、クオリティの高い番組を作るのがますます困難になるという悪循環が生まれてしまいます。
更に、ここに来て急速に伸びているのが「ニューメディア」と呼ばれるインターネット中心の媒体。そのひとつとして、各ネットワークのウェブサイト上にてシーズン中に限り無料視聴を行なうのが主流となっています。本来は番組を見逃した視聴者を本放送に追いつかせる為に始まったものですが、結果としてドラマをネットで鑑賞する人々が急増。そこに新旧ほとんどのシリーズを網羅した「海賊版サイト」までもが出現し、ドラマ=ネット視聴の構図が出来上がりつつあるのも大きな問題となっています。
今シーズンの惨敗を受け、ネットワーク各社に求められているのはパワフルな新番組ですが、発表され始めた今秋のラインナップはスピンオフが中心。すでに日本でも話題の”90210 (CW)”を始め(新シリーズを心待ちにしているビバヒルマニアの皆様へ、先日決定したケリー役のジェニー・ガースに続き、ドナちゃんことトリ・スペリングの出演が決定しました)、スティーブ・カレル主演のコメディ”The Office (NBC)”や、大人向け人気アニメ”Family Guy (Fox)”などの番外編が目白押し。どうやらテレビも映画同様、リメイクやスピンオフとして過去の人気作品に乗っかる「安全パイ策」が取られている模様です。
この秋は、各チャンネルの巻き返し&名誉挽回に乞うご期待。テレビ談義に花が咲くようなシーズン、ドラマの当たり年となりますように。また今後、9月の新番組が出揃い次第レポートしていきますので、そちらもお見逃しなく!
TEXT BY アベマリコ
2008年05月29日 14:41
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