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NYの新法案でHollywoodがピンチ?
WGAストによる傷が未だ癒えないハリウッドにとっては弱り目に祟り目? この春、ニューヨーク州で可決された新法により、現地における映画やTV番組の製作がググッと「お得」になりました。それに伴い、LAからお引越しするTVシリーズが続々。ロサンゼルス経済を担うハリウッドは、持ちこたえることが出来るのでしょうか?
4月に可決された製作税控除法案とは、NYにおける映画やTVなどの撮影を促進/活性化させる為の新法。プロジェクトにかかった費用の一部が、製作元に還元される仕組みとなっています。製作者・監督・脚本家・俳優などを含む主要クルーの給与以外に分類されるコスト(業界用語でいう「Below the Line」)に対して 10~30%の税金控除、更には最大5%分の払い戻しもあり。スタッフの宿泊・移動費や飲食代など多額の費用が注ぎ込まれる撮影部隊を呼び込みたいNY、1セントでも安く仕上げたい製作側の双方にとっては、Win-Winのオイシイ法律なのです。
およそ10年前より、ロサンゼルス地域での撮影費用は著しく高騰。多くの映画製作はLAより安くあがる他州や海外に移され、以来その数は4割近くも落ち込みました。映画制作による収入に頼れなくなったハリウッドにとってTV番組のプロダクションこそが活力源となっていましたが、今回の新法はその流れを脅かす言わば「厄介者」です。直接的な打撃を被るのは、技術クルーや器材のレンタル、ケータリング/運搬業者や宿泊施設に及ぶBelow the Lineで働く人々。一気に職を追われることになり、よってハリウッド=LAの財源がかなり圧迫されることも考えられます。
この新法にいち早く反応したのはABCの人気ドラメディ「アグリー・ベティ (邦題)」。今秋より放送予定の第3シーズン分(7月初頭に撮影開始)より、NYでの撮影に切り替えられることになっています。日本でも放映されている本作は、もともとNYCが舞台。実際に初回パイロットは現地で撮影されており、その後LAのスタジオにて各エピソードの撮影が進められていました。つまり今回の移動はお話の設定上ではごく自然な動きとなりますが、結果として約150名ものLA在住クルーが失業の危機に立たされることに。多くは同局の他番組に異動が決まったようですが、突然の契約解除に動揺するスタッフも多数。彼らが業界紙に掲載した「嘆願書」、CA州知事アーノルド・シュワルツェネッガー氏に同法案を検討するよう求めた直訴広告も話題となっています。
また、今秋から始まる70年代英国ドラマのリメイク版 ”Life on Mars (原題)”は、当初の撮影予定だったロサンゼルスからNYへと現場を変更。同じく秋にスタートのSFドラマ “Fringe (Fox)”も、カナダのトロントからニューヨークへと移動することに決定した模様です。更に、NBCでの放映が決定したばかりの “Kings”も、ロケーションをNYCに設定。今後も、新旧作を含めてMade in NYのTVシリーズが増えていきそうです。
ここまででは「いずれNYがハリウッド化?」と懸念されそうですが、どうやらその心配はご無用。LAはアメリカ国内のどこよりもスタジオや製作会社がひしめき合い、プロダクションにはもってこいの場所です。一方、サウンドステージが3館しかないNYでは、製作数の増加に伴ってスタジオ新設が検討されてはいますが、LAの設備の方が圧倒的に多いのが現状。また、多くのスター俳優達が住む土地でもあり、移動などの経費が抑えられているのも事実です。よって、まだまだロサンゼルス=ハリウッドの図が崩れることはなさそう。むしろ近年まで撮影場所の新メッカとなりつつあったカナダこそ、NYにお株が奪われるのではないかとの不安が及んでいるようです。
ロケ地をLAにするかNYにするのか、今後は各スタジオから電卓の音が響いてきそうです。一視聴者としては「Lの世界 (Showtime)」も「セックス・アンド・ザ・シティ (HBO)」も、それぞれ違った風景&個性を堪能出来るというもの。制作費をうまく抑えた分、よりクオリティの高いTVシリーズを期待したいと思います。
TEXT BY アベマリコ
2008年06月12日 21:11
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