« Anime & Mangaの次は”Batsu Game”?日本のバラエティが大人気 | メイン | ハリウッドにも不況の波?アカデミーの新戦略 »
世界のクロサワ: アカデミーが特別イベントを開催
日本が「世界」に誇る映画の名匠、黒澤明監督。氏の10回忌となったこの秋、毎年オスカーを開催するAMPAS (Academy of Motion Picture Arts and Sciences)本部にて「Akira Kurosawa: Film Artist」と称した展覧会を開催中です。代表作の試写会や100を超える展示品に加え、あの名作の復元版プリントも上映。名監督を偲ぶアカデミー・イベントの模様をお伝えします。
1998年9月6日。黒澤明監督がこの世を去ってから10年目を数える今年、AMPASでは3ヶ月に渡っての回顧展「Akira Kurosawa: Film Artist」が開催されています。まず9月18日のオープニングを飾ったのは、以前からデジタル復元が進められていた「羅生門 (1950)」のプレミア上映。当日の会場には、アカデミー会長のシド・ガニスを始め「8月の狂詩曲 (1991)」に出演のリチャード・ギア、黒澤久雄氏や三船史郎氏らもパネル・ディスカッションのゲストに招かれました。「羅生門」は1951年にヴェネチア映画祭の金獅子賞、翌52年にはアカデミー賞の現外国語作品賞を獲得しており、監督の名を世界にとどろかせた代表作のひとつ。太陽に直接レンズを向けた「世界初」とされるテクニックを含む映像美はもちろんのこと、人間の記憶のあいまいさ/客観性に迫ったストーリー展開は、欧米ではそのまま”Rashomon Effect ”と名付けられています。
★「羅生門」より、森雅之さんと京マチ子さん/
画像提供: A.M.P.A.S.
更に今回の回顧展では、黒澤作品のうちアカデミー賞を獲得/ノミネートされた作品を3週に渡って一挙公開。会場には年配から若者まで多くが詰めかけ、絶大なるKurosawa人気がうかがえました。9月19日はSamuel Goldwyn Theaterにて「影武者 (1980)」、26日からはLinwood Dunn Theaterで「七人の侍 (1954)」、27日「乱 (1985)」、10月3日「用心棒 (1961)」、4日の最終日には「デルス・ウザーラ (1975)」が上映され、5作品中「影武者」「七人の侍」「デルス・ウザーラ」はニュー・プリントでのプレミア試写となっています。筆者を含め、多くの観客にとっては生まれる前に製作された名作の数々が、フィルム&大スクリーンで鑑賞できる絶好の機会でした。
引き続き「Akira Kurosawa: Film Artist」は、12月14日までの開催。手書きの注釈が入った台本や絵コンテを筆頭に、撮影に使われた小道具や衣装、当時の宣伝用ポスター、ご自身による絵画や書など、黒澤監督ゆかりの品々100点以上がズラリと並んでいます。1990年製作の「夢」にフィンセント・ファン・ゴッホ役で出演したマーティン・スコセッシは、監督じきじきに贈られた役作り用のスケッチ10点を出展。また、晩年のトレードマークとも言える監督愛用のサングラスなども展示されています。黒澤監督の息遣いに触れられる当イベントは、太っ腹にも入場無料。これからLAにいらっしゃる方々、近郊にお住まいの皆さんはぜひぜひ足を運んでみてください。
新品の湯のみには茶渋を付けさせる、劇中では開けない箪笥にも着物を入れるなど、数々の逸話がある黒澤監督ですが、ここアメリカにも様々な伝説が残されています。例えば、黄金期を過ぎた50-60年代のニュー・ジェネレーション・ハリウッドでは、ドラッグの煙が立ち込める (!) 各スタジオにて、夜な夜な「Kurosawa Screenings」が催されていたとか。大迫力かつエキゾチックな映像は、若い彼らにどれだけ新鮮に映ったのでしょうか。今日のハリウッドにも、確実に「クロサワ」の血が流れていると感じさせてくれるエピソードです。2年後には、生誕100周年を迎える黒澤明監督。20世紀に残された作品達は洋の東西を問わず、今なお息づいています。
【AMPAS公式ページ「Akira Kurosawa: Film Artist」】
TEXT BY アベマリコ
2008年10月09日 19:35
この記事へのトラックバックURL:
http://blog.eigafan.com/cgi-bin/mt-tb.cgi/1224
毎週木曜日更新