« 世界のクロサワ: アカデミーが特別イベントを開催 | メイン | 追悼:元祖辛口ファッション批評家/Mr. ブラックウェル »

ハリウッドにも不況の波?アカデミーの新戦略

昨今のアメリカ金融不安を受けて、不況/景気後退といったネガティブな単語が連日飛び交っている今日この頃。これまでを振り返ってみると、エンタメ業界ハリウッドは不景気に強い!とされてはいますが、先日AMPAS (Academy of Motion Picture Arts and Sciences)が発表した新案によって「アカデミーのお財布事情」を懸念する声が上がっています。AMPASが打ち出した戦略とは、一体どんなものだったのでしょうか?

来年2月22日に開催、2008年と同じくABCチャンネルにて放映予定の第81回アカデミー賞授賞式。製作は「ドリームガールズ (2006)」よりビル・コンドン&ローレンス・マークのコンビに決まり、華やかな式典が期待されています。そんな中、AMPAS理事会は先週7日、授賞式のTV放送時における「映画コマーシャルの放映」を許可する案を可決。さっそく2009年より実施する意向を発表しました。これは、1935年のアカデミー賞TV放送開始以来、初めての試み。ノミネート作品に焦点を絞り、関連広告によって視聴者に先入観を与えないようにすることがこれまでのねらいでしたが、本年度からはいくつかの条件下で映画CMが許可されることになります。

その条件とは、以下の通り。さすがはかのアカデミーとあって、なかなか細かくなっております。まず、CMは各スタジオ/配給元につき1作品のみ。それぞれ30秒もしくは60秒のスポットを選ぶことができます。本編はノミネート作品に関連しないもので、続編やスピンオフも禁止。「オスカー」「アカデミー」といったコピーを入れることもNGです。また、対象は2009年4月最終週以降に封切られる作品オンリーとなり、更には本式典にて「デビュー」を飾るものに限定。そのCMは、ひとつのコマーシャル・ブレイクに1度だけ流すことが許されています。

AMPAS広報はこの新案に対し、現在の不況や授賞式の視聴率低下とは無関係としていますが、結局はここ近年の不振を露呈させるかたちとなりました。今年2月のセレモニーにおける視聴率は約3200万人と、前年比20%ダウン。これを受けてか、大手スポンサーだったGE/ジェネラル・モータースはすでに2008年度の放映から降りることを発表しています。視聴率が年々下降気味である理由のひとつは、受賞作品のラインナップ。もともと高尚な映画を好むアカデミーではありますが、特に前回はマニアック気味なインディーズ作品が並びました。アメリカ映画の祭典であるにもかかわらず、演技主要部門4つ全てが「外国人俳優」だったのも記憶に新しいところ。アメリカでCMといえば、各スポンサーが大枚をはたいて参加するNFLスーパー・ボウルが浮かびますが、例年ここでは映画業界も男性向け/大作映画の予告編で大健闘中。この例に習い、アカデミーも「スーパー・オスカー」となれるのか否かに注目が集まりそうです。

かなり詳細な条件が揃ってはいますが、新案の評判はおおむね上々の様子。オスカー放送権を獲得しているABCは、この新しい機会に期待を寄せるコメントを出しています。もちろん配給元も渾身の1本をぶつけてくることが予想され、現在は2009年夏に公開予定の”Transformers: Revenge of the Fallen (原題)”や”Terminator Salvation”、”G.I. Joe”といった大型作品が候補に挙がっている模様です。こうした娯楽性の高い映画はアカデミーとは縁遠い印象でしたが、新作CMデビューの場という「付加価値」が生まれることで、新しい視聴層の獲得も可能に。更に、コマーシャル・ブレイクにひときわ注目が集まることで、TiVoなどのDVR機能によるCMカットが減り、他企業のスポンサーが増えるといった相乗効果も見込まれています。

年末の大作ラッシュに向け、アカデミー賞のオッズもチラホラ出始めたところ。どうやら今年も「マイナー系」が軒を争っているようですが、今回の試みで数字挽回となるのでしょうか。30秒で180万ドルと言われるオスカーCMに、各スタジオがどの作品を持って来るのか?2月のオスカーは映画やショーに加えて豪華コマーシャルと、見どころ満載になること必至です。

TEXT BY アベマリコ

2008年10月16日 19:56

この記事へのトラックバックURL:
http://blog.eigafan.com/cgi-bin/mt-tb.cgi/1228

 
東宝東和株式会社