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例年以上にLow-key?第83回アカデミー賞

2月27日(現地時間)開幕したThe 83rd Academy Awards。世界中の映画ファン&業界人の視線が一斉に注がれる「映画の祭典」は、新旧スター勢揃いの一夜となりました。今年のセレモニーのキーワードは、ズバリConservative (=保守的)とLow-Key (=控えめ)といったところ。全24カテゴリーの受賞結果に加えて、当日のサプライズゲストや気になる視聴率に至るまで、本年度のオスカーを余すところなく振り返ってみましょう。


  ハリウッドの目抜き通り、ハリウッド×ハイランド
  に登場した特大Oscarビルボード。
近年Oscarsのホームグラウンドとり、今日のハリウッドを象徴するコダック・シアターにて開催された第83回アカデミー賞。前日までの悪天候がウソのように澄み切った青空の下、同劇場に面するハリウッド大通りに潸然と敷かれたレッド…もとい「フューシャピンク・カーペット」には、Aリストスター達はもとより、世界各国から集められた報道陣で賑わいを見せていました。

本年度オスカー授賞式のWホストに大抜擢されたジェームズ・フランコとアン・ハサウェイは、作品賞候補10作品全てに「飛び込んで」のオープニング・スキットを披露。主催のアカデミーことAMPAS (Academy of Motion Picture Arts & Sciences)の名に恥じない、各キャストとの自然な共演を叶えた見事なコンピューター・グラフィック技術が好評となっています。けれども、その後に続いた「テンション低すぎ」なフランコのロー・キーっぷり、そんな彼をカバーしようと空回りする必死さが痛々しくも見えたハサウェイは、残念ながら近年のワースト司会…との呼び声も。さらに「127時間」で主演男優賞にノミネート入りしていたフランコに至っては、出演作「スモーキング・ハイ (2008)」よろしくハイな状態だったのでは…?との良からぬ憶測まで飛び交っている始末です。

一方、主要部門のスコアカードを見てみると、事前に最多12部門のノミネート入りを果たしていた「英国王のスピーチ」が、下馬評どおりの作品賞・監督賞・主演男優賞・オリジナル脚本賞で最多4部門を受賞。また撮影賞・視覚効果賞・録音賞・音響編集賞と、主に技術部門で同じく4部門獲得の大健闘を見せた「インセプション」を追うかたちで、ゴールデングローブ賞を総ナメにした「ソーシャル・ネットワーク」は、作曲賞・脚色賞・編集賞の3部門に留まりました。そして揃って男女助演賞を獲得、それぞれのスピーチにおいて「妻の名前をド忘れ疑惑」と「栄えある舞台でFワード (卑語) 投下」が揶揄されているクリスチャン・ベイルとメリッサ・レオによって「ザ・ファイター」は2部門を、「アリス・イン・ワンダーランド」は予想に反することなく、美術賞と衣装デザイン賞の同2部門を持ち帰っています。またナタリー・ポートマンが主演女優賞に輝いた「ブラック・スワン」と、アンソニー・ホプキンスとベニチオ・デル・トロの競演が話題を呼んだ「ウルフマン」がメイクアップ賞を獲得、ともに1部門受賞を分け合う結果となりました。戦争好き・王室好き・ブリティッシュ・アクセント好き…などなど、アカデミーの嗜好にガッツリ合致した「英国王のスピーチ」の圧勝は、何とも保守的と言えるセレクション。その傍ら、圧巻の映像美と幾重にも仕掛けられたプロットで観る者さえもフリーズさせた「インセプション」の技術カテゴリー4部門制覇も、誰しもが納得の受賞といったところです。

第83回アカデミー賞: 全24部門受賞リスト

作品賞: 「英国王のスピーチ」
監督賞: トム・フーパー「英国王のスピーチ」
主演男優賞: コリン・ファース「英国王のスピーチ」
主演女優賞: ナタリー・ポートマン「ブラック・スワン」
助演男優賞: クリスチャン・ベイル「ザ・ファイター」
助演女優賞: メリッサ・レオ「ザ・ファイター」
オリジナル脚本賞: 「英国王のスピーチ」
脚色賞: 「ソーシャル・ネットワーク」
長編アニメーション映画賞: 「トイ・ストーリー 3」
短編アニメーション映画賞: “The Lost Thing (原題)”
外国語作品賞: “In a Better World (デンマーク作品)”
長編ドキュメンタリー賞: 「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」
短編ドキュメンタリー賞: “Strangers No More”
実写短編映画賞: “GOD of Love”
メイクアップ賞: 「ウルフマン」
美術賞: 「アリス・イン・ワンダーランド」
衣装デザイン賞: 「アリス・イン・ワンダーランド」
編集賞: 「ソーシャル・ネットワーク」
作曲賞: 「ソーシャル・ネットワーク」
オリジナル歌曲賞: 「トイ・ストーリー 3」
撮影賞: 「インセプション」
音響録音賞: 「インセプション」
音響編集賞: 「インセプション」
視聴効果賞: 「インセプション」


  この頃は酷評を受けるなんて露知らず…。
  W司会のジェームズ・フランコ&アン・ハサウェイ。
米TV史上最高視聴率を樹立したスーパーボウルXLV、過去10年間での最高値をマークした「音楽の祭典」第53回グラミー賞など、今年に入ってから行なわれたビッグ・イベントは軒並み大きな数字を連発していましたが、この度のアカデミー賞に限っては視聴率合戦に「惨敗」。向こう2020年までのオスカー独占放送権延長を発表したABC局は、近年のワーストを記録した2008年以来となる数字ダウンを喫し、昨年度の4130万人を10%ほど下回る3760万人と、奮わない結果と相成ってしまいました。往年のオスカー名司会とされるビリー・クリスタルや、御年94歳の名優カーク・ダグラスをサプライズゲストとして招くも、全体的にスローでユルい印象は拭えず。また、4月22日の日本公開が待たれる「サンクタム」で製作総指揮を務めているジェームズ・キャメロンの監督作、自身の「タイタニック (1997)」が保持していた世界興行収入記録を塗り替えた「アバター (2009)」のような強烈なファン・フェイバリット作品が無かったことも、数字後退の要因に上がっているようです。

ここハリウッドで行なわれる一大セレモニーも幕を降ろし、すっかり閑古鳥が鳴く…のかと思いきや、すでに「映画の都」の視線は来る春夏のビッグ・ムービーに向けられている模様。今回それぞれが初となるオスカー像を持ち帰った俳優陣4名も、続々とクレジットに名を連ねています。今後は2011年度映画のラインナップも続々とご紹介して参りますので、そちらもお楽しみに。


TEXT BY アベマリコ

2011年03月03日 12:20

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