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大和撫子 in Hollywood!アーティスト: 田中真裕美さん
ハリウッド随一のパワーカップル、ブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリーに始まり、ジェイ・Z&ビヨンセ夫妻、デヴィッド&ヴィクトリア・ベッカム夫妻、クリスティーナ・アギレラ、ジェニファー・アニストン、トビー・マグワイアにニール・パトリック・ハリス…といった錚々たる顔ぶれ。そんな彼らには、コンテンポラリー・アート(=現代芸術、現代美術)のコレクターという共通点があることをご存知でしたでしょうか?ここハリウッドは、俳優やミュージシャン、そして芸術家といった「夢追い人」が集う街。そこで今回は、当地で活躍中の日本出身アーティスト: 田中真裕美さんにインタビューをお願いしました。
今回お話を伺った田中真裕美さん。
昨年5月に行なわれた個人展「Unhealthy」にて。
Q. まずは、いつ頃からアートに目覚められたのでしょうか?また、今日ある多様なパフォーマンスへとシフトしたきっかけを聞かせてください。
まだ幼い頃、姉が近所のお絵かき教室に通っていて、わたしも遊びに行く感覚で通いだしたのが始まりかと思います。それ以来、家でも描きながらそのままの姿勢で寝るくらい絵が大好きになって、毎日描いていましたね。あと、今では漫画は一切読まないのですが、小学生の頃は「ちびまる子ちゃん」が好きで、漫画家を目指してギャグ漫画を何冊も書いた時期もありました。その後は、父親が美大を出ていたのもあって、わたしも美術の方面へ進もうと専門学校へ入りました。数か月に1度、みんなの前で先生たちに自分の作品をボロクソに言われる30分間の講評会があって、若かったわたしはすっかりその言葉を真に受けていたのを思い出します。
「Sister (2008)」
アクリルガナッシュ/水彩紙/12×9
Q. 現在はLAを拠点に活躍されていますが、どうして当地を選ばれたのでしょうか?
20代前半に、その当時のまま日本社会で働いてお金を稼いで生きていくことに自信がなくなって、以前の旅行で気に入っていたLAに短期留学したことがあったんです。で、その経験があまりにも素敵なものだったので、アメリカにもう1度行こうと決めました。せっかくだから、次は他の街にしようと、アート活動がさかんなNYへ行ってみたのですが、わたしが住んでいた東京にすごく似ていて、都会に疲れてやって来たわたしには合わないと思ってしまったんです。人ごみや高層ビルで見えない空や、毎日みんな急いでいる街並みが好きではなくて。更にわたしはあまのじゃくな性格なので、周りみんなが夢を追いかけて頑張っている中にいると、つい自分は逆を行ってしまいたくなったり、まわりと比べては焦ったりしてしまうんです。そこで、今は活動をするなら暖かくて少し時間の流れがゆっくり感じられるLAに戻って、マイペースでやっていこうと決めました。アートならNYに居たほうがいいんじゃない?なんて周りの意見を聞きながら、わたしもどっちが正しい選択なのか分からず、本当に移動していいのかの相当悩んだのですが、もしLAが駄目だったらその時はまたNYに戻ればいいだけ、なんて開き直って、ジタバタするより行動に移してみることにしました。今はこの4年間にLAで出来たコネクションなどでアート活動をする機会も増えましたし、わたしにはスタート地点がこの街で合っていたなと思います。NYは、またいつか準備が出来た時に行ってみたい場所ですね。
Q. 渡米前に思い描いていた生活と実際に住んでみてからの毎日に、何か特別なギャップはありましたか?また、来てよかったと思われる点や、逆に苦労なさったエピソード、特別な出会いなどがあれば、お願いします。
東京ではもう生きていけないと逃げ出して来たわたしですが、アメリカの生活も楽なものではありませんでした。言葉の違いもそうですが、こちらのカスタマーサービスなどの対応の悪さに、何度も挫けそうになったりしています。今となっては日本の良さも分かって、恋しくなったりもする、無いものねだりのわたしです。けれど、今のわたしのアート制作においては、アメリカで活動することを選んで本当に良かったと思っています。ここ数年活動していて、チャンスの幅がすごく広がったと感じましたね。例えば日本にいた頃は、創作活動をしている人達が山ほどいるにもかかわらず、展示会になると、会場に高いお金を払って、お客さんを自分で呼んで…というシステムが多かったので、なかなか定期的に自分のアートを見せることが出来ないのが現実だったんです。
「Okey-Dokey (2010)」
アクリルガナッシュ/水彩紙/12×16
Q. どの作品を拝見しても、とても個性的かつリアルな雰囲気があり、ポップな色彩が目を引きますが、どういったインスピレーションが原動力および制作意欲になっているのでしょうか?
言葉でマイナスな気持ちを表現するのが下手なので、その代わりにその思いを絵で表現することが多いです。ハッピーな絵より、怒りや悔しさを描く方が楽しく描けたりします。きっと日本にいた時は、そんなにダークな部分を描いていなかったかもしれません。家族や親しい友人がいつも周りにいたので、常に誰かに聞いてもらえる環境にいたからじゃないかと思います。こっちへ来てからは、自分だけで考えることが多くなったので、そのフツフツした思いを描くようになりました。実に悲劇的な顔をした絵が出来ると、とても愛らしく思えます。時には、当てつけのような絵を描くこともあるかもしれません。「わたしにそんなことすると、後で絵にして恥かかせるわよ」というような。でもこわいだけの絵ではつまらないので、お茶目なワンポイントを入れたりポップな色を使って、ユーモアを入れるのが大切だと思っています。
Q. 今後の活動予定や展望がありましたら、ぜひお聞かせください。
今年の展示会の予定は、6月にサンフランシスコのKokoro Galleryというところで「Circle Of Life」というテーマで3人展を行います。同じく6月の後半には、オレゴン州のポートランドにある「Star E Rose」というカフェで個展を行う予定です。今年も住んでいるLAだけではなく、アメリカのいろいろな街で展示会をしていきたいと思っています。街によって雰囲気も人々の反応も違うと思うので、それはどんなもなのかたくさん経験していきたいですね。そこでの新しい出会いも、これからの楽しみのひとつです。作品を作ることについては、見てくれる人の反応を気にしてしまうが故、自分を小さな枠の中に入れて、そこで面白くないものを作ってしまうことがあるので、自分が思うまま自由に作っていける人を目指して前進していきたいです。最後に、ホームページに最新情報やアートのイメージなどがあるので、見ていただけたら嬉しいです。
「Me (2006)」カラーペン・色鉛筆/6×9
TEXT BY アベマリコ
2012年02月09日 16:10
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