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イタリア発『家の鍵』

15年の空白を経て出会った父と子が、少しずつ親子の絆を取り戻していく物語『家の鍵』。本作は、最初はぎこちなかった親子の関係が、ミュンヘンからベルリン、そしてノルウェイの海辺の町へと旅を続けることで、少しずつ変化していく様子を丁寧に描いています。

■STORY
若き日、出産により恋人を失った衝撃から、生まれてきた我が子をも手放してしまった父親ジャンニ。15年の空白を経て、障害を持った息子パオロと出会った彼は、パオロをミュンヘンからベルリンのリハビリ施設に送り届けることになった。初めてパオロと向かい合い、共に過ごす時間を持ったジャンニだが、所かまわず自分の感情をぶつけてくるパオロに戸惑いを隠せない。やがてジャンニはパオロを連れて2人だけの旅に出ることに…。

公式サイト>http://www.zaziefilms.com/ienokagi/

■ジャンニ・アメリオ監督の描く旅の風景

本作の監督ジャンニ・アメリオの作品は、ヨーロッパではとても高く評価されていて、彼は「巨匠」と呼ばれているほどです。これまで日本でも、『宣告』(‘66)、『小さな旅人』(’92)、『いつか来た道』(’98)の3本の監督作が公開されています。そこには必ず「旅」があって、観客を魅了してきました。

『小さな旅人』はローマからシチリアへと旅をする少女の娼婦と若い憲兵の話。『いつか来た道』では、貧しい2人の兄弟がするシチリアからトリノへの旅が、彼らの人生を変えてしまうことに。そして、今回もやはり「旅」が描かれているのです。ミュンヘンからベルリンへの汽車の旅。ベルリン市内を電車でひとり旅するパオロ。ノルウェイの船旅。ミラノへ向かう車の旅…。その途中で、父と息子の絆や、ジャンニの父性の目覚めなど、目には見えないけれど大切なものが、たくさん生まれます。

「旅の中でこそ、人は解放され、自分の心を見つめていく…。」これは、アメリオ監督作の共通したテーマのようです。そのテーマを今回も見事に含ませながら、親と子の絆を繊細に描いた本作は、イタリア本国では、65万人を超す動員を記録して大ヒットしました。アメリカや日本でヒットする作品とはまた違った味わい深さを持ったこの物語。彼の作品には、ルカ・ビガッツィという名カメラマンが常に協力していることも、彼の作品の特徴を語る上で大きなポイントと言えるでしょう。透明で冷徹な彼のカメラは、人間の内面を見据えるようで、その映像美はとても印象的です。

■映画から観る旅

●ミュンヘンからベルリンまでの列車の旅
父ジャンニと息子パオロはミュンヘンからベルリンまでを列車で旅し、列車のコンパートメントで夜を明かします。ドイツの国内旅行では、鉄道を利用する人がとても多いそうです。DB(ドイツ鉄道株式会社)が大半の地域で運営しているためで、私鉄はほとんどないようです。食堂車でゆっくり食事をしたり、パオロがしていたようにゲームに夢中になったり…車窓から眺める風景を楽しみながら、気長な旅が続きます。

●ノルウェイまでの船旅
パオロとジャンニは、パオロのペンフレンド・クリスティンに会いに行くため、ノルウェイまで船で渡ることに。魅惑的な美しさが漂う北海を進むと、風が心地よく、2人ともとても開放的な気分になっていたようです。ノルウェイの海岸線全域に沿って、氷河によって削り取られたU字の谷に海水が流れ込んでできた深い入江が見られます。フィヨルドと呼ばれる、この自然の芸術は、四季折々に美しい景観を彩って、船旅をする人々の目を楽しませてくれます。西部のフィヨルドは特に美しいとか。

■DATA
東京:岩波ホール 上映中(6月中旬まで)
大阪:OS名画座・名古屋:名演小劇場 ほか全国順次公開

2004年/イタリア/111分
配給:ザジフィルムズ
(C)2004 LAKESHORE INTERNATIONAL, ALL RIGHTS RESERVED

監督:ジャンニ・アメリオ
脚本:ジャンニ・アメリオ/ステファノ・ルッリ/サンドロ・ペトラリア
出演:キム・ロッシ・スチュアート/アンドレア・ロッシ/シャーロット・ランプリング

2006年05月16日 20:26

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