« イスラエル発『迷子の警察音楽隊』&フランス発『ペルセポリス』 | メイン | ロシア発『デイ・ウォッチ』 »
カナダ・フランス・ドイツ・ポーランド・オランダ・イギリス発『レンブラントの夜警』
30代で肖像画家として大成功を収めたレンブラントの生活が1642年を境に一転し、ついには破産にまで至った、その謎を解く鍵が隠されていたのは、レンブラントの「夜警」。
果たして、オランダの至宝といわれ、門外不出の扱いを受けている名画に隠された秘密とは…?!
■STORY
1641年、オランダのアムステルダム。35歳を迎えたレンブラント(マーティン・フリーマン)は、画家としての成功を手にし、時期を同じくして妻(エヴァ・バーシッスル)も無事男の子を出産。
順風満帆に思えた彼の人生でしたが、アムステルダム市警団から依頼された集団肖像画の仕事をきっかけに、その流れは一変。肖像画の中に、絵筆を武器にした、市警団の不正とスキャンダルの告発を交えたことで、恐ろしい復讐を受けることに…。
■ピーター・グリーナウェイ監督の想い
ピーター・グリーナウェイ監督は、画家としての勉強を4年間続けた後に、映画製作を始めたというキャリアの持ち主です。
美術学校に在籍していた1960年代、どの講義もレンブラントに好意的で、「そのことは逆に私をレンブラント嫌いにした」とのこと。そうは言っても、やはりレンブラントの影響力は無視できるものではなく、検証の必要はあると感じていたという監督。
その監督が、レンブラントを題材に映画を撮ろうとした大きなきっかけは、彼の画は「フィルム・メーカーとして、17世紀に映画が製作されていたら、どんなものになったかを想像させることができると思ったから」と言います。
レンブラントの絵画は、光によって創造された世界である反面、実際は基本的にブラック・スクリーンから描き始めています。そのため、暗い画面に光を描き込むことになり、それはまさに「映画」であり、一つ一つ切り取られる光のフレームという概念に通じる…とのことです。
「光によって描かれた世界である映画とは”一瞬のとき”から成り立っているもので、レンブラントはそれを既に1600年代に実現していたのだ」と語る監督。この監督の想いから、レンブラントの人生の光と影をもスクリーンに焼き付けた作品が誕生しました。
■映画から観るレンブラントが生きた時代
●17世紀のオランダ
スペインからの独立を果たし、経済的な発展の著しかった時代。東インド会社の交易により、世界中から様々な品物が集まりました。そんな中、絵画の収集も国民の間でブームとなり、チューリップの球根と同じように投機対象でもありました。
●絵画の主流は小さなサイズ~大きすぎた「夜警」
繁栄を誇る中、大量の絵画が制作された17世紀オランダでは、プロテスタント中心の市民社会が確立されていました。そのため、同時代のフランスやイタリアとは異なった絵画市場となっており、市民には、大きなサイズの神話画や宗教画よりも、サイズが小さめで内容的にも親しみやすい風景画や風俗画、静物画が求められるようになりました。
そのような、小さなサイズの絵画が主流の中、大きすぎたサイズの「夜警」は、それが原因で移動の際には不遇の扱いを受けることに。1715年までは火縄銃手組合本部の大ホールに展示されていたのが、ダム広場の市役所に移された際、あまりにも画が巨大だったために、周りをカットされてしまったとのこと。特に左側が大幅に切り取られていて、その切り取られた部分は現存していません。
17世紀にヘリット・ルンデンスが残した写しによってのみ、オリジナルの状態が確認できるそうです。
■DATA
1月12日(土)、テアトルタイムズスクエアほか全国順次ロードショー
2007年/カナダ・フランス・ドイツ・ポーランド・オランダ・イギリス合作/139分
配給:東京テアトル/ムービーアイ
(C)Nightwatching B.V 2007
監督・脚本:ピーター・グリーナウェイ
出演:マーティン・フリーマン/エミリー・ホームズ/エヴァ・バーシッスル ほか
●本作はR-15指定です
2008年01月15日 16:15
この記事へのトラックバックURL:
http://blog.eigafan.com/cgi-bin/mt-tb.cgi/865
毎月初旬更新