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フランス発『パリ20区、僕たちのクラス』
第61回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞。
笑って、怒って、ぶつかって生きる。教師フランソワと24人の生徒たちの物語。
教師フランソワを演じるのは、元教師で自身の体験を基に綴った原作「教室へ」の著者フランソワ・ベゴドー。監督は、常に社会と人間を描いて高い評価を得ているローラ・カンテ。フランスで150万人を動員し、さらにヨーロッパ、北米でも興行的成功をおさめた作品です。
■STORY
舞台は、パリ20区にある中学校の教室。主な登場人物は、ひとりのフランス語教師と出身国も生い立ちも、将来の夢も異なる24人の生徒たち。カメラが追いかけるのは、1年間の国語の授業だ。国語とは生きるための言葉を学ぶこと。それは他人とのコミュニケーションと、社会で生き抜く手段を身につけることでもある。
言葉の力を教えたい教師フランソワにとって、生徒たちとの何気ない対話の一つ一つが授業であり、真剣勝負だ。フランソワはどの生徒にも真正面に向き合おうとして、悩み、葛藤する。一方、多感な24人の生徒たちは、率直な言葉、はじけるような笑い、抑えられない怒りでフランソワに応じる。さまざまな個性を持った彼らは、この教室で何を学ぶのだろうか?
公式サイト
■ドキュメンタリーだと思わせた驚異のリアリティ
監督が出演者に選んだのは、映画の舞台となるパリ20区のフランソワーズ・ドルト中学校で実際に学ぶ演技経験のない24人の生徒と、その教師たち。監督は生徒たちと週1回、7ヶ月のワークショップを行い、映画のために必要な彼らの内面を引き出したり、彼らが偶然発した言葉を脚本に取り込んだりしたといいます。
生徒たちが演じた人物のほとんどが役作りによるキャラクター。にもかかわらず、自然体で演技ができたのは、学校生活で無意識にテクニックを磨いているからだと、フランソワ役のベゴトーは分析します。「生徒たちにとって学校は、いくつもの役柄を演じたり、隠しごとをしたり、インチキをする誘惑にさらされる場所。彼らは学業上の困難を言葉巧みな反論や言い逃れ、機転で埋め合わせしなくてはならないからね」
撮影には、3台のHDカメラと16本ものマイクを使いました。1台目のカメラは常に教師を、2台目はその場面の中心になる生徒、そして3台目は本題には直接関係しない周囲の映像を撮影しました。だからこそ、教室で起こることすべて、どんな些細な出来事(偶然発せられた言葉、表情、仕草など)も逃さず、その場のリズムを捉えることに成功したのです。
■映画から観るフランス
パリ20区は、フランスの首都・パリ市を構成する20の行政区のひとつ。市の東部にあり、セーヌ川の北側に位置しています。区内にはショパン、マリア・カラス、モリエールなど多くの著名人が眠るペール・ラシェーズ墓地があり、さらにエディット・ピアフの生まれた地でもあります。アラブ系、アフリカ系、ユダヤ系(労働者系)、中国系(華僑)など、主に労働者系の多くの移民が暮らす地域で、安くて異国的なレストランなどが集中する雑多で庶民的な界隈と言えます。
本作にもパリ20区の特徴である多人種の生徒が登場し、移民問題もテーマに内包されています。日本の学園ドラマのような大団円は用意されていませんが、小さなひとつひとつのエピソードに静かな感動が呼び起こされる小粋な作品です。
■DATA
6/12(土)より岩波ホールほかロードショー
2008年/フランス/128分
配給:ムヴィオラ
© Haut et Court – France 2 Cinéma
監督:ローラン・カンテ
脚本:ローラン・カンテ/フランソワ・ベゴドー/ロバン・カンピヨ
出演:フランソワ・ベゴドー ほか
2010年06月07日 16:21
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