PRODUCTION
NOTE

駆逐艦を主役にフィーチャーした初のハリウッド大作

本作の製作と監督をつとめるピーター・バーグは、父親が趣味でアメリカ海軍の歴史を研究していたことで、子供の頃から海や船に並々ならぬ関心を持っていた。父親に連れられて海軍博物館をたびたび訪れていたバーグにとって、このアクション・アドベンチャーは、まさに長年の夢の企画だった。バーグは言う。「『バトルシップ』は、僕の情熱そのものだ。この話が舞いこんだ時、アクション満載の大バトル・シーンがパッと頭に浮かんだよ」
バーグは海軍と良好な関係を築いていたので、製作準備段階から海軍の多大な協力を得ることができた。「海軍の人たちは、自分たちが世界を救うところが気に入ってくれたんじゃないかな。駆逐艦の乗組員たちは、空母が中心の映画じゃないのは初めてだと喜んでいた」とバーグは語る。
現代の戦艦(バトルシップ)である駆逐艦がエイリアンと戦うというストーリーの骨格を組みたてたあと、バーグは、『RED/レッド』の脚本を手がけたエリックとジョンのホーバー兄弟にキャラクターとストーリーの肉付けを委ねた。脚本を書くにあたり、ホーバー兄弟は徹底的なリサーチを行った。エリックは説明する。「僕たちは、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦プレブル(DDG-88)に乗り、洋上で3日間過ごした。任務を遂行する若い乗組員たちをこの目で見るのは、素晴らしい経験だった。彼らのプロ意識、ひたむきさ、徹底ぶりは本当に参考になった。専門用語や文化や戦闘用機材のディテールが頭に入り、ストーリーもキャラクターもこの上なくリアルに描けたんだ」

明日のスターから歌姫までが顔をそろえたキャスティング

「映画にとって大切なのは、登場人物を生かしたストーリーかどうか。CGやスペクタクルは、登場人物を肉付けするにすぎない」と語るピーター・バーグ監督は、本作の最も重要な登場人物であるホッパーの役にテイラー・キッチュを起用した。彼は、バーグが製作総指揮をつとめたTVシリーズ『Friday NightLights』でブレイクしたのち、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』のガンビット役や『ジョン・カーター』の主演で注目を集めている明日のスターだ。「ホッパーが盗みをして捕まり、頭を丸めて入隊するところから始まる物語は、彼が人の上に立つ存在になるまでの成長を描いている。俳優にとってはやりがいのある役だ」とキッチュは語る。
キッチュに正式に出演交渉するとき、バーグはキッチュが『ジョン・カーター』を撮影していたロンドンに飛んだ。そのときの様子をキッチュはこう振り返っている。「ピーターのやり方は普通と違うんだ。たとえば、『この企画、俺と一緒にやりたくないか?やろうぜ。ゾクゾクするめちゃ面白い映画作ろうじゃないか!』みたいな感じ。あとは責任を持って取り組むのと、挑戦あるのみだ。信頼関係はとっくにできているから、お膳立ては整っている」
いっぽうホッパーの兄のストーン海軍士官を演じるアレクサンダー・スカルスガルドを口説き落とすとき、バーグはロサンゼルスへ飛び、夕食を共にした。「顔合わせの段階で、監督に好印象を持ったんだ」とスカルスガルドは言う。「作品への情熱が伝わってきたからね。それに、作品の中で描かれる兄弟の関係も気に入った。ストーンはホッパーに厳しく接するが、そこには兄弟愛や絆がある。それはこの物語の重要な部分だと思うんだ」
スカルスガルドは役作りのため、海軍の艦船への乗船を希望したが、その時期は偶然にも2010年の環太平洋合同演習(RIMPAC)と重なった。「幸運にもこの年のRIMPACがハワイで行われたので、監督とカメラ・クルーと一緒に信じられないような実のある1週間が過ごせたんだ」とスカルスガルドは振り返る。「船の艦長と話す機会もあって、本当に参考になった。しかも、空母から離着陸も体験できたんだ。信じられないくらい壮大な光景だったよ」
実際、アメリカ海軍の協力を得たバーグは、この壮大な軍事演習を甲板と空から撮影し、作品の中に巧みに取り入れた。
ホッパーの部下で、タフな女性兵士のコーラ・レイクスには、これが本格的映画デビューとなるグラミー賞歌手のリアーナがキャスティングされた。「最初からリアーナがいいという強い思い入れがあった」と語るバーグは、女優リアーナの力量を次のように賞賛する。「演出の呑みこみが早いし、役を理解する能力も見事。役者としての仕事ぶりには、とても感心したよ」
いっぽうのリアーナは、映画初出演の感想をこう語る。「最初に監督に会った時は、正直どう演じたらいいのか分からなかったけれど、台本を読んだらすっかりはまっちゃって。ストーリーがすごく気に入ったの。鼻っ柱の強いレイクスの役は、演じていて楽しかったわ。私も子供の頃はおてんばだったから」
そんなバーグに「徹底的にしごかれた」と語るデッカーは、サマンサを演じる上で魅力を感じた点について、「准将の娘だけれどちょっと反抗的なところもあって、自立していて、世界を救おうと必死にがんばっているところかしら」と説明する。もうひとりのタフな女性、ホッパーの婚約者で理学療法士のサマンサを演じるのは、モデル出身のブルックリン・デッカーだ。彼女を起用した理由をバーグはこう語る。「23歳にしては驚くほど落ち着きがある。正直、キャスティングしたときは演技ができるだろうかという不安があったが、彼女はそれを吹き飛ばしてくれた。賢くて真面目で、仕事に対する意識も高い。実にしっかりしていて、役にバッチリはまってくれたよ」
役作りのために、海上で1週間の訓練を受けた他の共演者たちと違い、デッカーは陸地で奮闘した。彼女の無数の傷が、ハワイの茂みの中で数週間にわたり厳しい撮影が行われたことを物語っている。さらにデッカーは、負傷兵のリハビリをする理学療法士という役柄のために、病院を訪れてリサーチも行った。デッカーは語る。「ホノルルの医療センターと、サンアントニオにあるリハビリ施設のイントレピッド・センターに行ったの。兵士たちとの会話を通じて、彼らの精神状態や、戦いから帰還して心的外傷後ストレスを抱えた状態へ移行する状況などが手にとるように分かったわ」

共演を楽しんだ浅野忠信とテイラー・キッチュ

カナダ出身のテイラー・キッチュ、スウェーデン出身のアレクサンダー・スカルスガルド、バルバドス出身のリアーナと国際的なキャストが集うなか、アジア代表として参加したのが、ホッパーの好敵手で日本の駆逐艦みょうこうの艦長ナガタを演じる浅野忠信だ。彼にとって本作は『マイティ・ソー』に続く2本目のハリウッド大作となる。「日本の海上自衛隊の艦長が、アメリカの海軍将校と一緒になって戦うところが面白いと思った」と語る浅野は、オアフ島のパールハーバー・ロケに参加したさい、アメリカと日本の悲しい戦争の歴史に思いをはせずにいられなかったという。「過去にああいう歴史がなかったら、我々日本人とアメリカ人が今日のこういう映画で肩を並べることもなかったでしょう。あの戦争で命を奪われた人々に対して、深い哀悼の気持を持っています。でも、一日本人として、今こうして真珠湾でアメリカのスタッフと和やかな雰囲気の中で仕事ができていることを考えると、この映画はひとしお感慨深いですね。まずその部分に感謝したいと思います」
「タッド(浅野忠信)には敬意を表すよ」とキッチュは言う。「共演シーンが多いから、彼とやるのを楽しみにしていたんだ。すばらしい俳優だし、また一緒にやりたいね。ハワイまでやってきて、こんな大作で大役をおおせつかり、しかも英語が外国語なわけでしょ。僕が日本に行って、英語しかしゃべれなくて、たった一人で監督に言われたことを翻訳して考えるようなものだからね。彼はそれをものの見事に決めたよ!ガッツに脱帽した」
[ かたや浅野もキッチュに対する賛辞を惜しまない。「アメリカの映画界で仕事をするのは2回目なので、慣れない点がたくさんありました。まるで子供のように見よう見まねでやっていたようなものです。とりわけテイラーには感謝しています。何を言われたのか分からないと、間に入ってくれて、やりとりを助けてくれたりね。共演シーンでは、僕がちょっとした変化をつけると、彼は反応がよく、すぐに応えてくれました」

役作りに奮闘したリアーナとブルックリン・デッカー

ピーター・バーグ監督は、リアーナの女優デビューにあたり、彼女よりも1歳年下の水兵、ジャクリーン・カリゾーサをテクニカル・アドバイザーとして起用した。バーグがカリゾーサを見染めたのは、2010年のRIMPACカップで、彼女がアメリカ海軍のサッカー・チームで活躍しているのを見たときだった。「リアーナが演じるレイクスは、タフで愛国心が強く、男勝りだが女性らしい色気もある。ジャッキー(ジャクリーン)を見たとき、彼女こそレイクスだと思った。彼女ならリアーナのいいモデルになると思ったが、実際に2人のコンビはバッチリだったよ」
劇中のサッカーの試合場面でリアーナの代役もつとめたカリゾーサについて、リアーナはこうコメントする。「ジャッキーには、1日中、私のトレイラーにいてもらったの。彼女が何を考え、どんな感じ方をするか、肌で感じ取らないといけなかったから」
いっぽうのカリゾーサは、リアーナの役作りをこう説明する。「私は、リアーナが軍隊の儀礼や武器の扱いがうまくできるようアシストしました。自分が参加する前に、彼女は射撃の経験があったので、怖がりませんでしたね。あれだけの才能と美貌に加えて、とても頭のいい方ですし、生まれつきの男勝りの人でしたよ」
撮影に向けて特殊な訓練を行ったチームはもう1組いる。陸地でエイリアンと戦うことになるサマンサを演じたブルックリン・デッカーと、彼女と行動を共にするリハビリ中の兵士ミックを演じたグレッグ・ガドソンだ。ガドソンは、バグダットで大隊の指揮を執っていた2007年に簡易爆弾の攻撃にあい、膝から下を失ったアメリカ軍の陸軍大佐。俳優として映画に出演するのは今回が初めてだが、劇中ではデッカーと息ぴったりの名演技を見せる。その理由を、デッカーはこう語る。「グレッグと私は、何でも2人でやるように突き放されたおかげで急速に息が合うようになったの。2人で何度もリハサールを重ね、雨ばかり降る山の中で撮影したわ。泥だらけになるし、アップダウンが激しいし、グレッグの義足が泥でつるつる滑って倒れそうになることも何回かあったわね。目の前で彼が倒れそうになると、私たちの間には信頼関係がすぐに生まれたわ。彼に『もし上り坂になったら僕が君を押してあげる。ただ、下り坂になったら力を貸してほしい』と言われてね」
スタント・コーディネイターのケヴィン・スコットは、ガドソンをフィーチャーした格闘シーンの動きを考えるために、映画界一の格闘振付師であるデイモン・キャロに応援をあおいだ。「グレッグに無理なくできる動きを我々は考えたんです」とスコットは語る。「グレッグとの話し合いの中から出てきた動きもいくつかありました。我々にはできない脚の曲がり方が彼にはできるわけですから。振付に対するグレッグの反応ぶりはとても参考になりましたし、本人も脚を失って以来こんなに動いたことはないと言っていました。グレッグに関しては感動することがいくつもありました。真の勇者でしたよ」

歴史的な航海を行った"マイティ・モー"

本作のクライマックスでめざましい活躍を見せる戦艦ミズーリは、"マイティ・モー"の愛称で親しまれているアイオワ級の戦艦。1944年1月29日に進水し、1944年6月11日に就役。第二次世界大戦では日本軍と数々の激戦を繰り広げ、終戦の際には日本の降伏調印式場になった。退役は湾岸戦争後の1992年。1998年にはハワイにある戦艦ミズーリ保存協会に寄贈され、現在も浮かぶ博物館として観光客の人気を集めている。このミズーリは、2010年9月、2週間にわたって撮影隊のメインのロケ地になったが、さらにその8カ月前の1月8日、撮影隊は、メンテナンスと補強工事を終えて乾ドックから戻ってきたばかりのミズーリが航行する姿を、非公式にカメラにおさめるチャンスに恵まれた。タグボートに曳かれたミズーリは、パールハーバーを出て、ワイキキ・ビーチの沖約2マイルを沿岸航行した。その短いながらも歴史的な「航海」について、戦艦ミズーリ保存協会のキース・デメッロはこう語る。「場所的にも時期的にも最高のタイミンでした。撮影のためロケハンをしていたピーター・バーグ氏が、この17年間なかったミズーリの乾ドック入りという時期にたまたまいらしたのですから。ミズーリが仮にも"航行する"なんてめったにないことです」
このミズーリの航海は、当日の乗組員たちのおかげでさらに感動的なものになった。プロデューサーのサラ・オーブリーは語る。「あの日、船に乗ったのは、実際にミズーリで戦った経験のある人たち、あの船で働いていた人たち、修復に携わった人たち、そして、長年かけて今の栄えある船体にまで持ってきた人たちでした。彼らの喜びようは言葉では言い表せないほどです。"マイティ・モー"が再び洋上を走る姿を見られるとは夢にも思っていなかったのですから。私たちもその現場にいられて、すごく幸運でした」
|   バトルシップPC版   |
© 2012 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.